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虎よ

虎のことがずいぶんと好きだ。

立ち寄ったお店やインスタグラムの広告などで見かける、衣服やかばんやクッションやマグカップや、そういったものに虎の絵がプリントされていたり、刺繍されていたりすると、あっ、と思ってしげしげと眺めてしまう。たいていの場合は眺めるだけにとどまらず、購入するかをしばらく真剣に考える。

noteで何度か話に出している、オニツカタイガーのミニトートバッグには、巨大な虎の顔が刺繍されている。愛用しすぎて持ち手が汚れてきたので、洗うか買い替えるかしたいところ。

それに、しばらく前からずっと、チベタンタイガーのラグがとてもほしい。あの獰猛なのにユーモラスな表情と堂々たる体格、それにふさわしい、どっしりと目の詰まった織り地。ベッドの脇に敷いて、眠る前や目覚めた後、裸足のつま先でそっと、その毛並みを撫でてみたい。

それから、ブルゾン。
愉快で素敵なTシャツがたくさん売られているグラニフというお店では、現在画家の石黒亜矢子さんとのコラボデザインが売られている。
鋭い眼光とまるっこい手足のコントラストがキュートな猫の妖怪たちもそりゃあかわいいけれど、私が惹き付けられてやまないのは、互いのしっぽを咥えて虎が列を為す「バターの虎」のシリーズだ。
特に、私では確実に迫力負けするであろう、真っ黒なベロア地のいかついブルゾンが欲しい。袖にジャージみたいなラインが入っていて、その上に躍動感あふれるポーズで刺繍されている、二頭の虎が超クールなのだ。

こんな調子だから、油断すると家のなかが虎だらけになってしまいそうで。虎モチーフのいろいろが目に入るたび、微々たる自制心を総動員させている状況である。

ただ、例外もある。いわゆるトラ柄(虎の顔や姿ではなく、毛並みの縞模様だけを柄にしたもの)には全く惹かれないし、阪神タイガースのグッズも集めようとは思わない。あれらにはなんというか、一頭の虎としての生命力をぜんぜん感じないのだ。

生命力。

そうか。結局私はあくまでも生き物としての虎が好きで、でも触れ合うことは叶わないから、代替品として虎グッズを欲しがっているのかもしれない。
だって、猫や犬、うさぎなどのことも大好きではあるけれど、それらのイラストがくっついた小物などを見ても、めったに欲しいとは思わない。多分彼らとは日常である程度触れ合うチャンスがあるから、デザインに対する採点が厳しくなっているのだと思う。

あわよくば虎と、仲良くなってみたい。それも、動物園で灰色のコンクリートに囲まれた虎ではなく、ジャングルのむっとするような暑さと湿度の中で、生い茂った下草を踏みしめ、シダの葉をかき分けてのしのしと歩く虎と。
そうしてあのどっしりした大きな掌を両手で――片手では難しいだろうから――そっと持ち上げて重みを確かめたり、胴に腕をまわして頬を当て、毛皮の下のしなやかな筋肉を感じたり、宝石の名前にもなるくらいうつくしい瞳をのぞき込んだり、大あくびをしたときの口周りの柔軟性や凶悪な牙、それ自体一個の生き物のように動く舌にみとれたり、顔周りのふさふさとした毛並みに触れたり、してみたい。分厚くて丸い、けむくじゃらの耳にも。つやつやとした背中の、すてきな模様にも。

ZOZOTOWNで虎の姿が散りばめられた柄シャツを、よだれをたらさんばかりに眺めているときの私は、結局はそのシャツを媒介してそういった瞬間を夢想している。そういうことなのだと思う。






虎好きとしてはたまらない漫画をご紹介。
2022年が終わったあとも、折に触れて見返してしまう。


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