師匠の欲望論
就職以降の人生における師匠と、ドライブしながら共通の知り合い(仮にAくんとしよう)の話をしていた。彼が言うには、Aくんは自分の欲望を知らないらしい。「自分の欲望を知ることが人生を豊かにするのに、Aくんはそれを避けている。燻って見える人の多くも同様に、欲望を避けているように見える。」とのこと。
この後に続く、首都高をすっ飛ばしながら話してくれた師匠の欲望論が面白かったので、記しておく。
欲望との付き合い方で重要なのは、以下の2点だ。
① 自身の欲望を認知する
② 欲望を維持する
それぞれ説明していく。
① 自分の欲望を認知する
彼は、欲望とその充足のサイクルによって人生は豊かになると言う。だが、燻っている人間の多くは欲望を避けている。もう少し詳しく言えば、道徳や倫理、規範を理由に自身の欲望は正当性がない、不純であるとし、認識しないようにしているということである。
例えば僕は性自認も身体も男性なのだが、女性的な服装を着用してみたい、という欲望が湧いたとしよう。しかし、男性なのだから男らしくするべき、という無意識の規範から欲望を抑圧し、見ないようにしてしまう。このような状態になってしまうと充足から遠ざかってしまう。
自身の欲望はしばしば道徳や倫理、規範に反し、それらは無意識のうちに働き、欲望を抑圧してしまう。これらを取っ払い、欲望を喚起し自身で認知するにはやはり「他者」が必要となる。
この他者には2種類の意味がある。1つはラカンの言う「欲望とは他者の欲望である」という意味での他者、もう1つは背中を押す他者である。
前者は大学をイメージしていただければ分かりやすい。自由な環境の中で様々な他者と出会うことで、多種多様な欲望と出くわす。大学は欲望を掻き立てる場だと東浩紀も言っていた。欲望のデータベースを持つことによって自身の欲望を認知できるようになる、という訳だ。
後者についてだが、世の中には欲望お化けみたいな人がいる。師匠もその一人だが、他者の持つ抑圧された欲望を嗅ぎ取り、それを喚起させる機会を準備してくれる人間だ。そういう人間に出会うことは滅多にないと想像されると思うが、世の中にはそういうことを趣味にしている人(というより他者の欲望を喚起させる欲望を持っている人)は結構いる。
このような他者により、自身の欲望は認知可能となり、欲望を発揮できるようになっていく。
②欲望を維持する
自身の欲望を知ったら、その欲望をコントロールする必要がある。欲望は人生を豊かにすると言えども、社会生活は欲望丸出しではままならない。僕が女装したいという欲望を認識したとして、突然明日から女装姿で出勤したら、少なくとも現代においては仕事どころではなくなる。
それでは欲望をどうコントロールするか。彼曰く欲望を維持するように努力することでコントロールは可能と言うことだ。
上の例の場合、僕の欲望は何も女装したい、というものだけではない。仕事においては成果を出したい、等の別の欲望もある。仕事の時には仕事における欲望を発露させる必要があるということだ。仕事の時に女装してしまっては、仕事における欲望を低下させてしまうし、女装の欲望も充足されない。
言い換えれば欲望の面積を大きくするように努めることだ。適したタイミングに適した欲望を発露させることで欲望はコントロールされ、社会生活を送りながら豊かな人生を送ることができる。
まとめ
以上を纏めると、
多様な欲望を知ることで自分の欲望を知り、欲望の面積を大きくするように努めることで人生が楽しくなる
ということ。
欲望の産婆術。刺さった。
<余談>
今年も終わり。大変な一年だった。
仕事は7人のチームが2人に減り、ストレスで帯状疱疹なんかできちゃって…(クソ痛かったし、全然引いてくれなかった)
絶対仕事に飲まれないぞという決意のもと、大学生みたいなパーマをかけたのが夏頃。あとこのくらいの頃からスキンケアガチ勢になっていた。
読書会やイベントは小規模だったかもだけど、ちょこちょこやっていた。
あと、諸々を経て金に困る状況を脱した。これが精神的にデカい。
来年に向けて色々準備中です。楽しみ。
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