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海外ドラマ「リトル・ドリット」ディケンズ原作、人間の強欲さと格差社会を描き出す

原題 Little Dorrit
製作 BBC
製作年 2008
キャスト クレア・フォイ、マシュー・マクファディン、トム・コートネイ他
評価(10段階): ★★★★★★★☆☆☆

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あらすじ
父が最期に遺した言葉の意味を知るため、中国から帰国したアーサー。母のもとで働くリトル・ドリットと呼ばれる女性に出会う。

この物語の全てを象徴する場所がマーシャルシー(Marshalsea)。
実際にロンドンにあった刑務所で、通常の犯罪者や騒乱罪による収監者も収容していたが、債務不履行となった人々の収監先として名高い。18世紀にはイングランドの収監された人の半数以上が借金が理由だったという。

ドラマには入っていないが、原作では次のような描写があり、30年前という形で物語が語られる。

Thirty years ago there stood... the Marshalsea Prison. It had
stood there many years before, and it remained there some years afterwards; but it is gone now, and the world is none the worse without it. 

(参考:『リトル・ドリット』-「終わり」と監獄をめぐって-藤井昌弘、1997)

マーシャルシーが閉鎖されたのが1843年。
ドラマではエイミーらドリット一族、そしてロンドンという街にとってマーシャルシーがどれだけの意味を持ったのか映像から伝わる。

登場人物がかなり多いが、分かりやすく描かれている。
そのほとんどが強欲(greedy)で、観ていて正直少し疲れる。
アーサーとエイミーだけが、この物語の中で真っ直ぐ、そして正直に生きているのではないだろうか。加えておけば、借金取り立てを行っているパンクスや刑務所で働くチヴァリー親子も善い人たち。
父は20年もいる刑務所の中においても自らの尊厳を保とうと必死。その必死さ故にエイミーや助けてくれたアーサーに辛く当たったりもする。

ディケンズが創作した迂遠省(Circumulation Office)。
謎のバーナクル一家がほとんどその職を占めている。ここにも当時の社会への批判が込められている。

この物語の中で異色を放つのがフランス人、リゴー。
キャラクターも勿論だが、目があっただけで震えがくるようなその恐ろしさといったらない。
演じているのはアンディ・サーキス。モーションアクターで出演作はロード・オブ・ザ・リング、ゴジラ、猿の惑星、キング・コングなど。

暗さの先に明るさがある印象だった荒涼館。
このドラマも荒涼館と同様、最後は幸せなシーンで終わる。結末の部分は同じでも、こちらは明るさを感じない。
ディケンズは物語の中に希望を見いだせないほどに、社会の行く末を暗澹たる気持ちで見ていたのかもしれない。


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