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2017年8月の記事一覧
スケッチ - 赤いボタン
駅と駅の間で止まったままになっているこの古い高架モノレールの窓からは、朝日に輝く緑青の海が見えていた。昨晩の焚き火跡は落書きだらけの車内にまだ焦げ臭く香っており、陽の光は車内に長い影を作っていた。照明は切れていた。単に電球が切れているのか、それとも何かが故障してしまっているのかは、カアスにはわからなかった。彼は赤紫色の薄い綿の座席に腰を深く座り直すと、がたつく窓を開けた。潮風が車内の空気と彼の短
もっとみる駅と駅の間で止まったままになっているこの古い高架モノレールの窓からは、朝日に輝く緑青の海が見えていた。昨晩の焚き火跡は落書きだらけの車内にまだ焦げ臭く香っており、陽の光は車内に長い影を作っていた。照明は切れていた。単に電球が切れているのか、それとも何かが故障してしまっているのかは、カアスにはわからなかった。彼は赤紫色の薄い綿の座席に腰を深く座り直すと、がたつく窓を開けた。潮風が車内の空気と彼の短
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