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アニメの舞台カット回収の醍醐味を語る


 私の周辺ではテレビアニメやドラマなどで登場した実在の場所を訪れて写真に収める行為をカット回収と呼ぶ人達がいます。そんな周囲に影響されてやり始めた口なのですが、3ヶ月ほどテレビアニメのカット回収のブートキャンプ状態になったため、自分なりのカット回収の方法論(テクニック)を振り返っておこうと思いました。

ただ、カット回収そのものについて整理してたら話が長くなってしまったため、今回は先立ってカット回収の行為そのものについて綴っておこうと思います。突き詰めれば、自分にとって作品世界と舞台を繋ぐ接点であり、記録であり思い出です。

カット回収とは

 カット回収といえば、通常はアニメやドラマで場面切替が行われるまでの映像のかたまりを制作現場へ取りに行く(文字通りカットを回収する)ことを表すようです。一方で、今回テーマにするカット回収は放映されたアニメやドラマに登場した場所を探し訪れ写真に収めることを指します。写真からアニメーションにおこされたものを再び写真に還元していくアプローチから、正反対の行為と呼べます。ある意味で、1枚のイラストから場所・撮り方などをリバースエンジニアリングしていく作業とも言えます。

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なぜカット回収するのか?

自分の場合は概ねこんな理由です。

1.聖地巡礼マップを作っており、作中のカットと比較する資料として必要なため (説明資料としての側面)
2.一致度が高ければ高いほどに作品と舞台に同一性・実在性を感じられるため(作品世界と現実の接点)
3.いつか景色が変わってしまうのでその瞬間を思い出として切り取っておきたいため (記録としての側面)

1つ目は必要に駆られている面が含まれるものです。聖地巡礼マップなどで舞台を説明したり利活用するための資料として残します。説明資料なのでもちろん他の位置からも写真を撮ります。

個人的には2つ目がキーになっています。基本的にスクリーンの中で見た場所を聖地巡礼として訪れれば行為としては達成しますが、そこで同じものをリアルから切り取るとさらに実在性を感じられます。いわば作品との接点として純粋に好きで追求するためにやります。感覚が分からない人向けに例えるなら、出てくる場所の数だけ作品と繋がるゲートがあるようなイメージです。

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この接点を切り取ったものは似ていれば似ているほど密度の高いものになっていきます。その意味ではどこまでも突き詰められる一種の独り競技とも呼べます。何より、一致度が高いと後から振り返ったときのリアリティも高く感じませんか。つまりそういうことです。ちなみに脱線するのでここでは取り扱いませんが、これを追求していく中でキャラクターと舞台の関係性を巡って"何か"が構築されていくのか、舞台となってるエリアで直接的には登場しないけどキャラクターの実在性を感じる場所や風景を見つけては撮る傾向が強まったりしてます。ここまで来るともはや舞台全域が何かを探しに行くテーマパークのようなものです。

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3つめは様々な理由で舞台は変化していくため同じものを見られなくなるまでの記録や思い出として残しています。中には初回放送前あるいは放送期間中に失われてしまった風景や聖地が多数ありますし、とりわけ再開発が決まっているヴィーナスフォートは喪失が確定している舞台の代表例と言えます。変わって行くからこそ瞬間を思い出に残せるのが写真の良いところです。

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ある意味で必要に駆られたり、素直に好きで追求したり、思い出や記録として残す為に。これら3つが混ざり合いながら撮るのが楽しいのです。

カット回収に求められる基準って何だろう

 ところで例えば鉄道の写真には定められた構図の厳密なルールがあるようですが、カット回収はそもそもメジャーなものでもないためありません。人によっては同じ場所にいて適当に撮ればカット回収という人、せめて作中と同じ向きで収めたものをカット回収という人、いやいや時間帯や季節と構図・アングルまで揃えてこそカット回収では?と思う人もいるでしょう。私も最初はテキトーに撮っていましたが、先の3点を意識するようになってから細かくなっていきました。とはいえ、そもそも作品を通して舞台に感じるもの自体が千差万別のため、そこに依拠して切り取るものも千差万別です。よってカット回収自体も定めようと思えば基準はあるのですが、そもそも競い合うものではなく自分との対話でやるものでしょうから各自の思い思いでやることだとは思います。

とはいえそこで放り投げたら話が終わってしまうので、精度を上げていくと構図・アングル・画角・時間帯・天気・季節・フィルター・色味などなど、理屈の上ではオリジナルを完全再現するところへ行き着くのかもしれません。理屈上の話はともかく、ここでは振り返るに当たっては私なりに撮っていた時に考慮していた視点を指標にしておきます。

・アングル・ポジション・構図・画角・天気・時間帯・季節

色味を入れなかったのは作品世界の色使いがあるように現実の舞台にも色があるからです。どちらに寄せるか今の自分の中には正直答えがありません。ひとまずは自分の中では6つのうち3つを満たせそうなら「カット合わせ」と呼んで再現を試みるものと区分しています。なんせおびただしい数のカットの全てで高水準を保つことは困難ですから、自分の好きなところだけにこだわる位でも良いと思います。

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個人的に気に入っているカット合わせです。「Butterfly」で登場するヴィーナスフォートは画角と明るさ的にスマホでは難しいところもあると同時に、アニメ虹ヶ咲の中でとりわけMVを意識して作られたこともあって映像効果を含めれば難易度がとても高いと感じます。ですが、ここまで撮れるだけでもとても楽しいですね。合わせること自体とても楽しいのです。そんなところが好き。

何ならこのnoteより近江彼方ちゃんがヴィーナスフォートで歌う姿を見て

そんなカット回収をどうやるかという話


 毎週新しい舞台が供給されるなかでカット回収やカット合わせに割ける時間にも限度があります。それなら、なるべくそれっぽく見えるよう最低限のレベルを保ちつつ素早くカット回収する方法が必要になります。

そうして試行錯誤したアプローチを次回のnoteで説明していきます。ちなみにカット回収しながら作っていった虹ヶ咲の聖地巡礼情報をまとめたファンサイトはこちらです。

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