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理想の人

 イタリアの作曲家トスティの歌曲、Idealeを練習している。題名は「理想」「理想の人」とも訳される。手元の楽譜では、森田学が、冒頭の歌詞にこんな訳をつけている。
「私は平和の虹のようなあなたを
 天の道に沿って追いかけた」 
 徹頭徹尾、巡り合った最高の女性との再会を祈る熱烈な思いが溢れる言葉が続く。
 人生の中で、すべてに完璧としか思えない異性と出会う機会は稀有である。その相手といつ再会できるかわからないとなれば、ますます「理想」の像は、胸の中に留めておくには大きすぎるほどにまで膨らみ続ける。
 そんなあまりにまっすぐな若き青年の心を歌うには、自分は少し歳をとり過ぎているかもしれないが、歌唱というある種の演技の中で、恋に恋する若者になりきるのも悪くない。
 もちろん「理想」の恋人が、必ずしも理想の伴侶と同義ではないことは、十分すぎるほどわかっているのだけれど。 

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