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ポズナンでBuck-Tickを聴く

ポーランドのポズナンもこれで3回目の滞在になるだろうか。最後に来たのはいつだったんだろう。noteの投稿を探しても見つからないので、ブログの方を見ると、2019年のイースター休暇を利用して子どもたちと来ていたことがわかった。もうかれこれ4年半ほども前のことだ。

コロナ禍の3年を挟んでいるので、最後の訪問から思いのほか時間が経過していた。あの3年間、一体何があったんだろう。いろいろあったような気もするが、もはや空白の3年でしかない。

今回みたいに、ふとどこかに移動する、というのが定期的に必要なタイプなので強制的にどこにも行けない、外出も自由にできないという状況は閉塞感で息が詰まるような気分にさせられた。それでも慣れとは恐ろしいもので、どこにも行けない自分、と言うものに対してそれほど抵抗がなくなったように思っていたときすらある。

話が外れてしまったが、学校の秋休みなので、本来なら「家族旅行」なるものをした方がいいのだろうけど、今回はなぜかそんな気にちっともなれなかった。夏季休暇の一時帰国からここまで、ひとりの時間がほとんど取れなかったからかもしれない。

そんなわけで、月初めにオランダとドイツで撮影があったばかりなのに、また小さなスーツケースに荷物を詰めて列車に揺られることになった。子どもたちもその辺はよくわかってくれているので、特に反対もされなかった。「来てほしいけど、ママが行きたくないんやったらしょーがないな」とは、理解のある子どもたちである。相方もその辺は諦めているらしい。

ドイツの美しい湖畔の景色を見る休暇もいいんだが、どうしてもクエスト要素の高いと思われるポーランドの旅の方に魅力を感じてしまう。こればっかりはもう仕方がない。ゼルダばかりやっているせいもあるかもしれない。

列車の車窓から国境沿いにかかる橋を見ると、ワクワクしてくるし、見慣れた風景と少しだけ景色がズレた途端、なんだか嬉しくなってしまうのだから。ガタンゴトンと列車の揺れに合わせてうつらうつらしていると、「あーこれが人生の醍醐味だよな」とひとりごちてしまう。単純にできている自分に感動すら覚える。ベルリンから列車で3時間弱の移動だけですでに満足なので、本当に安上がりなのだ。

「あー、なんか来たことあるな、ここ」3度目だから当然である。適当に歩き出すが、途中で自信がなくなってグーグルマップを確認。ちょうど曲がるタイミングのところに来ていた。ポズナンの中央駅から街の中心街まで徒歩で15分から20分ほど。雨も降っていないし、天気もよかったのでスーツケースをコロコロさせながら、ゆっくりアパートまで歩くことにした。

ところどころに見たことのある街角が現れる。滞在先のアパートも難なく見つかった。かなり立て付けの悪い扉に苦労させられたが、なんとか鍵を回して中に入ることができた。ドイツも大概だが、ポーランドの扉もなかなか手強いようだ。途中で鍵が折れるんじゃないかというくらい力もコツも必要だった。今日のクエストはひとまずこれでクリアだ。

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翌朝、起きてコーヒーを淹れながら、ふと携帯電話を手に取ったら横浜に住む友人からBuck-Tickのボーカル、櫻井敦司さんの訃報を知らされた。そこから延々と彼の声ばかり聴いている。

夏の一時帰国中に東京でコンサートがあることを知り、かなり無理をしてどうにかコンサートに行けたのだけれど、まさかこんなことになるなんて。デビュー後の大阪で見たコンサート以来だった。35周年なんだ、すごい、と鳥肌が立ったし、時間の経過を感じさせられる厚みのある演奏に感激した。あの場所にいることができたのは幸運でした。本当にありがとうございました。

ポズナンでBuck-Tickばかり聴いている。人生は儚い。



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