【インタビュー】No.5 大木実奈
座・高円寺劇場創造アカデミー出身のメンバーを中心として活動する、CTAラボによる演劇創作プロジェクト。2023年度は劇作家・演出家の松田正隆を迎え、小津安二郎の映画『東京暮色』(1957)をモチーフに東京の現在を描いた新作『東京トワイライト ー強盗団と新しい家ー』を上演します。
本プロジェクトに参加するアーティストへのインタビューを複数回に分けて掲載します。第5回目は、俳優の大木実奈(おおき・みな)さんです。
これまでの活動(表現との関わりや経歴)について
高校では演劇部でした。大学でも演劇を少し勉強していましたが、実技はほとんどやっていませんでした。でも演劇をもっとやりたい、知りたいと思い、劇場創造アカデミーに入学しました。演技を本格的にやりはじめたのはその頃からです。
アカデミー修了後、同期の吉川くんと仲道くんと私の3人で「noyR」というユニットを立ち上げ、公演をやるようになりました。noyRでの活動を軸にコツコツと演劇を続けてきたという感じです。
CTAラボに参加しようと思った理由
松田さんの作品に関わってみたかったからです。アカデミー修了生の弓井さんや同期の桐澤さんがマレビトの会に出演していた時に公演を観に行ったりしていました。あと『蝶のやうな私の郷愁』っていう作品があって。それが好きで。
*『蝶のやうな私の郷愁』
劇作家・松田正隆の初期作品。台風が近づくある夕方、アパートの一室で暮らす夫婦の二人芝居。
今回の作品について
大木:全く自分が経験したことのないお芝居なので稽古はいつも新鮮です。発話の仕方とか、身振りに関するアプローチ、作品の作り方に慣れるまでにすごく時間がかかっているかもしれません。どうやってこの世界を理解するのかっていうところがまだ掴めてはいなくて、少しずつ慣れようとしています。あるシーンで、パキパキとした動きをしたら「もっと曖昧にやってほしい」と言われました。ここまで曖昧にしたらわからないのでは、と不安になったのですが、松田さんの中ではきっとその曖昧さを見たいんだなと。曖昧だけど、中身はあるように。ということは、本質的には曖昧ではない、そもそも曖昧って何だろうとかグルグル考えています。とにかく作品の世界や空間に馴染んでいけたらいいなと思います。
ー少しずつチューニングをするような作業ですね。変な質問ですけど、どんな感じで淡々としたセリフを発話しているんですか。
大木:今は感情は込めないようにやっていますが、そうすると多分「無機質すぎる」っていうことになるんだと思います。機械が話しているような、無機質すぎるのは多分違う。まだ分かっていないんですよ。
ーなるほど。「わかってない」っていうのはすごくリアルですね。
大木:他の人の芝居を見ている分にはみんな上手いなあと思います。少しずつちゃんと自分のものにしていってるんだろうなって。自分は動きとか動線を覚えるのも苦手な方なので、もうちょっと身体に入ってきたら何か分かるのかなと思ってます。
台詞もこの2ヶ月ぐらいで一回忘れてみました。実際は完全に忘れたわけじゃないですが、質感を思い出す作業が大事な気がしています。
ー(記録映像を観て)大木さんが爆弾を投げる身振りは印象的でした。
大木:あれは最初砲丸投げみたいにやってたんですけど「もっと下手にやってみて」と言われました。自分なりの下手感はやっているつもりだけど、まだ決めあぐねてます。普段やってきたような芝居だったら、もう少し登場人物の心情とかキャラクターを詰めていったりするんですけど、『東京トワイライト』はそういうのじゃないところからアプローチしていかないといけないんだろうなと思っています。スタート地点が普段と違うというか。摩訶不思議ですよ。分からないでもないけど摩訶不思議。面白いです。
東京について
ー大木さんにとって「東京」は生まれ育った場所だと思うんですけど、好きな場所についてお話いただけますか。
大木:好きなところだったら、神保町。父の職場が御茶の水とか神保町のあたりにあって、よく連れて行ってもらった場所なんです。後楽園も近いから遊園地にも連れてってもらってた。家族の思い出がある場所です。大人になってからは1人で本屋さんに行くぐらいなんですけど。
あと最近は浅草も好きです。すごく古い場所なのに、いつでも新しい人がいる。つまり新しいっていうのは「初めて浅草に来ました」っていう観光客の人と昔から浅草に住んでいたり働いている人が混ざっている場所、という意味です。わいわいしている感じが良いなと思います。たまにその中に紛れてみるのも楽しい。
聞き手:與田千菜美
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