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17.日本人の預貯金体質が招く不幸

⬜︎お金を使うと「時間差」がある(お金の保蔵機能)
 
お金が存在せず、物々交換を行っていた時代、そこには時間差はありませんでした。
今、お互いが手にしているものを交換すればいいのですから(交換の媒介)、物々交換はほんの一瞬で完了します。
 
もちろんそのころは等価交換が大前提ですが、現代社会ではお金を使うことによって非等価であっても交換が成り立ちます。(価値の尺度)
 

 一方お金を使うということは、誰かのお役に立ち(サービスを提供して)その対価としてお金をいただき、何かしらのサービスや物を手にするまでそのお金は保管される(価値の保蔵)ことになります。
 
その保管期間が長ければ長いほど、先に仕事をして、あとで仕事をしてもらうわけですから、お金が腐らないように保存する技術が必要となります。これを物価上昇(インフレ)リスクへの対応といいます。
 
お金を使うことによって、まず初めに気を付けなければいけない注意点が「物価上昇」なのです。
そのことを知らない人たちは、どんなに働いてもゆとりが生まれない生活を余儀なくされるのです。
 
 
⬜︎資本主義社会は「インフレ」主導
 
 そもそも金融は、起業家という「アイディアはあるが資金のない個人や企業」が、投資家という「アイディアはないが資金のある個人や企業」から資金を借りて「ひと・かね・もの」に投資し、アイディアを設備や組織、技術や製品の形に具体化させる役割を果たしています。
 
つまり、資金調達(融資や出資)こそアイディアを現実の利潤へと転化する資本主義の増幅装置と言えます。 
 
 なぜ資本主義でインフレ主導を誘発するのかというと、物価が上昇するインフレは、資金調達の実質額を相対的に年々軽くすることで、好況を強めるだけでなく、経済や企業活動を促進する働きをするからです。
 
実際、日本人の預貯金のかなりの割合が日本国債の購入に充てられていることで、国の資金調達は賄えていますが、私たちが一斉に預貯金を引き上げると、金融機関も国家も破綻してしまいます。
 
事実、過去に女子高生3人の雑談をきっかけとした自然発生的な“噂“が原因で金融機関が倒産したことがあります。
 
これは1973年12月「豊川信用金庫が倒産する」という噂が流れたことから騒ぎが発生し、短期間に約20億円もの預貯金が引き出された事件でした。
 
噂(デマ)がパニックを引き起こすまでの過程が解明された珍しい事例であるため、今でも心理学や社会学の教材として取り上げられることがあるようです。
 
一方、インフレに対して、デフレは負債の実質額を年々増やしていくことになり、経済や企業活動にブレーキをかけ、景気を悪化させるだけでなく、資本主義を長期的停滞に導くことにつながります。
 
 
⬜︎「常に成長」し続けることの歪み
 
資本主義は、日々成長することを前提にしており、安定よりも前進や変化や進化を求めるため、創意工夫によって生産性を上げ続けることが必須課題となっています。
そのために、企業にとって、機械化も作業改善も変化や進化のための当然の宿命なのです。
 
しかし売上が前年と同じであれば、その改善分は人余りを引き起こします。まして、業績が前年割れともなれば周囲の成長に取り残され、資金繰りの悪化、最悪倒産ということにもなりかねません。
 
どんなに大きな会社でも、どんなに高給を出していた優良企業でも、この成長し続けなければならない呪縛からは逃れられません。つまり、成長第一主義が資本主義なのです。
 
余談ですが、平成の30年間における上場企業倒産は累計233件にも上りました。(産業別では、製造業の66件、建設業39件、不動産業33件、金融・保険業25件、サービス業他21件、小売業18件、卸売業16件、情報通信業9件、運輸業5件、農・林・漁・鉱業1件)
 
ちょうどいいお金持ちになるために、必死に勉強し、一流企業に勤めたからといって、長い人生の継続的・安定的な収入を確保できるとは限らないことを知っていてほしいのです。
 
一方、世界を見渡すと、いまだに原始的な生活を行っている人種が数多存在します。

100年前と同じ農作業にいそしみ、機械化も作業改善もしなかったため、成長こそありませんが今でも安定した生活を営んでいます。
どちらがいいとは言いませんが…。

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