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タルトの香る駅

久しぶりに通信制限ギリギリになってしまった今月。
超過したくないから、せっかく外出するのに乗り換え案内しか見れない。
1日1GBで残り2日間を耐え抜く!絶対に。

時間が増えたんだな、と分かりやすく痛感する。(その時間でスマホ触るなよ!と自戒。反省します。)

それでも時間の有限性は感じていた。
気がつくと1日、また1日と過ぎて、7月も過ぎた。あの人の誕生日も、今年も過ぎた。


みなとみらいに出かける今日は100点の夏らしさで、外に出た瞬間「うわぁ」と思った。表情は「うわぁ」となっていたと思う。

けど、いつもの「夏アンチ」な感情ではなくて、日照りに圧倒されただけ。
夏を感じるぞ〜!の心づもりの日に、この気候だとむしろ気分も上がった。


渋谷駅に着くと、いつも通りの混雑。
渋谷も新宿も、下北でさえも、思い出があるから好きだけど、そうじゃなかったら嫌いだなぁとつくづく思う。

井の頭線の改札をくぐってマークシティ側のエスカレーターを、いつも通り右側を歩いて下る。
そのまま東横線を目指して地下通路に入った。


地下へと続く階段を少し下っていたとき。
どこからか焼き菓子の匂いを感じて、突然に懐かしい感覚に襲われた。

タルトの香りだった。

あの駅を、街を、あの人を思い出して、
目頭が熱くなった。

学生時代住んでいた最寄駅の駅舎には、タルトのお店があった。
4年間、自分1人じゃ絶対に買うことのなかったお店のことを、こんな形で思い出すなんてね。

ただの対象が、今回で言えばただのタルトが、ただの対象としてだけ感じられたら、どんなに楽だろうと思うけど、
想起材として不意に現れるそれに、意図せず心を動かされることがなかったら、人間らしくないな、と思う。
まだこんな感覚になれて良かった。

もう、そうあってほしかった過去とか未来についてあれこれ考えることは殆ど無くなったし、これが最善だと思ったあの日から、
この距離や感情に後ろめたさを感じることは減っていった。
完全には無くならなくても。


先週の誕生日、心の中でおめでとうと呟いた。

幸せになるから、どうか幸せでいて。

毎年、夏がひとつの節目になっていくだろうなぁ。


書き終えると同時にみなとみらい駅に着いた。
切り替えないと!

行ってきます。

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