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日本全国どこかに弾丸旅 3.金沢

久しぶりにこの時がやってきた。

時はゴールデンウィークの連休に挟まれた平日。
ぶち抜き10連休を取っていた私は、再びあの酔狂な旅を行うことを決めた。
JALが提供するぶっとびカード、どこかにマイルを用いた日帰り弾丸旅である。

GWのピークは対象外となるどこかにマイルも合間の平日は利用可能であったので、せっかくの休日を旅に費やすことにした。


今回の候補となったのは以下の4か所だった。

これまで目的地となった広島と名古屋、そして最近言った場所を除いたうえで、まぁどこになってもいいかな、と思えるラインナップになった。

実はこの旅の実行日の前日まで佐渡島を旅する予定だったので、できれば北陸・上越以外のエリアが良いと考えていた。
候補を見ると3/4までが西日本である。
まぁ西のどこかになるだろう。
そう思っていた。

そして当日、

気が付くと小松にいた。

新潟から帰った次の日に石川である。
なかなか思い通りにならないのが、泣く子と地頭と人生だ。

こうして弾丸旅第3弾の石川旅が始まった。

私は過去に金沢へ3度ほど訪れたことがあった。
最後に訪れたのはもう8年ほど前のことだったが、大体の名所には訪れた経験があった。
なので、金沢以外の場所を訪れることを計画し、いろいろと情報収集に動いていた。

しかし、なかなかこれという場所に巡り合えなかった。
能登のほうはまだ震災の爪痕が深く、観光で訪れるには時間がかかりそうだ。

小松空港周辺に目をやると、
ハニベ巌窟院という地獄が再現された洞窟珍スポットがある、とのことだったが今一つ食指が動かなかった。
同じく小松市にある自動車博物館では、なぜか世界各国のトイレが計56台、利用可能な状態で取り揃えられているという情報が気になった。
しかし私が行く日は定休日であることが分かった。

やむなく、金沢の街を訪れることにした。
せっかくなので、訪れていない場所を中心に回ってみることにしよう。

そんなわけで金沢市内に向かった私は、

駅を素通りして郊外に向かうバスへと乗り込んだ。
やってきたのは石川県立図書館だ。

2022年に完成した新たな図書館は、どこかエスコンフィールド北海道みのあるファザードだ。

参考:エスコンフィールド北海道

早速まだ真新しい入口を中へ。

近未来的な内装に圧倒される。

特にフロアを昇っての眺めが壮観だ。

どことなく、ストックホルム市立図書館を近代風にアレンジしたような円形の閲覧室が美しい。

ストックホルム市立図書館

「思いもよらない本との出会いを楽しもう」と謳われているとおり、企画展をはじめとして様々に趣向を凝らせた本の配置と、様々な閲覧席で延々と本の世界に浸ることができそうな空間であった。

続いて中心地に戻って21世紀美術館へ。

以前年末に訪れた際には、年末年始の休館期間に入ってしまっていたため、中に入るのは今回が初めてである。
しかし、今年年初に発生した地震の影響で、いまだ館内は一部を除き閉鎖中であった。

どうも私は21世紀美術館に縁がない。
とはいえ、前回は見ることすらかなわなかったプールの展示を上から見ることだけでもできたことを収穫としよう。

下からの景色は次回のお楽しみだ。

その後、金沢の魅力の一つといえる昔ながらの建築を探訪すべく、金沢城と

長町の武家屋敷などもぶらつく。

歴史のある建築を眺めながらも、このころ心は密かに決めていた旅のメインイベントに囚われ始めていた。


突然だが、
音楽を除く芸術で、あなたが最も心動かされたものは何だろうか?
人の数だけ数多の答えがあるだろう。
何らかの絵画であることが多いのかもしれない。

私の場合、それは陶磁器である。

時は今からさかのぼること15年ほど前。
私が初めてのヨーロッパ一人旅でイギリスを訪れた際、首都ロンドンで大英博物館を訪れていた。

ロゼッタストーンにミイラにモアイ、そうした見どころを堪能していた私は何の気なしに日本コーナーを訪れた。

そこに置かれていた1枚の皿に目を奪われた。

焼き物でこんなに鮮やかな色が出せるのかーーー
衝撃は鮮烈だった。

その作品こそが石川県を代表する伝統工芸・九谷焼であり、
人間国宝・三代目徳田八十吉作の「黎明」である。

その鮮やかな青に感銘を受けた私は、いつか徳田八十吉の作品を手に入れたい、と心に誓ったのであった。
その半年ほどのちに石川を訪れた際に最初のチャンスは訪れた。
しかし奇しくも私が件のイギリス旅行へ出かけたその日にこの世を去っていた三代目の作品は、当時学生だった私にとって、おいそれと手を出せるような代物ではなかった。
買えそうにないことを見抜いていたのであろう、眺める私に接する店員は冷たかった。

あれから15年。
あの時よりも多少の財はある。
加えて石川は震災でダメージを受けている。
機は熟した。
今こそ、金沢に金を落として悲願を達成する時だ。
JALはこのために私を金沢に寄こしたのだーーーー

そんな心持で九谷焼を扱う店へと向かった。

名工の作品を探す。
流石は九谷焼を代表する大家である。作品は見つかった。

ぐい吞み ¥88,000-


夢ははかなく散った。

15年前に見た、あの抜けるような青が使われていれば買ったかもしれない。
そうではないのに、あえて買う必要はない。
チャンスはまだあるだろう。

自分にそう言い聞かせ、店をそっと後にした。
夢は夢のまま、今日もそこに残り続ける。

とはいえ、微力でも石川に金を落としていきたい。
違うアプローチを試みた。

寿司を食べ、

以前の金沢訪問で美味しさが印象的だった日本酒を買い、
その他土産を買いこむと、
再び機上の人となり、石川に別れを告げたのであった。



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