blog「キャッチボール」※2008年10月09日16:11

ふと、昼さがりに工場団地を通りかかる。


すると昼休みの休憩を利用して、作業着を着た会社の犬どもがキャッチボールをしている。しかも楽しそうだ…
「サラリーマンも大学生みたいなことをするんだな」と僕は気にもとめず、チャリを西に200mほど進めるとまたしても工場があった。


するとミットの快音が!!


まさか!ここでもやってる!

そうか!工場ではキャッチボールを通じて、若い人たちと仲良くなろうとしているんだ。

~~~~


先「おい!お前、名前なんていうんだ。」

後「…」

先「返事くらいしたらどうなんだ。ったく、俺が新卒で入ってきたときなんか、もっと元気があったけどな。」

後「…」

先「…お前好きな球団どこや?」

後「…阪神タイガース」

先「おっ!一緒やないか!野球やっとったんかいな?」

後「…はい。」

先「よっしゃ!ほんだら今からキャッチボールしよう!」

お互いグローブをつけ、キャッチボールを始める。

先「よいっしょ。ええ球ほるやないか!ホレ!」

後「…」

先「なんや、掛声もだされへんのかいな。」

後「…」

先「まあ、ええ球いうても今までで一番ヘタクソやけどな」

後「何?」

先「まあ、一応おだてようと思っていうたけど、ほんま遅い球やわ。蠅が止まるで!」

後「なんやって!おっさん!もう一回いうてみろ!おりゃ!」

先「おっと、失礼。蠅やないな。ほこりやわ。あはは」

後「なんやと!俺はなぁ、昔甲子園行ってんぞ!そこいらのヤツとは全然違うんじゃ!」

先「一緒や!まったくそこらの遊んでる若者と一緒やわ!」

後「違う!俺はあんなヤツラと違って苦労してるんや!」

先「甲子園球児やのに、ココにいてるってことか?へっそんなもん苦労でもなんでもないぞ。ただ野球がヘタクソやっただけやないんか」

後「俺はな、俺のオトンが借金して、大学の推薦を断って、働きに来たんや!」

先「親のせいにしたらあかんわ。。。」

後「俺は野球がしたいねん。お前になにがわかるねん!」

先「やりたかったらせい。俺みたいになるな。」

後「え?」

先「俺もそうやった。ほんで社会をバカにしてた。でもな、そんなバカなことしてたから俺は結局、野球も捨ててもうた。」

後「…」

先「大学なんかいつからでもいける。今はお金貯めて親孝行してからお母さん助けてあげろ。」

後「はっはい。」

先「それから野球せい。遅くなんかないぞ。お前ならできるわ。球みたらわかるもん」

後「せっ先輩…」

先「泣くな。がんばれよ」

後「はっはい。」

先「…やっとできたな、キャッチボール」

後「え?もとからやってるやないですか…」

先「違う。心のキャッチボールや。」

後「先輩!」

先「後輩!」

ナ「それから、この2人に夜のキャッチボールがあったのもいうまでもない」

ってあかん!最後があかん!ナレーター入るまではええ話やったのに。
そんな工場の働いてる筋肉質の人がみんながみんな夜のキャッチボールをはじめたら、夜の街で「甲子園」が始まってしまう。
たぶん、そういう風習みたいなもんやないんやと思うわ…。


そうか!今は空前のキャッチボールブームなのか…

