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そばかすの姫が世を捨てる

【⚠︎ネタバレがあります。ご注意下さい】台風が来るということでシキミや棚田の作業を前倒し、雨の中屋内でできる作業をする予定に。ならば夜更かししても良かろうと仕事帰りに見てきました「竜とそばかすの姫」。

ポスト宮崎駿として期待されてきた細田守監督作品。事前情報の印象から「サマーウォーズ」の拡大再生産かな?と少し後ろ向きに感じる心持ちでの鑑賞。レイトショーでしたので観客は少なめ。実は内容はシリアスです。

大変に美しい映像でした。主人公すずの仮想空間Uでの姿、Belleの歌唱シーンは素晴らしく、これだけで観る価値があると感じました。音楽は常田大希さん。旬の方の起用は大成功ですね。IMAXで観ればよかったかな。

途中から、特に仮想空間内での、ん?これはディズニーへのオマージュかなというシーンが続き、Belleも何だかそれらしく見えてきます。後で調べるとキャラクターデザインはアナ雪の方(ジン・キムさん)なんですね。

家族の喪失から「また歩き出す」という物語ですが、多くの方が指摘されているようにやや脚本に難があります。50億人から1人を探せというキャッチコピーの動機づけが解りづらく弱いのです。置いていかれる人もいるかも。

「ようこそUの世界へ Uはもうひとつの現実。Asはもうひとりのあなた。現実はやり直せない。しかしUならやり直せる。さあ、もうひとりのあなたを生きよう。さあ、新しい人生を始めよう。さあ、世界を変えよう。」

これは作中に何度も出てくるUのインフォメーションです。母を失い世を捨てたすずがUで新しい人生を始めるんだなと思わせる。しかし実際のUは中傷や過剰な正義感に溢れた決して生きやすい世界ではない事も描かれます。

現実のネットも現実の世界も醜さに溢れています。人間がそうであるように。でも誰かに手を差し伸べる優しさがネットにもあるんじゃないか?それが喪失からまた歩き出そうとする人への一助になるんじゃないか?

これがネットを肯定的に描いてきた細田監督の真意だと思います。50億人から1人を探す理由は、目の前の苦しんでいる人に手を差し伸べようとした母を理解したい。だからこそ母と同じ行為をするためにバスに乗ったのです。

「竜とそばかすの姫」。おすすめです。

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