この世はいきにくい
夏、同い年の俳優が亡くなった。
ルックスもよく、実力もあり、若い時から成功していたと思っていた人の自殺は、同い年の自分たちからしてみれば当然の動揺だ。
世間に衝撃を走らせた事件の後、友達から連絡があった。
「びっくりだよね」
それは私も驚いた。
驚いたが、どこか納得してしまう自分もいた。
「まあ、気持ちはわかる」
そう返したこの一言で友達は何を感じたのだろうか。
「奈都の作風とか、好きなものからそう感じるのわかるけど……死なないでね」
彼女は、いったい私の何を察したのだろうか。
「大丈夫。書けるうちはまだ死なないよ」
「そうだね」と返ってきたから、多分誤魔化せたのだろう。
でも、私は思うのだ。
この世界は生きにくい。
この世界は逝きにくい。
だから、彼の気持ちもわからなくはない。
そして、私がそう思っていることを友達は知っている。
「でも、私はどんなにつらくても死にたいとは思わないんだよね」
個人的には衝撃的だった彼女の言葉。
ああ、こんな人もいるんだな。
いや、本当はこれが普通なのかもしれない。
私なんて、ただ呼吸をしているだけでも消えたくなるから。
でも、それが世界の普通なのだとしたら、君に差し込む光を少しでも分けてください。
――「死にたがりな私」と、「死にたいがわからない」彼女の会話。
「死なないでね」
うん、わかったよ。
とりあえず、今は君がいるからね。
死なないように、書いているんだから。
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