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がんのサイン3

 加齢のせいにして見逃してしまったサインは、他にもあった。例えば頻尿。思い返せばやたらお手洗いに行っていた。人前に立つ仕事のときは、休憩のタイミングで必ず行った。尿意がなくても毎回も行った。なぜかというと、出しておかないとなんとなく不安。。。という感覚があったから。

 若いころは、仕事の終わりまでお手洗いに行かないことも普通にあったし、長時間の司会でも、会場から離れることは殆どなかった。だが、告知を受ける前の私は、『途中でしたくなったら困っちゃうから』と、とにかく何度も何度も、1~2時間おきに済ませておくということを繰り返していた。

 夜中に起きるほどの頻尿ではなかったけれど、なんとな~く常に、ちょっとだけお手洗いにいきたいような感覚があったのだ。腫瘍が膀胱に影響を与えていたのだと思う。

 異変は他にもあった。身体を動かしているときに、ジャーっと何かがショーツにつく感じがすることが、何度かあったのだ。
『え?膣から汗がでた?』、という不思議な感じだった。
 ちょうど運動中のことだったから、『膣って汗かくんだっけ。。。?』なんて、とんちんかんなことを考えたが、膣に汗腺があるわけもなく、オリモノだったのだと思う。

 サラサラの水みたいなオリモノがジャーっと出ていた。これも、大切な、がんの予兆だったと思う。なぜなら、術後は、ぴたりとおさまったから。その『ジャー』は、色や匂いから、汗でも、おもらしでもないことは確かだった。
 
 数々の身体からのサインを見逃し、がんだと気づかずに仕事を続けているうちに、体調はどんどん悪化していった。便秘もこれまで経験したことのないレベルになっていった。お腹がパンパンで苦しかった。

 何日も出ず、お腹の張りも酷くなったので、近所の胃腸内科でお尻からカメラを入れてもらったが、特に異常はないといわれ、下剤を処方された。
 でも、飲んでもお腹の中はギュルギュルとフィーバーしていても、お尻から出るのは白い汁ばかり。たまに小さなコロンとした便がでることがあっても、それは透明な粘膜に包まれていたりした。こ、これは、明らかにおかしい。

 そうこうしているうちに、お腹も痛みだした。寝返りをうつと、お腹がひきつれて痛い体勢があったり、眠っていても痛みで目がさめるようになっていった。さらには、トイレに走ってばかりで、ほとんど眠れない日も出てきた。

 便秘が放っておいてよいレベルではないことは明らかだった。大腸カメラで問題がないと言われたけど、そうはいっても絶対におかしい。

 そこで今度は、町医者ではなく、CTやMRIなど画像検査をしてくれる病院に行ってみることにした。新年度に入ってすぐの頃。桜が満開の季節を迎えていたけれど、痛みもあってお花見どころではなかった。

 隣の市の総合病院に行き、これまでの症状や、近所の胃腸内科で『過敏性胃腸症候群』と言われたことなどを伝え、さらに詳しい検査を希望した。結果、血液検査とCT検査をすることになった。はじめましての医師は、定年間近なベテランの先生だった。

 いつも病院にいくときは、安心が得られたらいいな、という思いで行くけれど、このときばかりは
『原因を見つけてください』
そう思っていた。

お腹いたいよう。。。の、つらい顏


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