~~~~

A「先輩!キャッチボールうまいですね」

B「当り前だろう。毎日キャッチングセンターに行って、125kmの球を受けてるんだから。お前の球なんかひよっこだぜ」

A「え?キャッチングセンターに通ってるんですか?」

B「もちろん。今日も仕事終りにいけるようにキャッチャーミットは持ってきているよ」

A「まじっすか?すごいっすね。あの光町のTUTAYAの横のとこですか?俺もあそこにいこうかなって思ってるんですよ」

C「ほんと、B先輩はすごいんだぜ。俺と一緒にそこのセンターに通ってんだけど、もう、マサカリ投法のインストラクターの球をうけてるんだぜ。スゲーだろう?」

B「よっ、よせやい」

A「すごいっすね。」

B「まあ、誰でももう1年くらいやってればとれるようになるよ。ところで、Cは進級できたか?」

C「それがまだなんですよ。今週末にテストなんですが。緊張しますよ」

A「そんなんもあるんですね」

C「俺も早く合格して、キャッチャーマスクを被れる資格がほしいですよ」

A「あ~だからB先輩はいつもキャッチャーマスクをいつもかぶってるんですね」

B「まあな。これはこれで大変だぞ。」

A「確かに、キャッチャーマスクを被りながら、溶接マスクもしてますもんね。」

B「あれはほとんど見えてないけどな。まあそれでも工場内はフライが飛んでこないからマシだけどな。あはは」

C「せっ先輩…」

A「ってか飛んでこないでしょ?フライなんか…」

C「てめえ。バカヤロー!フライなんかいつでも取れると高をくくっていたら大間違いだぞ!」

A「え?あっ、はい…」」

C「キャッチャーがフライを取れなかったら、ピッチャーがどれだけ落胆するのか、お前知ってんのか!」

B「C!もういい!」

C「でっでも…」

B「すまんな…許してやってくれ」

A「なんかすいません。」

B「A、実はな俺、昔ピッチングセンターに通ってたんだ」

A「え?そうなんですか?」

B「その時に俺のインストラクターがキャッチャーフライを取り損ねてさ…大喧嘩して、結局別れちまったんだよ。
  あいつの気持ち、俺全然わかってなかったなと思ってよ。それ以来、キャッチャーの気持ちを知ろうと思って、キャッチングセンターに通ってんだよ」

A「そんなことがあったんですね…何もしらずにすいません。」

B「いいんだ。さぁ、もう昼休みも終わりだ。残りの時間、しまっていこう!」

A&C「おう!」

C「あ!B先輩!あっちでT部長が呼んでますよ」

B「なんだろうな。はぁーい!今行きます!」

B、T部長に近寄る

T「お前、溶接できないからクビ!」

B「え~!」

A&C「ゲームセット!」

ってそんなわけない!
そんなAとCがうまいこと最後締めるわけがない。
抑えのエースでもあるまいし…。
ってそんなことはどうでもいい。なぜ、こんな大の大人たちがキャッチボールしているのだろう?

まさか!?来るべき戦争に備えた、秘密の軍事訓練なんじゃなかろうか?

~~~~
時は20XX。
すでに日本軍は兵器を使いきり、今まで政府が極秘に進めてきた「キャッチボール作戦」を決行することになった。


軍曹「我が軍は今、大勝利中にある!ここで敵軍を滅亡するためにもKBS、つまりキャッチボール作戦をここに決行する!」

兵士長「軍曹!やっと、私たちの力が必要とされる時がきたことをうれしく思っています。」

軍曹「うむ。では作戦の詳細を発表する。」

兵士たち「お願いします!」

軍曹「まず、敵軍が空中から攻めてきたときに、下でキャッチボールをしておけ!そうすれば敵軍は俺もあんな時代があったなと想い出に耽りながら少し近づいてくる」

兵士たち「はい!」

軍曹「そこで、その鍛え抜かれた肩で、敵機に向かって手榴弾を投げ込む!以上だ!」

兵士たち「はい!頑張ります!」

軍曹「うん?敵機のヘリコプターの音が聞こえる…来たぞ!KBS配置につけ!」

兵士たち「はい!!」

兵士たち、キャッチボールを始める

軍曹「敵機が上空に来た!今だ!」

兵士たち「それ!!!」

兵士長「肩痛っ!横に投げるんと、上に投げるんわ、えらい違いやわ!」

って、第二次世界大戦の終戦前の日本人みたいやないか!
勝たれへんのになんで無駄なことすんねん!
あのときは何が正しいとか正しくないとかわからんかってんやろな


そんなことを考えると、ボールが僕の自転車まで転がってきた。


男「すいません!とってもらえますか?」

僕「はい。いきますよそれ!」

男「ありがとうございます!」


久し振りに体を動かした。
なんかしらんが気持ちよかった。

僕は思った。


「たぶんコレやな」

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