変な人 (27)池袋、ど真ん中に寝る男
ど真ん中すぎる!
いくらなんでも、真ん中すぎる! と思った。
IWGP。池袋ウェストゲートパーク。
今はステージのようなものまで作られて、すっかりきれいになってしまったけど、その昔はコンクリートの広場があって、それを広く囲むように丸く銀色の太いパイプでできたベンチ風のものが設置されていただけの場所だった。
当時は暇そうな人がぼんやり過ごす一方で、結構あぶないヤカラが集まったり、そのあぶないヤカラがあぶない取引をしていたりと、結構スリリングな場所でもあった。
池袋の西口改札を出て飲み屋街に向かうときなど、当たり前のようにこの場所を横切ることになる。
その日も私は西口の丸井の裏にある飲み屋街に出かけるため、公園の真ん中を横切ろうとしていた。
公園には数十人の若い男たち、そしてその何分の一かの女性が、銀色の輪の中央の方をぼんやり見ている。
そこに何があるわけではなく、オブジェの輪に寄りかかっていれば、必然的に真ん中を見つめることになる。
私は広場の中央から少しずれた位置にある噴水を横目に、広場の中心に向かっていた。そして気づいた。
人が寝てる!
そこに人が寝ているのだ。実に気持ちよさそうに。
まあ、公園に人が寝ていること自体は決して珍しいことではない。
しかし、その男が寝ている場所が意外だった。
ちょうど円形になった広場のど真ん中。
男はまったく無防備に、脚を大きく広げ、腕も力なく成り行きで広げている。
行き倒れといった様子ではない。
まるで自分の部屋で寝ているかのように、完全に緩みきっている。
「こんなところで寝ていて、危なくはないのだろうか」
まず浮かんだのは、こんな心配だった。
超危険地帯とは言わないまでも、ここは結構アンダーグランドなヤカラが集まっている場所である。
そのど真ん中。
なにもこんな危ないところで……。
いや、あるいは、これほど安全な場所はないとも言える。
何十人の衆人監視のなかである。
何かをやろうとするやつもいないかもしれない。
ま、お金もなさそうだし……。
しかし、見上げた男である。
普通なら、何もない四畳半の部屋に布団を敷けと言われても、つい壁際に敷いてしまう。
私などまさにそれだ。ど真ん中に布団など敷けない。
それが体育館のような広さだったら、なおのこと。もう見ているだけで、我が不安感までも募り、お尻のあたりがむずむずしてくる。
それにしても気持ちよさそうだ。でも、いつまで寝ているのだろう。
起きたら、どうするのだろう。
誰かとの待ち合わせだったら凄いけど。
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