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秘匿

自分のことを安売りするのは良くないのかもしれない。

自分を解剖するのは楽しいことだ。何故かわからなかったことも、思い返せば過去にあったことと因果の繋がりが見えてきたりする。どこでどう価値観が形成されたのかを知るのは、自分を知る上で大切なことだ。だから、やろうと思えば、自分の特性を人に示すときのツールに出来る(こういうことがあったから、こんなトラウマがあるんだよ俺。とか。それを伝えることで理解を得て、生活する上でワンチャン周りからの補助も得られたりする。一見ややこしい人も、「仕方ないか」となる可能性があるのがそういうところだ)。まぁ、想像力のある人なら、そんなこと伝えなくても、表面だけ見て一喜一憂しないのだろうけど、それはさておき、だ。

だからと言って、自分の、特に苦しかった部分を人に安売りしてしまうのは、危ないというのもあるけど、なんか違うな、と最近思う。注意しておくが、ここで取り上げているのは不特定多数へ向けた匿名での開示では無く、「こいつにこんな過去があったんか」と、情報とその人を一致させられる人へ向けての開示に限る。友達とか、知り合いとかへの話。

話を戻す。もちろん、他人にとって厄介な価値観や行動原理は、楽しい思い出より苦しいトラウマに基づいていることが多いだろう。例を言えば、セクハラされたので男の人が怖い、目を見れない、うまく喋れない。とかいうもの。そんなこと他人は知らないので、もしかすると、「あの人感じ悪い」とどんどん評価が下がったりしてしまうかもしれない……。それを気にしない本人なら良いかもしれないが、まぁ自分が悪くないことで評価が下がるのは可哀想だと思うのだ。直接の損害が無くとも。

かと言って、じゃあ克服できるのかというと、そういう問題ではない。大抵、「なりたい自分」と「そうさせてくれないトラウマ」のギャップに苦しむばかりだ。無理をする必要はない。自分の内側に挟むものの責任は自分にしかない、と思う。表層に、それが攻撃性を持って現れると、話は変わるけど。

トラウマを話してしまえば、自分の特性について何人かの理解は得られるだろう。けどそれを易々とすべきでない、と私が思うのは何故だろう……。

人に甘えてしまうから、とかではない。相手が許してくれるなら、思う存分甘えて良いとは思う。自分を律したければ思う存分克己すれば良い、その選択権は本人にある。他人が本人の苦しみも知らずに「甘えるな」と言うのは、横暴だ。私が恐れているのは、自分で向き合うプロセスをすっ飛ばしてしまう恐れがあることだろう。

きっと因果がわかるだけではダメなのだ。苦しかった自分も、今生きづらい自分も、自分で生きてきた道の上だけにあるものだ。例えが下手だけど、ご飯を作りはしたけど食べてないみたいな感覚(多分全然違う)。人に食べさせて、自分は味がわからないけど、人が美味しいって言ってるからいいや、みたいな……。まぁこの例えをしてしまうと自分で味を確かめる必然性が抜けてるから例えとして成り立ってないけど……。

要するに、その苦しみとの因果に意味づけをするのが、他人が先になってしまうということだ。他人本意、というか。自分で深く向き合う前に、相手がそれを聞いて可哀想だと言ってくれたら、そこで終わりなのだ。可哀想だったんだ私、で終わってしまう。自分のことについて苦しみもがくのは、使命だと私は思っている。義務ではないけれど、きっとそれを自分で咀嚼して消化(できなくとも)しようとすることに、何かしらの価値がある。と信じている。そこから何が生まれるかというと、自分への優しさだったり、似たような境遇の人への配慮だったり、視野の広さだったり。まぁそんなにプラス?に都合よく働く保証はこれっぽちもないけど、教室の真ん中にいるより、教室の隅にいた方が教室全体が見渡せる、みたいな感じだ。カケラでも向上心のある人ならば、まずは自分で向き合ってみるんじゃないかな。

もちろん自分にとっても良いことがある。さっきも言ったけど、自分で自分を大切にしよう=生きやすさの模索ができるのではないだろうか。特性を見捨てずに、その特性と共に生きる方法。これはきっと、生き方は十人十色なので、自分で見つけるしかない。誰かの言葉が道標になることはあれど、確立は自分でしかできない。

他には、センシティブな部分だから、刺し返されて傷つく恐れもある。やっぱり慎重に行くべきだ。

聞いてもらって安心するという人もいるだろうから、行為自体は否定しないけど、「自分とその情報が結びつく人」に話すならば、尚更信用できる人に話したいと思う。不特定多数へ向けて匿名で行うのは意味合いが変わるから、ここではそもそも取り上げていない。「この人にこんなことがあったんだ」とわかってしまう相手へ話すならば、選んだ方が良いんじゃねーかという話!

あんま言いたくないけど、相手の負担にもなるしね。

おわり。

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