見出し画像

諦めの悪い男

一昨年。47歳の春にバスケットボールを始めた。

子供のころから球技は苦手だった。
小学1年生ではじめてドッチボールをやったときから逃げる専門だった。
まわりの子がみんな野球をやっていたので、野球のチームにはいったけれども、だんとつ下手で、すぐやめた。
中学生になって苦手な球技を克服しようと思い、テニス部に入部したけれども、だんとつ下手で、水泳部に転部した。
高校も水泳部。
大学はヨット部。
それからずっとサーフィン。

新しい挑戦に飢えていたし
バスケットボールをやらせてもらえる機会がもらえて
体を使い方を考えて実践するという経験をしてきたので
いまなら少しできるかもと思って始めてすぐに
ふくらはぎを肉離れした。
肉離れが治ったと思ったらすぐに
逆の足のふくらはぎを肉離れした。

バスケットボールは歳を取ってからやるスポーツではないようだった。
未知の負荷に肉体も経験も若さも不足していた。

僕はいつしか通勤途中にあるグラウンドのゴールで毎日ひとりでバスケをするようになった。
練習、という感じじゃなくて
ただ楽しくて
いつもボールを持ち歩くようになって
それまでサンダルで出勤していたのがスニーカーになって
土のグラウンドはでこぼこしていて
乾燥しすぎると滑りやすかったり
雨の後は水たまりができたり
風が強いとボールが煽られたり
だから週1回の体育館の練習は特別楽しみで。
床は平らだし、何よりゲームができた。

今の時代は動画が豊富にあって
効率的な体の使い方やプレーのしかた、練習方法を
インプットができる。
すべての動きと練習方法について理論的に理解して実行可能なステップに分解して実践してみる、ということを繰り返す。
子供時代と違って
今の僕は少しづつ地道に進んでいくことの偉大さを知っている。
毎日のようにボールをついて
いままで知らなかった体の使い方も少しづつ理解するようになって
本当にゆっくりだけれども、できることが増えていった。

でもその歩みは本当にゆっくりすぎて
同時期にバスケットボールを始めた子供は
当然、遥か先に行ってしまったし
いつまでたってもレイアップシュートを外してしまうし
ボールをうまくキャッチできず突き指もしつづけた。
右手の小指を脱臼したときは左手だけで練習した。

そのうち僕は試合をしたいと思うようになった。
チームの中で一番初心者の僕がメンバーを集めて
ちいさな大会に申し込みをした。

スラムダンクの映画を見て
新しいバッシュとタイツとサポーターを買って
皿洗いしながらバスケの動画を見て
体育館に練習に行って
ヨガやって
サーフィンやって
思いつくことをなんでもやって迎えた念願の初試合。

5チームの総当り。
我々以外のチームは若く全員経験者。
でもそんなことはどうでもいい。
1ゲーム目、ほとんど何もできなかったけれども、生まれて初めての試合が嬉しくて、もう少しなにかができそうな気もして。
小指もすっかり治って気にならない。
迎えた2ゲーム目の途中。
右のふくらはぎにパチンという感触があった。
相手プレイヤーと接触したと思って振り返っても誰もいない。
あ。
やった。
と思った。
そのまま交代。
また肉離れ・・
まったく歯がたたなかったとしても、完全燃焼はしたかった。

人生ずっと球技ができたことがないのに
それでも試合にでたくて
毎日バスケして
怪我しまくって(自分が悪い)
やっと出れたのに残念すぎる。

日に焼けたプラスチックのように
筋肉が固く壊れやすくなっているのだと思う。

普通に考えたら無謀。
普通に考えたら無理。
と思えば思うほど
挑みたくなる。
まだ諦めない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?