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私家版 ロックかるた 「む」

どうしても欲しくて、でも売っていない。だから、自分で作ってしまった「私家版 ロックかるた ブリティッシュ・ロック編」。
世界にたった1セット。

無理しない、練習しない、
リンゴのドラムは真似できない。

『ヘイ・ジュード』のレコーディングのときの逸話です。
リハーサル中にリンゴがトイレに立ちました。
メンバーは気づかず、レコーディング開始。
帰って来たリンゴ、いきなり完璧なタイミングでインします。
これはいい。これ、採用です。ポール、納得。出色の出来でした。

遅れたら遅れたで、いいタイミングですっと入っていける。
軽ーいタッチで、ごく自然に。無理しません。

リンゴは練習嫌いなようで、「5分もすると飽きる」と言っています。
スコア譜でリンゴのパートを見ても、難しいところはありません。
また、リンゴはその時々の自分のフィーリングで叩くので、無理して難しいことをひねり出すこともない。
だから、練習は嫌い、する必要もない。だいたい、叩くたびに毎回違うんだから。

だけど、だけどなのですが、多くのドラマーが口をそろえます。
あのリンゴの独特のニュアンスを再現することは並大抵でない。できない、と。

なんだか、違うのです。
聞けばすぐに、あ、リンゴのドラムだって、わかっちゃうのです。
左利きで右利き用セットのドラムを叩いているってだけじゃない、微妙な違い。

なんか、タイミングが、ずれてるんじゃない?
ソロやらないし。タムが1個しかないセットなんて。
やっぱり、下手クソなんじゃない?
そんな誤解を持たれていたこともありました。

似たようなドラマーに、チャーリー・ワッツがいます。
彼も、特に難しいことをするわけではありません。
たしかにちょっとした手癖はありますが。
しかし、なんだか真似できない。なんだか独特。その味わい。そのニュアンス。
キース・リチャーズが、「チャーリーでなければストーンズではない」と語ったことがありますが、まさにリンゴもそれです。

『レイン』『ストロベリーフィールズフォーエバー』あたりのドラミングは神がかっています。
こんな感じに叩いてみてね、という作曲者の意図を完全に理解し、まさに「外さない」選択でリズムを刻む、グルーブを生み出す。
何も足さない、何も引かない。『レイン』のベースとドラムの絡みは本当に傑作です。
昔々、TVを見ていたら加藤和彦さんがビートルズで一番好きな曲は何?と聞かれて「レイン」と答えていました。「わー、やっぱ加藤和彦はわかっているぞ」と変に納得したことを覚えています。

(つづく)



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