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ゴジラの記憶 #15 メカゴジラの逆襲

昭和ゴジラシリーズの最終作、「メカゴジラの逆襲」である。初見はグッと大人になって、D社のDVDシリーズが初めてであった。

ゴジラ第1作で芹澤博士だった平田昭彦が、ここでは天才過ぎるが故に学会を追われ、そのため人類に恨みを持ち異星人に手を貸す真船博士を演じている。タイトルは「メカゴジラの逆襲」であるが、実際は「真船博士の逆襲」と言った方がいいかもしれない。まあでも、平田昭彦に始まり平田昭彦で終わる。本多猪四郎監督のもとで伊福部昭の音楽が鳴り渡ると、自分にとっては映画が3割増しに観えるのは仕方ないことだ。また、ストーリーもかなりアダルトなもので、異星人の手でサイボーグにされて蘇った博士の娘・桂(藍とも子)と主人公の青年科学者(佐々木勝彦)の悲恋が物語の軸となっている。この科学者が彼女に重要機密を話していたのを目撃し、上司に報告した研究所の同僚?助手?の女性科学者が後にジャズ・シンガーとして有名になる阿川泰子(当時の芸名は麻里とも恵)。劇中でははっきり描かれてないけど、本当は主人公の事、気になっとったやろうという三角関係的なことを、心が汚れた大人は直ぐ勘繰ってしまうけど、当時の子供にとっちゃこの部分は退屈やったろうなあ。

実際この映画は、シリアスなストーリー展開と、あくまでチャンピオン祭りの一環としてお子様お子様している怪獣プロレスとの収まりが悪く、観ていて何か落ち着かない気分になる。ここまでやるなら、いっそ振り切って一般映画として作ったらよいのにと思わんでもないが、当時の認識としては「ゴジラ映画は子どもが観る物」だったんだろうなあ。勿体ない話である。マッド・サイエンティストとサイボーグに改造されてしまったその娘、という組み合わせは、東宝特撮というよりは石ノ森章太郎チックで、ちょっとそそる。決して、桂のあの作り物の胸にそそられた訳ではない。でも、もしリアルタイムで観ていたら当時は中3だったから、そそられていただろうなぁ。

平田昭彦さんは結局、この作品が最後の特撮映画出演となってしまった。本当は84年の復活ゴジラにもご出演される予定だったらしいが、撮影直前に病状が悪化し、叶わなかった。享年56歳、早い!早すぎる!!お元気なら、平成ゴジラシリーズには絶対顔出されとったやろうに、残念ですなあ。
名優千秋実の息子さんでもある佐々木勝彦はバイプレーヤーや声優として息の長い役者さんになった。平成ゴジラシリーズにも出ていたが、昭和ゴジラシリーズではあのジェット・ジャガーの開発者として有名だろう。藍とも子は、その後にっかつに活躍の場を移し、今度は作り物じゃない本物の胸で、多くの男子たちをドギマギさせてくれた。阿川泰子は言わずもがなだけど、実は彼女、ウルトラマンレオとか流星人間ソーンとか、特撮とも縁が深い方なのである。

この後、ゴジラは9年の間、スクリーンから消える。そうして観ると、夕暮れの海の向こうに去っていくあのラストシーンはいっそう美しく、作り手の想いが伝わるようである。

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