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『はじめてのスピノザ 自由へのエチカ』(國分 功一郎)

書評では「人類の歴史をもう一度最初からやり直したとき、今と同じような世界に収束するだろうか。」という一文で書き始めた。

「人間の能力や機能は変わらないのだから、微々たる違いはあっても着地点としてはほとんど同じだろう」というのは尤もらしい答えのように思われる。少なくとも私はそう思う。

しかし、本書を通じて、その「微々たる違い」が実はかなり大きな変化を生み出すという逆説を感じた。歴史を振り返って現在の問題に対するヒントを得ようとするのは、そんな「微々たる違い」の分岐点に立ち返って、今の世界の悪い部分は修正しようということなのだろう。

スピノザはそんな分岐点の一つだったように思えるし、(彼自身の著作に触れたわけではないが)その思想は今ある考えのアンチテーゼとしても機能していると感じた。

また、そのような気づきは生きづらい「今の世界」を生きるうえで良い精神的処方箋ともなりうる。


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