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グラタンの味

『グラタンって、小麦粉とバターを炒めたりするのか!』

わたしはグラタンがどういう食べものなのか、高校生になるまで知りませんでした。グラタンといえば、グラタンキット。具材を炒めて、キットの粉と牛乳、マカロニを加えて作るあのグラタンでした。

『ちゃんとした』グラタンは、高校の調理実習で初めて作りました。女子校だったせいかとても手の込んだメニューが多く、全て一から食材を調理するもので、グラタンも『ちゃんとした』レシピでした。具材をあらかじめ炒めておき、バターを溶かしたところに小麦粉を少しずつ加えながら炒め、それを少しずつ牛乳で伸ばしながらホワイトルウを作る。茹でたマカロニと具材、ホワイトルウを混ぜ合わせ、チーズをかけてオーブンで焼く。

『なんて面倒なの……もうお腹ぺこぺこ。』

やっと焼き上がったグラタンをひと口食べた時、本当においしくて感動しました。一から作った達成感からなのか、空腹スパイスが効いたのか。『ちゃんとした』レシピで作るとおいしいと思いました。

それから何度も家で『ちゃんとした』グラタンを作りましたが、実習のようにはいかず、失敗もしました。小麦粉をうっかり焦がしてしまったり、牛乳を一度に加えすぎてダマになったり。失敗を繰り返すうちに、『誰でも失敗せずグラタンを作れるキットを考えた人、天才やないか……!』と思い至ったことが、加工食品の虜になったきっかけでした。

これまでの仕事

グラタンをきっかけに、と言うと大袈裟かもしれませんが、色々あってわたしの将来の夢は『食品メーカーの研究開発職』になりました。(色々については自己紹介にも少し書いています。)高校の卒業文集にもそう書かれています。管理栄養士取得、大学院修了を経て、愛用するグラタンキットの製造元である食品メーカーに入社しました。入社後は研究開発者として家庭用・業務用の冷凍食品を開発していました。

『簡単でおいしい、そして、健康に寄り添いたい』

商品開発で大切にしたいと思っていたこの想い、前半部分は大切にできたものの、後半部分は中々社内で賛同が得られませんでした。健康的な食品はおいしくない、売れない。簡単でおいしいから毎日使いたいのに、とても勿体ない。何とかしたい。ずっとそんなことを思いながら働いていました。

妊娠出産を機にフリーランス管理栄養士として独立し、現在主に子育て家庭の食に関する講師や執筆・監修をおこなっています。

『健康に留意した食品選びを伝え、おいしさと健康を両立した食品が増える市場に貢献したい』

現在市場で売られる加工食品は、塩や油が多く野菜は少ない。便利な加工食品を、子育て家族がどのように生活の中に取り入れるか、その考え方を伝えようとしていく中で、子育て家族に対する『ちゃんとした手づくりの愛情』外圧に出会います。

これからの仕事

『ちゃんとした』グラタンを作ることは、本当に難しいです。まして自律的に活動できない幼児を育てる家庭で、コンロに張り付きとなるこのメニューはS難度です。

てまひまかけた料理がおいしいことは言うまでもありませんが、その料理を生活の中で作り続けられるでしょうか。少なくとも、要領の悪いわたしには難しいと感じます。

食べるものを考えることはもちろん大切ですが、一緒に食卓を囲んで、食事を楽しむ、そんなちょっとしたことの積み重ねが、実は家庭の味、愛情を感じる料理にとって大切なのではないかと思います。
少なくともわたしにとっては、家族と食べたグラタンキットのグラタンが思い出の味です。実習で作ったグラタンもこの記事になるくらい思い出の味ですが、やはり、家族との食卓を思い出す味はグラタンキットの味です。

子育て家族のためのグラタンキット、これからはそんな視点で、子育て家族のための食卓を支援する仕事がしたいと思っています。


✴︎今回は『#この仕事を選んだわけ』のテーマに沿って書いてみました。

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