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卓球は謝るスポーツ

卓球では、
「ネットインをした時は謝る」
という文化があります。

これはルールではなく文化であり、マナーです。

ネットインというのは、
打球がネットに当たって相手コートに入ることです。
これはミスではなく、正式な返球としてみなされます。
(サーブの時だけはノーカウントでやり直しになります)

謝る、というのはあくまでも文化でありマナーなので、
例えばネットインで返球し、相手がそれによりミスをした時に、

「ラッキー!」

って口走ったとしても、
それ自体がルール上ダメ、というわけではありません。
(度が過ぎれば、ネットインと関係なくバッドマナーとしてイエローカードが出ることはあります)

謝る、と言っても、いろんな謝り方があります。

日本人同士だと、
「すみません」
というのが一般的です。

海外の試合だと言葉で謝るのではなく、
仕草で謝ることが多くなります。

その仕草とは、
「人差し指を立てる」
です。

なぜ、人差し指を立てると謝ったことになるのかはわかりません。
が、みなさんそうやって、謝っています。

さて、
なぜこんな話をしているのかというと、
この間面白いことがあったからです。

それは僕が、月曜日の昼間に卓球の試合に出た時のことです。

僕は、わりと自由な働き方をしているので、
平日に試合に出ることもあります。

ただ、
平日で昼間だと、やはりご年配の方が多いです。
同年代の人はどちらかというと少ない。

その時の試合は、
時期的なこともあってか、20代の参加者も結構たくさんいました。

自分の試合の待機中は、
他の方の試合を見るでもなく見ていることになるわけですが。

あるご年配の方と、20代の方が試合をしていました。

1ゲーム目、2ゲーム目と終わり、3ゲーム目が始まる時。

そのコートが、もめているというほどまではいかないけど、
ご年配の方が何かを言っている、ことに気づきました。

何を言っているのかと思ったら、

「君はネットインをした時に、一度も謝らないね」

ということでした。

まあ、ルール違反ではないし、実際謝らない選手もいます。

だからそれに関しては、どっちでもいいんじゃない?
と僕は思っていたのですが、
面白かったのはそこからです。

「君はネットインをした時に、一度も謝らないね」
「僕は、ネットインをしたら必ず謝るよ」

と。

そして、

「じゃあ、はじめよっか!」

と。

お???

これは面白いな、と思ったんです。

その話を聞きながら、
相手の20代の選手は、
「はぁ」
みたいな感じだったのですが。

僕が、何を面白いと思ったのかというと、
そのご年配の方が、
「ネットインしたら謝れよ」
とは言わなかった点です。

これは人によっては、
「いや、それは謝れって言ってるのと同じじゃない?」
と感じるかもしれませんが、
僕はそうは感じなかったんです。

年の功、と言ったら失礼かもしれませんが。

「君のふるまいはこう感じる」
「自分はこうしている」

それだけを伝えるにとどめているんですよね。

そもそもネットインをしたら謝る、というのは、
ルールではありません。

が、そういう文化があり、それがマナーとされているからには、
それなりの理由があります。

この場合は、
「お互いが気持ちよくプレーができるため」
だと僕は考えます。

ネットインをすると、
どうしてもボールが予期せぬ動きをしてしまい、
タイミングがずれてしまいます。

それは、
ネットインをした側、された側の、
どちらにとってもなんです。

つまり、
ネットインをした側にとっても、
それは予期せぬ出来事であり、
狙ってやっていることではないんです。

自分が狙ったプレーが功を奏し、
相手のミスを誘ったのなら、
それは自分のファインプレー。

でも、
ネットインの場合は、お互いにとってのアクシデントなんです。

そして、
多くの場合、そのアクシデントを起こした側の得点になってしまいます。

だから、謝るんです。

不測の事態を引き起こし、かつ、あなたの失点となってしまい申し訳がない、と(笑)

いや、
こう書くといかにもおおごとっぽくて、そんな謝るほどか?とも思うのですが、
意図としてはそういうことです。

卓球は11点の得点を取るまでの真剣勝負です。

そして、
この11点というのが非常にあっという間のスポーツです。

どんな得点、どんな失点も、
11点の中の1点です。

だから、ネットインの影響はやはり大きいんです。

僕なんかは未熟ですから、
自分が負けた時に、
11点中3点が相手のネットインだったら、
「あのネットインがなかったらなー」
なんて、やっぱり考えてしまいます。
他で8点取られているにも関わらずです(笑)

つまり、
ネットインというアクシデントが、
卓球の試合全体に与える心理的影響は
思いの外大きいということです。

だから、
やっぱりそういうマナー、文化ができたんですよね。

きっと、
そのご年配の選手は、
まだ若い20代の選手に、
気づいてほしかったんだと思います。

自分はもう長いこと卓球をやってきた。

きっと、
ネットインを謝らない時代から
卓球を続けてきたのだと思います。
(過去にはそういうマナー、文化がなかった頃もあったようです)

だからこそ、
マナーの重要性を深く認識しているのだと思います。

そして、
紳士のスポーツとして、
マナーを重要視することが、
その競技を長く楽しみ続けるためにも
大事なんだということを知っているのではないか、と思います。

だけど、
押し付けるべきことでもない。

ルールじゃないんだから、
「ネットインしたんだから謝れよ」
というのもおかしい。

だから、
「君はネットインをした時に、一度も謝らないね」
「僕は、ネットインをしたら必ず謝るよ」
という伝え方をしたのかな、
と思いました。

真意のほどはわかりません。
確認もしていませんし。

ただ、僕はそう感じた、というお話です。

また、
町場の試合ということもあり、
ゲーム間の選手同士の会話もわりとありふれていた会場でした。

通常、本当に硬い試合だと、
そういう会話というのもあまりありません。
お互い真剣勝負ですから。
変に話しかけること自体が、またマナー違反になる、という場合もあります。

そういう前提で、
そういう会話があったんだということを、
ご承知おきいただけたらと思います。

僕は自分が選手として卓球ぐらいしかやらないので、
他のスポーツのことはあまり知りませんが、
テニスやバドミントンも、
ネットインの時は謝るようです。

さらに言うと、
卓球はエッジボールの時も謝ります。

エッジボールというのは、台の角にボールが入ってしまい、
ボールの軌道が変わってしまった時のことを指します。

これも、
ネットインと同じように謝ります。

また、
ラケットの角や指に当たってボールが入ってしまった場合にも
謝る選手が多いです。

卓球はルール上、
ラケットを持っている方の手の手首から先にボールが当たった場合は、
正規の返球と見なされます。

なので、ラケットの角でも、グリップでも、指でも、
当たって相手のコートに入ればそれは返球です。

ですが、
そういうボールは本当に予測不能な回転と軌道で飛んできます。
だから、やっぱり謝る選手が多いですね。

こうして見ると、
卓球ほど、「試合中に相手に謝るスポーツ」って、
他にあんまりないんじゃないか、と思います。

もしご興味があれば、
週末になればどこかの体育館で必ず卓球の試合があると思いますので、
一度見に行ってみてください。

「すいません!」
「ごめんなさい!」
「申し訳ない!」

こういった声が飛び交ってます(笑)

卓球って、それくらい繊細なスポーツなんです。

僕も選手として、
よりマナーには気をつけていきたい、
そして、
長く選手として活躍し続けたい、
と思います。

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