「あかはな~ず」からみる市民クラウンのお話

このnoteの趣旨

私は大道芸ワールドカップ実行委員会のクラウン担当実行委員として活動していた時期があります。
同時に、一市民クラウンでもあります。
そんな私がコロナ前に試みた「あかはな~ず」というアイデアが生まれるに至る話をしつつ、市民クラウンの可能性に関して書き留めておこうと思います。
基本的には備忘録ですが、市民クラウンにとって興味深い話になるかと思います。
※「あかはな~ず」にはバージョン1とバージョン2があります。ここではバージョン2を指します。

「あかはな~ず」とは?

「あかはな~ず」とは、大道芸ワールドカップと市民クラウンが持っていた課題を解決する一つの方法として発案し、賛同者であるタランとラパンと共に企画と実行を行っていた試みです。

もう少し具体化すると、チームグリーティングの可能性と必要性を市民クラウンに提示し浸透させる活動です。

「あかはな~ず」を具現化してくれたのはタランとラパンですので、中身に関してはここでは省きます。

課題

まずは、当時に私が感じていたイベントと市民クラウンの課題を記します。

イベントの課題

とっても大げさに言えば、
このイベントは、人間が発するエネルギーの無限さと、そこから自分自身の可能性を感じ取れる特別な空間です。
よくある大道芸イベントではなく、パフォーミングアーツを市民に提供するイベントとしての矜持と情熱が根底にありました。
この方向性を掲げていた人々はノーギャラ問題をきっかけに歪みのみ残していなくなってしまいましたが…

さて、コロナが始まるまでは、会場のキャパシティを大きく超える来場者数があり、「パフォーマンスが見れない」「イベントを楽しめない」というお客様も少なくありませんでした。

劇場とか美術館とか、そういう場所よりもっと気軽にわかりやすくアートに触れられる機会があるはずなのに、多くの方に届かない状況に陥っていました。
イベントの根幹に触れてきた人間としては、これは由々しき事態であり、必ずクリアしなければならない課題でした。

市民クラウンの課題

市民クラウンは基本的に、3人1チームで動きはします。基本的に一人で行動することを認めていません。これは「困った時に助け合える状況を作れる」ためだと考えていました。

しかしながら、グリーティングは基本的に一人です。他の二人と組んで活動するという発想がありません。
これは相当にハードです。遊びの幅も出来ることも個人の力量によります。
(プラスして、活動の中にはスポンサーや取材の対応、他部門のお手伝いも含まれます。グリーティングだけを行えばいいわけでもありません。)

つまり、市民クラウンにかかる負担が大きすぎるのです。

せっかくチームで動いているのに個人の負担は減らず、むしろ先輩クラウンの負担は増える一方です。
この状況は、2年目以降も参加してもらうハードルに感じていました。
お芝居とは違って、クラウンは一つのキャラクターを続けていく事ができますし、そこに楽しさがあると私は考えています。

市民クラウンを続けやすい環境にするためには、なにかしら活動の根本を変えるきっかけが必要でした。

市民クラウンの成長段階

これらの課題から「あかはな~ず」というアイデアに繋がるのですが、その前に「あかはな~ず」の根幹である市民クラウンに関して、成長という観点の考察を記します。

市民クラウンの成長やグリーティングの幅は段階や次元として表すことができます。(ちょっと抽象的かもしれません)

1段階/1次元

自己表現の始まり
メイクや衣装、クラウン名を通じて自分とコミュニケーションが取れる(気がしている)
エナジーを持つ事ができる
(どこまで行っても最終的にはここに戻る)

2段階/2次元

クラウンとしての一歩目
眼の前のお客さんとコミュニケーションが取れる
持ったエナジーを手渡せる

3段階/3次元

2階や3階にいる、10m離れた所にいる、自分の後ろにいる、こういうお客さんとコミュニケーションが取れる
エナジーを狙った場所に投げられる

4段階/4次元

2階や3階にいる人と、10m離れた所にいる人と、自分の後ろにいる人とに、一度にコミュニケーションが取れる
エナジーを拡散できる(拡散できるほどのエナジーを生み出せる)

1段階目は市民クラウンとしての参加条件です。カレッジを出てデビューできれば2段階までは進めます。それだけ1年目は手厚くサポートしています。
3段階目に行けると、市民クラウンとしての幅が出ますが、苦しみも生まれます。それが楽しいのですが。
4段階はプロを意識している方です。練習も場数も(あるいはセンスも)必要なレベルです。

カレッジは1~2段階目の基礎を作り上げるものです。以前に行っていたワークショップ(ステップアップ)は、1段階目の底上げをして2段階目の成長を促すものでした。「自信を持つと他人の信頼も得る」というイメージです。

「あかはな~ず」というアイデア

前記の通り、このイベントには日に何十万人に来場します。まぁ主催者発表なので正確性はありませんが、目の前に数百人いる場面は珍しくありません。

もし多くの市民クラウンが4段階までレベルアップしていれば、かなりの方にリーチできます。例え話ですが、1組が10分で100人にグリーティングできれば、1日(5時間)で3000人です。20組(60人)いれば、1日に6万人にグリーティングできる計算です。(あくまで計算上です)
市民クラウンはプロではありませんが、市民が自己表現を行いエナジーを伝えられれば、それはアートの一環だと考えます。
1日で6万人にエナジーを伝えられるイベントはそうありません。

しかし、ボランティアである市民クラウンに課題を課すことが必ずしも正解ではありません。楽しく活動したい方を尊重できないプレッシャーは厳禁です。
実行委員もプロではないので何か教える立場にはありませんでした。成長を促すことはちょっと現実的ではありません。

ではどうするか?
…という問いに対して浮かんできたのが「あかはな~ず」でした。

一人では難しいのであれば、チームで取り組めばいいのです。
1人のエナジーは少なくとも、クラウンが3人力を出し合えば、拡散できるくらいのエナジーを生み出せるはずです。
チームクラウニングが意識できれば、一人の負担は小さく、かつ、大きな成果を生み出せる。多くのお客様に笑顔になってもらえる。何かを持って帰ってもらえると直感しました。
ちょっと飛躍しているように感じるかもしれませんが、自分の中に天啓のように思考が繋がりました。

また、初代の「あかはな~ず」も6人1チームだったので、そのバージョンアップとして捉えていました。なので、プロジェクト名が「あかはな~ず」なのです。

チームクラウニングが課題を解決に導くターニングポイントになると信じていましたし、今でも信じています。

そこから

フラッシュアイデアでしたので、気軽にタランに話をしてみたら、あれよあれよと具体化してきました。

当時の自分の立場も利用し、少し強引でしたがアイデア出しから1年で実現させます。
そこから、ラパンに協力を仰ぎ少しづつ浸透させていこうとしましたが、新しい事をする余力もない組織だった事もあり、障害が多く今現在は頓挫しています。
実際にあかはな~ずに協力してもらった市民クラウンには実効性を感じてもらえましたので、とてももったいないことをしました。

最後に

自分は実行委員をやめてしまったので、チームクラウニングという発想を市民クラウンに伝えるすべがありません。

冒頭に「備忘録である」と書きましたが、望むなら、このnoteを市民クラウンの皆さんに読んでもらい、チームクラウニングの可能性を感じてもらえたら幸甚です。

今は今の実行委員会の考えもあるかと思いますが、
その中でも「あかはな~ず」やチームクラウニングに興味ある方は、タランやラパンに相談してみてください。
私でも構いませんが、現場のレベルは彼らのほうがよっぽど高いので。

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