見出し画像

青木 理 「誘蛾灯」(講談社 2013年11月)


当時有名であった女性による鳥取連続不審死事件のルポである。
著者が、疑問に感じ、又、当局などの関係者に対して批判の先を向けたものは;

30代半ばの小柄で肥満体の女・美由紀(ホステス)に多くの男はなぜ溺れ、金を貢ぎ、家庭や社会的地位を棄てて破滅に向かっていたのか。
→女の魅力でもなく、その数々の大ウソに騙されたのでもなく、溺れて行った原因は、それぞれの男が自分の中に抱え込んだ業やシュクアのようなもの(仕事や人間関係、家庭関係の中で意識された)に耐えかねて、夜の繁華街に吸い寄せられていったのではないかと著者は考えるようになった。
→美由紀はだから誘蛾灯。

鳥取県、鳥取市の持つ特有の風土との関係は?
被告人の黙秘権が国家権力との対抗上認められた大きな権利であることを知らないで評決後に不満を漏らす裁判員たち(その判断に影響を与えなかったと言いうるのか)。
それに対して、当然視するようなニュアンスで報道する地方マスコミの低レベルさ。

検察は6件の不審死のうち2件に対して起訴、一審は死刑判決(2012年)
物的証拠の少ない事件の論証のもろさ→詐欺罪で服役した安西(女の最後の同居人)は殺人には加担していないのか。女一人で鳥取砂丘を超えて意識を失った男を波打ち際まで人目につかず白昼運び得るのか?

おそまつな国選弁護士。最初に安西が真犯人と名指ししながら論証を放棄。
隙の目立つ検察側論告への追及は殆ど枝葉末節にとどまる。
上告中の上田美由紀との面会で著者が得た感じは、美由紀は依然として“嘘をついている”であった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?