見出し画像

世界の果てのような街

1993年に初めてベルリンに立ち寄った時、そのガランとしていて暗いイメージが何とも言えない感情を呼び起こした。

あれはなんだったんだろう。

ドイツというよく耳にする国の中にあって、ベルリンという街はそのメジャーな国とは一線を画していた、とでもいえばいいだろうか。まさに飛地のような存在。今でも「ベルリンはドイツではない」というドイツ人がいるくらいなのだから。

ポツダム広場を歩きながら、今はお洒落なプレンツラウワーベルクを歩きながら、こんなことを考えていた。

なぜ首都のベルリンのど真ん中にだだっ広い何も建てられていない野原が広がっているのか。

なぜ建物がこんなにボロボロで灰色なのか。

なぜ煤けた臭いが辺りに漂っているのか。

なぜ車がこんなに少ないのか。

そこだけ時間が止まっているかのような不可思議さが当時の東ベルリンには色濃く残っていたのだ。

今にも崩れ落ちてきそうなバルコニーの下をやや駆け足で通りすぎたり、どこまで行っても灰色の建物群を見上げながら、ただひたすら歩いていた。そして、それだけでも十分楽しめたのだ。

ここは普通の都市ではない。

知り合いに勧められたこれまた薄暗いカフェの中で手に取ったフライヤーのアート展示会を訪れても、そこには誰もいなかった。

とにかく人が今とは比にならないくらい少なかったのだ。

だから、というか知り合いとカフェに座っていても声を掛けてくる人がいたし、展示を見ていたら全身赤で身を包んだ人に声を掛けられた。

行く先々で変な人や面白い人ばかりと出会えるのが、私にとってのベルリン という街だったのだ。

ロンドンでもなく、パリでもない、ベルリン特有の出会い。

これは何かあるな、とそれまで考えていたロンドンやサンフランシスコ、NYではなく、卒業後の行き先が自ずと決まったのである。

ベルリンだな。

その時の判断が正しかったのかどうかはわからないが、今でもベルリンに住んでいるし、居心地のよい場所であることに変わりはない。

ただ、出会う人や街の持つ空気は180度変わった。でも、それはそれでいいと思っている。

*タイトル画像はベルリンで撮影したものです





サポートは今後の取材費や本の制作費などに当てさせて頂きたいと思います。よろしくお願いします!