歳をとって家で死ぬのはふつうのこと

 父の兄弟は、子宝に恵まれなかった。そして後期高齢者になり、がんになった。父は体は元気だが医師から病状の説明を聞いても理解不十分で、私があとから話を聞くと「ん?「ほんと?」と思うことが度々。でも、長兄としてキーパーソンだと言い張る。
私は看護師。訪問看護の経験がある。
おじ、おばを家で看たお話をしたい。

おじの話。
70代。現役サラリーマン。おばとふたりで仲睦まじく過ごしていた。前立腺がん。はじめは検診でみつかり、早く見つかってよかったと言っていたが、治療が始まってから、なかなか効果があがらなかった。治療の選択肢がだんだん少なくなっていった。
 おばは、治療の効果があると信じていた。病院にはふたりででかけるものの、診察室に入るのはおじひとりだけ。おばが「どうだった?」と聞きおじは「大丈夫」と答えてきたらしい。看護師である姪の私に「なかなか思うようにいかないけど頑張るよ。〇子(おばの名前)をよろしくな」といつも笑顔だった。
 治療の最後の選択の場面、医師はおばの同席を促した。おじから「大丈夫」としか聞いていなかったおばは、医師の説明は耳から入るものの、頭にも、心にも到達していない。

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