「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ」感想

 ブログをnoteに移行した当時は記事を書くつもり満々だったハズなのだが気づけば1年も空いてしまった。

 しかも前回の記事がSAOP劇場版1作目である「星なき夜のアリア」の感想記事なので、このブログぱっと見はSAOの感想ブログみたいになってしまっているが、決してそんな事は無い……と思う。

 まぁそんな事はさておき「冥き夕闇のスケルツォ」について書いていこう。「星なき夜のアリア」の記事ではネタバレ全開、SAOヲタ全開で長文を書いてしまったのだが今作に関してはもうちょっと短めに要点をまとめ書いていきたいと思っている。

※以下、「ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇の
 スケルツォ」のネタバレを含みます


原作について

 さて、前作の「アリア」がアインクラッド1層だったのに対し、今作「スケルツォ」はちょっと飛んで5層での話である。SAOP原作小説にも当然この部分は存在しているのだが「冥き夕闇のスケルツォ」というのはSAOP4巻部分(5層)がコミカライズされた際のサブタイトルなのでコミック版が原作と言っても良いのかもしれない。

 私はこのコミック版を読んでいなかったので映画の制作発表後に全3巻まとめて購入し読んでみたのだが、その時の感想は「この話を映画化して果たして面白い作品となるのだろうか?」というもの。

 簡単に言うと話が地味なのだ。序盤中盤に特に見せ場はなく、あるとすればラスト近くのボス戦。そして最後の最後くらいだろうと思っていた。

 実際に映画を観て、見せ場は概ねその通りだったのだが、良いアクセントとなったのは劇場版1作目「アリア」でのオリジナルキャラクターであるミトの存在だった。

ミトの本作での立ち位置

 「アリア」でアスナの友人として登場し、1層でアスナを一度見捨ててしまったことを後悔しているミトだが、やはりそのままフェードアウトするキャラではなく、しっかりと「スケルツォ」にも登場してきた。

 5層ボス攻略のメンバー探しでアスナとしては当然元ベータテスターであり実力もあるミトに考えが及ぶのは当然の流れだろう。アスナがミトと会う場面はこの映画の中でも印象に残るシーンだった。

 ミトは最初は攻略への参加を断るのだが、やはりというか案の定と言うか、ボス攻略へ参加することになる。

 ところでミトの武器は1作目から変わらず鎌なのだが、鎌から鎖が伸びて鎖で攻撃できるようになっていた。あの鎌チェーン?って「アリア」でも使っていただろうか?ちょっと記憶にはないのだが……恐らく今作からだと思う。

 しかし、観ていて鎌チェーン化?した理由がわかった気がした。おそらくだが、その理由に関わってくる人物がネズハだ。

一番の不遇キャラクター

 映画を観た人でも「ネズハ?誰それ?」と思うかもしれないが、ミトが追加された影響で、原作には登場しているものの映画には登場しなかったキャラがいる。それがネズハ(正確には「ナタク」)だ。

 彼は不遇にもそのポジションをミトに奪われてしまった。

 ネズハは原作小説では1巻(2層)から登場し、何度かボス攻略にも参加しているキャラクターである。彼はSAOでは数少ない飛び道具の一つであるチャクラムを使用するので、ボスの弱点が頭など遠距離にある場合に活躍していた。

 今作の5層フロアボスも最初は頭に弱点があるので原作ではネズハのチャクラムが活躍するのだが、映画ではネズハは登場せず、代わりにミトが登場している。そのためもともとネズハが持っていた遠距離攻撃能力をミトに付与する必要があって「鎌チェーン」が実装されることになったのではないだろうか。

キバオウ、株を上げる

 原作との相違についてついでに書いておくが、映画中盤の、キリト、アスナ、シヴァタ、リーテン、そしてキバオウが5人で会う(密談する)シーンがあるのだが、あの密談、原作にはキバオウは含まれていない。

 今作のストーリーはアインクラッド解放隊(ALS)が、リンド率いるドラゴンナイツ・ブリゲード(DKB)をさしおいて5層ボス攻略しようとすることが発端だ。

 しかしそれはALSのリーダーであるキバオウの本意ではなく、ALSメンバーの強硬派の勢い(実際はALS内の工作員とも言える)を抑えることができず、やむを得ず許可したのだろうということが、小説/コミックよりもはっきりとわかる様になっていた。

アルゴの活躍

 忘れてはならないのが、今作においてアルゴの登場頻度とセリフ量が非常に多いというところだ。本作の冒頭は4層ボスの攻略シーンから始まるがそこからすでにアルゴが登場している。

 今までのTVアニメシリーズや劇場版でも度々登場していたアルゴだが、サブキャラの中でも登場頻度は低めだった。アインクラッド編で言えば主人公がキリト、アスナでありサブキャラとしてクラインやエギル、(映画にはまだ出ていないが)リズやシリカがおり、アルゴはその次くらいの印象。

 しかし今回はキリト、アスナに次ぐ登場頻度でれっきとしたメインキャラクターの一人だ。彼女が何を考えSAO世界で「情報屋」として生きているのか。アスナとの会話で語るシーンも印象深いものだった。

