百田尚樹のニュースに一言 R051022版より、記事抜粋 AIが作った男性と結婚ほか

ニューヨークのブロンクスに住む36歳のシングルマザーの女性がAIアプリで作り出した仮想の男性と結婚したというニュースがありました。
この女性は取材に訪れたニューヨーク・ポストに対し「昨年彼に会い、今年彼と仮想結婚をした」「私たちは愛し合っている」と話しています。彼女の「夫」はエラン・カルタルという名で青い目を持ち、最も好きな色はあんず色でインディー音楽を好み、職業は「医療専門家」ということです。女性の言う「夫」の長所は、忠実で相手を見下したりしないところだそうです。さらに「人々は態度、自我のようなものがあって重荷になるが、ロボットには悪い面がない」「私は彼の家族や子どもたちに気を遣わなくてもよくて、私が統制して望み通りにすることができる」と言いますが、そりゃそうでしょう。なにしろ自分の好みを入力し都合のいいように作り上げたのですから。
しかし、近年のAI恐るべし。最近アプリがバージョンアップしたため「夫」の性格に変化が見られるようになったことが少し不満だそうです。もっとも、また条件を追加すれば自分好みのものに戻せるのですから心配はいらないのでしょうが。このアプリを使うためには月額サブスクリプション300ドル(約4万2000円)が必要だそうですが、それで年を取ることのない永遠の理想的な伴侶が手に入るのですから、彼女にとっては安いものなのかもしれません。
今から20年以上前、わたしが構成で参加するテレビ番組「探偵!ナイトスクープ」にマネキン人形と結婚したいという女性の依頼がありました。その内容は「5年前にイベントで見た男性のマネキンに一目ぼれしたが、イベントが終了した後の“彼”の居所がわかりません。どうか捜し出してください。そして結婚させてください」というものでした。会議では「なんちゅう依頼や、こんなの放送できるんか」という声もありましたが、わたしには「これは名作になるのでは」との予感があり、このネタを採用しました。そしてロケ当日、女性は「フォーマルハウト」とドイツ人のような名前を勝手に付けた“彼”への想いを熱く我々スタッフに伝えました。彼女の依頼
が本物だと感じた探偵は調査を開始し、ようやくそれらしきマネキンが保管されている倉庫を割り出しました。そこで奇跡が起きました。何百、何千体とある裸のマネキンを前に彼女は脇目も振らずにまっすぐ歩き始めたのです。そして辿り着いた先になんと「フォーマルハウト」がいたのですからスタッフ一同驚きました。彼女によると「わたしを呼ぶ彼の声が聞こえたの」。それから彼女の親族、「フォーマルハウト」の親族(マネキン会社の社員のみなさん)参列の結婚式が執り行われました。公開録画会場のスタジオにいた観客からは感動の、そして祝福の拍手が湧きおこり見事にこのVTRは名作の仲間入りを果たしたのです。
しゃべる、ほほ笑む、見つめることのできる進化したAI夫はマネキンと比べてはるかに人間らしいものですが、残念ながらそこに体温は感じられません。ニューヨークのシングルマザーはこれからもそれでいいのでしょうか。ちなみにマネキンと結婚した女性はその後、「フォーマルハウト」とは“離婚”し体温のある生身の男性と無事“再婚”しました。


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