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「憑依怪談 無縁仏特別編」


怪談を蒐集していると、怪異の理由が分からない体験談に出会う。
筆者は【欠けたピース】がある怪談として、そのピースを体験者や聞き手達と怪談脳全開で推理しながら話し合うのが堪らなく好きだ。
『憑依怪談 無縁仏』にも【欠けたピース】ある実話怪談が何話もある。
元々わからないものや、あえて諸事情で公表できない箇所を【欠けたピース】にした怪談もある。
読み終わり怪異に違和感があれば、話の中に必ずヒントがあるので是非もう一度読み直して、この【掛けたピース】の答えを推理や想像をして楽しんで頂ければ幸いです。

そして別の理由で【欠けたピース】が生まれてしまった場合がある。

『憑依怪談 無縁仏』に纏わる話をしよう。
第二話目の『心霊写真談』で体験者である道也さんのこんな台詞がある。

「由美子さんにはまだ話してないのに、来れなかった学生さんがいるよね。って当てるんだぜ」

実話怪談を文章にするにはカットする技術が大切だ……。
ある実話怪談作家の言葉である。
実話怪談には直接怪異に関係ない部分を省略することが必要なのだ。

その学生の存在は書かなくても『心霊写真談』は実話怪談として成立する。
書籍を読まれ【この学生はどうなったんだ?】との疑問を持たれた方もおられると思う。
筆者は何故【来なかった学生】の存在を書籍に書いたのか?
そして今回わざわざそのことを書くのか?
ここで真実を皆様に明かしたい。

その学生に纏わる体験談を後半に入れるつもりだった。
しかし、ころっと忘れてしまっていたのだ。……ころっと。
書籍を買ってくれた皆様。すいません。反省しています。
書籍化に許可を頂いた体験者様。すいません。反省しています。

今回は筆者の失敗を挽回するチャンスを頂けたので、その学生に纏わる怪談を書かせて頂きます。
『憑依怪談 無縁仏』をまだ買われていない皆様も大丈夫ですので安心して読んでください。
ただし読んでからの方が69%増量(当社比)で楽しめます。本当です。

『憑依怪談無縁仏  心霊写真談 (粗筋)』

「大学の八号館の教室に幽霊が出るから撮りに行こうって。誰が言い出したのかは思いだせないんだけどね」
道也は芸術系の大学に在学する学生である。

真夜中の教室に忍び込んだという。
同じ大学の男子寮に住んでいる道也と克彦ら六人は教室に心霊写真を撮りに行った。
暗闇の教室で一枚だけ写真を撮った。
心霊写真が撮れるとは考えてはいなかったという。

「あの日。克彦だけが寮に居なかったんだ」

写真の現像が上がり、留守だった克彦以外の五人は道也の部屋で写真のプリントを見ることになった。
教室を撮影した写真には、教室の柱に男性の顔があった。
危険を感じた自称密教を研究している柳田は、九字を切りながら写真を焼くが泡を吹いて倒れてしまう。
五人は恐ろしくなり、大学の近くにある神社に写真の灰をビニール袋に詰めて向かうことになる。

時刻は二十一時過ぎ。神主は留守だった。
だがお百度を踏んでいた夫人の由美子にお祓いをしてもらい、心霊写真の障りは解決するのである。

由美子の能力は凄かった。
来れなかった克彦の存在を言い当てるのである。
できるだけ早く彼を連れてくるようにと言った。

タイトル「いろ」

「由美子さんからは理由を話してもらえなかった。
だけど克彦を神社に連れて行かないと駄目だと強く感じたよ」

道也は同じ寮に住む克彦の部屋に何度も訪ねるが、彼が戻ってくることは無かった。
克彦と同じ学部の学生に聞くと、最近は講義にも出てないという。
まだ携帯電話がない時代。
連絡をとりあうのは時間がかかり、すれ違いも多かった。
克彦が行方不明なのは、あの心霊写真に関係があるのかと心配をした。

一週間が過ぎた夜。克彦が道也の部屋を訪ねてきた。
母親の調子が悪かったので岡山の実家に帰っていたという。

道也は心霊写真に纏わる一連のことを話し、翌日全員で神社に行くことになった。

お祓いをしてくれた神社の由美子はお金をとらなかった。
何かの形でお礼をしたい道也達はお金を出し合ってメロンを買った。

十五時に六人全員で神社に行く。
今回も神主は地方での仕事があり不在だ。
ニコニコ笑いながら由美子は道也達を拝殿に招き入れてくれた。
しばらく拝殿で待っていると常服に着替えた由美子が入ってきた。

由美子は椅子に座っている克彦を見るなりこう言った。

「克彦さん。貴方のオーラは茶色ですよ」

オーラとは、身体から放たれる霊的な光だという。
健康な場合は美しい色だとされている。
由美子は克彦のオーラは茶色だと言った。

道也達は声を上げそうになった。

何故なら克彦は茶色なのだ。
克彦の部屋も茶色なのだ。
決して茶系の服を着ていたり、部屋の中が茶色に塗られているわけでもない。
しかし、克彦の存在は茶色に感じるのだ。
視覚ではなく、感覚で茶色だと感じてしまうのだ。
筆者も彼と面識があるのだが、確かに茶色のイメージを強く感じていた。
オーラが見えない我々も無意識に茶色を感じていたのだ。

「克彦さん。父親方の叔父が亡くなられてますね。……貴方の父親を強く恨んでますね」

克彦はブルブルと震えだすと、ボロポロと涙を流して泣き出した。

「その叔父が貴方に憑いています。このままでは命を持っていかれますよ」

道也は安心した。
由美子なら克彦に憑いている叔父の霊を祓って助けてくれる。
……良かったな克彦。

由美子は下を向いて泣いている克彦の肩を軽く手のひらで三度叩いた。

「克彦さん……。私には除霊できないので自分でなんとかしてください」

由美子は号泣している克彦を連れて拝殿から出て行った。

「除霊は無理と、明るく告げた由美子さんを見てひっくり返そうになったよ」

克彦は由美子から、今後は自分で何をすべきなのかを教えてもらった。
ただそれは家族に纏わる話なので公言できないという。
在学の四年間、克彦からはあの【茶色】のイメージが消えることはなかった。

【来なかった学生】に纏わる話は以上である。
ちなみに筆者のオーラは緑色で、蝉の霊が2千匹ほど憑いていると某霊媒師に告げたられた事がある。
規則正しい生活と清い心を取り戻し綺麗なオーラに成りたいものである。

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