 ちなみにアルゴは小説の最新シリーズ「ユナイタルリング編」でも結構な頻度で登場しており、更に現実世界でも登場してくる。今後どうなるのか非常に楽しみなキャラクターだ。

シヴァタ✕リーテンについて

 恐らく、アニメでは2人とも今作が初登場だと思われるが、原作と比べるとあまり詳しく描かれていなかったと感じる。

 前述の5人の密談のシーン、原作ではフルアーマーでやって来たリーテンがキリト、アスナに自身の正体を明かしフルアーマー入手の経緯などを話すシーンがある。なかなか興味深い話だったのだが、その辺りはばっさりカットされてしまっていた。

映画の制作陣にとっては脇役のシヴァタ✕リーテンを描くよりももっと大事な場面が多かったというところだろうか。

 また、フロアボス戦においてボス部屋入り口の階段がゴーレムの顔に変わるシーンでは原作で拘束されるのはシヴァタであり、シヴァタを引きずり出してリーテンが身代わりになる展開だったはずだが、そのシーンも映画では拘束されるのがアスナ、助けるのがミトに変更されていた。

 少し可愛そうな二人であった。

フロアボス戦

 フロアボス戦はやはり今作でも見所の一つだとは思うのだが……

 なんというか、少人数で挑んだボス戦の割にはあんまり苦労しなかったなと。少人数だからこそできたと劇中でも言われていたが、区切りとなる5層のボスであればもうちょっと「ギリギリだった感」みたいなモノが欲しかったと個人的には思う。

 特にボスのゲージが残り1段になって、ゴーレム本来の人型形態になってからが弱かった。まぁこの場面はパーティメンバー各々のソードスキルをお披露目タイム、ということなのだろうが。

 映像に関しては申し分ない。天井から降りてくる足の表現は客席で見ていても恐怖を感じるような迫力があったし、壁が光りうねりだす場面などさすがの映像表現だった。

 ラストアタック(LA)はお誂え向きのキリトとアスナのダブルアタック(?)。原作ではキリト一人(ホリゾンタルスクエア)だったのだが改変されている。どうせ改変するなら映画序盤でアスナが4層のLAについて話しているシーンをつけたのだから5層のLAはアスナにすればよかったのでは?

 そしてボス撃破後、原作ではボスドロップ品のギルドフラッグがALSのオコタンに渡り、オコタンはそれを隠蔽しようとして一悶着あるのだが、映画ではそもそもボス攻略パーティにALSやDKBのメンバーがシヴァタ、リーテンの2人しかおらず、しかもフラッグもミトに渡り、なんの問題もなく解決する。

 原作のこのオコタンのシーンは結構良いシーンだと思うのだが、カットされてしまったのは少し残念だった。

まとめ

 さて、最初に書いた「この話を映画化して果たして面白い作品となるのだろうか?」というのは終わってみると杞憂であったといえる。

 「スケルツォ」は「アリア」で登場したオリジナルキャラクターであるミトを上手く使い、また僅かに原作を改変することで見どころのある面白い展開に仕上げた良作であった。

 作画に関しても問題なし、というよりはパワーアップしているようにさえ感じる。A-1 Picturesは今年リコリス・リコイルが人気となったが、同時期に何本もの制作を抱えていながら、これだけのクォリティを保っていけるのは流石の一言。

 演技面でもキリト、アスナらのメインキャラクターはもちろん素晴らしいのだが、今作で特に良いと思ったのはリーテン役の本渡楓さんだ。素人の私が言うのもおこがましいのだが、非常にキレイで聞きやすい声質でありリーテンの感情が伝わる良い演技だったと思う。

次回作予想

 「スケルツォ」の制作が発表されたのは前作「アリア」上映のラストだったのだが今作のラストには新作の発表は無かった。

 ちょっと話は変わるが2022年11月6日、SAO作中でVRMMORPG「ソードアート・オンライン」のサービスが開始された日が、現実でもうすぐやってくる。

 当日は「ソードアート・オンライン フルダイブ」というイベントが予定されているのだが、おそらくはこのイベント中に何かしら新作アニメの発表がされることだろうと期待している。私も配信チケットは購入済みなので当日が楽しみである。

 その新作がTVシリーズなのか劇場なのか、どの話をアニメ化するのか、気になるところだが、ユナイタルリング編のTVシリーズをやるにはまだストックが足りないはず。引き続きSAOP劇場版だとすると飛ばされた2層~4層のどれかか、もしくは6~7層のどれか。一番アニメ化しやすいのは3,4層だろうなぁ。

 いや、SAOP以外に一つアニメ化されていない作品があるではないか。

 それはアリシゼーション編の外伝となる「ムーンクレイドル」だ。

 私はSAOの中でもアリシゼーション編が、キャラクターではロニエが一番のお気に入りだ。だからロニエ(とティーゼ)が活躍するアリシゼーションの外伝「ムーンクレイドル」のアニメ化を心待ちにしている。

 期待を込めて次のアニメ新作は「SAO プログレッシブ 3~4層」(劇場2本)+「SAO アリシゼーション -ムーンクレイドル-」TVアニメ化、と欲張った予想してこの記事を締めるとしよう。

あぁ、また長くなった。。。

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