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#1 Flipper's Guitar 『Doctor Head's World Tower / ヘッド博士の世界塔』(1991.07)

第1回目は、僕が邦楽で1番好きなアルバムであるフリッパーズ・ギターの3rdにしてラストアルバム『ベッド博士の世界塔』です。90年代邦楽の最高傑作のひとつであり、オールタイムで考えても日本のロックの重要作と言っても過言ではないでしょう。このアルバムの最大の特徴はサンプリングです。全9曲にサンプリングが施されています。

○全曲レビュー
M1: Dolphin Song / ドルフィン・ソング
冒頭からThe Beach Boysの「God Only Knows」のサンプリング。曲中では他にもBuffalo Springfieldの「Broken Allow」やStrawberry Switchbradeの「Trees and Flowers」The Beach Boysの「Heros and Villains」などがサンプリングされている。
歌詞は解散を示唆するような退廃的で夏の終わりのような寂しさを感じる。

M2: Groove Tube / グルーヴチューブ
先行シングル曲で後期の代表曲ともいえるポップな曲調且つ攻めた歌詞。"僕の特別なバナナだらしなく甘い色を塗ろう"とか。また、小山田さんのボーカルの声の甘さがこの曲に拍車をかけている気がする。
The Electric Flag「Flash,Bam,Pow」Armondo Travaioli「Sesso Matto」などがサンプリング されている。

M3: Aquamarine / アクアマリン
My Bloody Valentine色が強めの曲。深海のような暗く重いサウンドが印象深い。曲が6分以上なのに対して歌詞は抽象的。夢の世界に引き込まれそう。

M4: Going Zero / ゴーイング・ゼロ
前曲とは打って変わってポップな曲。しかし、歌詞は哲学っぽい。"遠心力で逃げてく先なんてどこにもありゃしないからね"や"だんだん小さくなる世界で僕は無限にゼロを目指そう"とか。
ベースラインはBeatlesの「Taxman」をサンプリングしているのか?

M5: (Spend Bubble Hour In Your) Sleep Machine / スリープ・マシーン
このアルバムの中では最もキャッチーな曲。
"話なんか何も聞いちゃいないのさ あぁ待ち受ける浮き世の摂理"と風刺が効いた感じなのもいいし、サビが心地良い。

M6: Winnie-The-Poo-Mugcup-Collection / ウィニー・ザ・プー・マグカップ・コレクション
イントロからハードなギターが印象的。ただ、"人生って奴はウィニー・プーだけのマグカップ・コレクション"って歌詞はチョットナニイッテルカワカラナイ。途中のスキャットの部分でSly&The Family Stoneの「Dance To The Music」がサンプリングされている。

M7:The Quizmaster / 奈落のクイズマスター
"そしてそっとクイズを出す 悪魔が現れるのを待つ 長い宇宙の瞬間を 僕はイライラ待ち続けてる 雪はそっと僕を包む 僕はだんだん目が醒えてく 広い宇宙の点と線を いつまでもつなぎ続けてる”
という歌詞からフリッパーズ・ギターとは何か。2人がどういった姿勢で今までやってきたのかを表現した曲だとわかる。答えを提示するのではなく、クイズを出してきた。本当の事が知りたくて(M1参照)

M8: Blue Shinin' Quick Star / 星の彼方へ
疾走感溢れる爽やかな曲調だが、歌詞は解散に向けた決意のようなものが感じ取れる。アルバムの最後のような曲だが、これで終わらないのが名盤"ヘッド博士の世界塔"だ。

M9: The World Tower / 世界塔よ永遠に
このアルバム且つパーフリ最後の曲。"永遠望むほど闇は更に深く 動けば沈むよまるでアリ地獄"や"僕は穏やかに死んでゆく いつも少しずつ死んでゆく ひどく穏やかに死んでゆく 僕はやわらかく死んでゆく 言葉などもう無いだろう"というシニカルな歌詞が展開されていくなか最終的には"aha-ha-ha"て………
そして拾いきれないレベルのサンプリングが施されているアルバム史上最もカオス曲。10分越えだが展開の多さで飽きが来ないのが魅力である。

尚、このアルバムはサンプリングの権利上の問題などで唯一リマスター版やサブスク配信がありません。しかしそれも含めて究極の名盤といえるでしょう。日本の音楽は海外のトレンドから遅れているが、このアルバムでは当時最先端だった海外のトレンドをタイムリーに取り入れていました。
パーフリは最初は1st,2ndの方が好きでしたが、何十回と繰り返し聴いているうちに、魅力に気づき、今ではパーフリどころか邦楽で1番好きなアルバムになりました。やはり何回も繰り返し聴くのが大事ですね。

#フリッパーズギター #パーフリ #音楽レビュー
#音楽 #渋谷系

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