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アニメの聖地カット回収のやり方


 前回カット回収とその面白さについて綴り、ようやく回収の仕方(方法論)について触れられます。


カット回収の速度と精度を上げるアプローチ

 本題へ入る前に、カット回収時に理解できていれば精度と速度を上げられると感じたことへ触れておきます。とはいえ自分の言葉で正確に説明する自信もないため、参考にURLを貼る程度に留めます。さらに予め断っておくと、映像として描かれたものを再現するためには写真とカメラに詳しくなるのが最短ルートですが、いきなり覚えることから入るより撮りまくって直してく方が気負わなくて良いと思います。楽しむ為のものだからです。


画角:広角や望遠の話

風景を広く見せるカットから登場人物に寄った狭いカットまで作品では様々な画角が登場します。写す範囲と映り方についての理解があれば再現するためにどの程度の物理的な距離(と焦点距離)を取れば良いかとっかかりを掴みやすくなります。広角や望遠って何ぞ?って人はこの辺りを読んでみると良いと思います。

理解するよりも意識して見たり撮らないと中々身につかない話でして、このnoteの温度感的にはスマホの広角レンズをズームさせたりして撮ってるうちにある日突然理解できるようになる位のノリでもいい気がします。それに、広く撮ってそこから合わせる範囲を切り出す(トリミングする)テクニックもあるのであるべき画角より広く撮る分にはまぁ修正が利きます。

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画面の比率:映像作品は概ね16:9

撮影する写真の縦横の比率には種類があります。映像作品は多くの場合16:9です。そのため、撮影時にカメラのアプリから「16:9」にしておくと画面の見方が統一できて合わせやすくなります。デフォルトではカメラは3:2、スマートフォンは4:3の場合が多いです。

例えばこのカットも横16:縦9の比率で作られています。

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それをカメラで何も考えずに撮ると3:2になります。アニメより縦が広くなります。あとでトリミングすれば幾らでも切り取れますが、比率の違いに慣れずにやると「構図が合わないぞ...?」と頭を抱えるので最初は形から入る方が良いです。

他にも絞り(ボケ)のような話もありますが、カット回収自体は風景を撮って気を取られることはないでしょうから今回は流します。このテーマだけでnoteが書けそうなくらい完全にカメラの使い方の話ですね。私が知りたい...。

実際にやってみよう

 長くなりましたが、今回は「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第9話『仲間でライバル』に登場した宗谷の1カットを回収してみましょう。夜のカットになったのはサンプル探しを思いだしたのがちょうど通りすがったタイミングだったからです...。ともあれ、昼も夜も関係なく順番的には構図を決めてから細部を詰めていきます。ポイントは背景の重なり方です。重なる部分が一致すればおのずと精度が高くなっていきます。

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現地へ行きます

 調べれば東京国際クルーズターミナル駅から歩いて辿り着けます。これが聖地です。朝香果林さんがにっこりしていた場所です...!

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天気が悪いのはこの写真だけ別日のものだからです。

画面の比率(アスペクト比)を16:9にする

カメラやアプリの設定から画角を「16:9」にしておきましょう。

アタリを付ける

アタリは「何となくここだな」となる場所へ近づくところから始まります。今回の場合は背景に写る物が多く分かりやすいので辿り着いた時点でクリアです。スクリーンショットを眺めながら映っている背景を見ながら何となく同じような並びの場所を探してみましょう。

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こんな感じですね。


背景の重なりから精度を上げていく


 ここからは細部の調整をしていきます。意識を向けるのは元カットの背景同士が重なっている部分です。今回のスクリーンショットでは分かりやすいところでは黄色い枠をつけたところが該当します。簡単なところは現場で確認すれば良いですが、難しそうなところはスマホではなくPCやテレビの大画面で確認した方が確実です。画面サイズが小さいとあとで見落としてズレることがあるためです。

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ひとまず判別しやすいのでSOYAのロゴと手前の欄干を合わせてみましょう。慣れればどっちへ動けば良いか勝手に分かるようになりますが、慣れるまでは挙動不審タイムです。

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左右上下を調整しているうちに合いました。写真は目視確認のためにズームしてたのを撮ったものです。続いて左手前の黄色い係船柱、奥のクルーズターミナルへ向かう橋と駅舎の重なる部分、駅舎の屋根とフジテレビ本社の重なる部分を合わせていきます。遠くを合わせようと移動すれば近くが合わなくなるものなので、その際は前後の移動(距離を調整)することで両方が合う状態を保てないか意識しておくのがコツです。(合わせるのに必死だと中々気が回らない...)

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こうしてあとの3箇所も巧いこと合いました。じゃあこれで完成かと思いきや、合わせることに注意が向きすぎて見落とすポイントがあります。

撮る前に斜めになっていないか確認する

よく見ると写真が左に少し傾いています。

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細かいところへ意識を向け過ぎていると全体が緩やかにおかしかったりするので、撮影する前にチェックしてみてください。水準器のあるカメラや表示に対応したスマホだと楽なのでお勧めです。また、Adobe Lightroomアプリなどを使えば撮影後に斜めを水平に調整できたりします。

もちろん作中では敢えて斜めにしていることもありますが、たいていの場合は綺麗に垂直に描かれています。むしろ斜めから見てるのに垂直だったりすることもあって合わせられないこともあります。とりあえず、今回のカットも欄干を見てみると垂直だと気付くでしょう。

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カット回収とトリミングをして完成

時間帯は合いませんが、斜めだったのを直して撮ればカット回収完了です。

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画面をかっちり合わせて撮るのも良いですが、自分は資料のためと微妙に合ってない時のリスクヘッジのため少し広めに撮ることがあります。特にズームレンズだと人が動かずとも柔軟に出来ますが、画角調整で合わせようとすると背景の大きさが変わるので注意です。今回は広めに撮っていたので最後にトリミングしてカットに合わせています。

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これで完成です。写真は視認しやすいように色を少し加工しています。夜になると視認するのが難しくなるためハードルがだいぶあがります。最後は場数と慣れと気づきでステップアップしていくことだと思います。

終わりに

 「背景の重なり」をヒントにカット回収をしていくアプローチについて説明しました。壁に面したカットは写る範囲を調整するだけで済みますが、多くの場合は壁ではなく様々な物体が写り込むため、そこを逆手に取って詰めていけば構図が勝手に決まると考えた次第です。ただ、多すぎるとちょっとした動きで他の部分が大きく変わるので反対に難易度が上がります。

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これがその例です。大きく分けて手前から3層の棒と奥のベンチを巧く合わせるにはかなりコツが要ります。これでもよく見るとアングルなどが合ってません。おそらくもう少し広角か引いてみるべきだったのでしょう。またここでは望遠カットについては言及していませんが、もう一段こだわろうとすると背景の圧縮具合から画角まで推定して回収することもできます。

突き詰めると修行のようですが、聖地巡礼をしたら気に入ってる場所で程々に緩く自分の中で納得できるカット回収を楽しんでみるのはどうでしょうか。きっと思い出になります👍

ちなみにアニメのカット回収について興味がある方がどの程度いるのか知りたいので、面白かったら♡(スキ)を押して可視化してもらえると今後同じような話を書くモチベになります。良かったらお願いします。

補足:スクリーンショットへの加筆は本稿で説明する内容を明確にするために行っているものです。

「面白かった」「役に立った」など琴線に触れる部分があれば、スキなどのリアクションを頂けると今後書くモチベとテーマの参考になります🙏