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読書メモ

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読書記録のまとめ。
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#楡家の人びと

読書記録「楡家の人びと 第三部」北杜夫著

新潮文庫 2011 第三部で描かれるのは長い長い戦争。 (以下ネタバレ含む。) 俊一の同級生、城木は戦地を転々とする。彼が行くことになるラバウルは水木しげるがいたところだ。 こんなものかと思ったら、それをどんどん超える現実がやってくる。 とうとう楡家の末っ子、米国も彼に付き従っていた熊五郎も戦地へと向かう。 戦争で最も大きく変わったといえるのは藍子かもしれない。 城木と一緒になると心に決めていた藍子。戦況の悪化とともに城木が心配でひとり精神的にも肉体的にもまいってゆく

読書記録「楡家の人びと 第二部」北杜夫著

新潮文庫 2011 時は過ぎ、話の中心は楡基一郎とその子どもたちから孫たちへと移っていく第二部。 時代は昭和。戦争へと向かっていく時代なのだが、子どもたちにはまだその実感がなく、最後の楽しい時代、といったふう。彼らの面倒を見てくれていた書生の佐原定一は真っ先に戦争へ向かいそして死んでしまうのだが、子どもたちはまだそれを知らない。 病院のほうはというと、基一郎の案で松原に新たに建設した病院は規模も大きくなっていく一方で、院長の徹吉の残る青山の病院は赤字続き。院代の勝俣は基一郎

読書記録「楡家の人びと 第一部」北杜夫著

新潮文庫 2011 北杜夫が自身の家族をモデルに描いた作品。 第一部は1962年にかけて連載された。 (以下ネタバレ含む。) 時代は大正、舞台は精神病院。院長である楡基一郎と彼の家族、病院で働く従業員や患者たちの変わらない日々の日常の様子が描かれる。 楡基一郎というのが実に不思議な人物。 この変わった名前は本名ではない。本名は金沢甚作。どういう手を使ったのか、名前すらもまるごと変えてしまうような大胆な人物。 医者としてはドイツで博士号をとり、患者も絶えない。何が起きて