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昔日の夢、劣化版

昨夜、2人で過ごす時のご飯がコンビニ弁当でも幸せなタイプの恋人と、彼の仕事がひと段落した午後八時ごろにドン・キホーテに行った。徒歩で。

その時、店内で張り紙を見かけた。

『登録販売者 募集』

仰々しい文字がポップなフォントで書かれている、やたら目立つ黄色のポスターがなんだかおかしくて、ちょっと笑えた。
でもそのワード、その資格は、私にとって馴染みのあるものだった。

私は彼に、「この資格を取りたいんだよね」と話した。
彼はへぇ、と短い相槌を打ってから、「でも難しいんじゃないの」と返事。

私が半年勉強したらいいらしいよと言うと、やっぱりねと笑った。

それでも私は、この資格が欲しい。


それは、『薬剤師』が私のかつての夢だったからだ。


高校入試を間近に控えた中学生は、いや、真面目な中学生は、自分の将来について初めて具体的に考える。私もその一人だった。

持病というほどでもないのかもしれないけれど、私には幼少期から患っている病気がある。そのためにそれなりにしょっちゅう医者にかかった。そして薬をもらった。
薬剤師。薬と患者を繋ぐ職業。薬の知識のプロフェッショナルで、赤ちゃんから高齢者まで様々な人と関わりを持てる。たくさん感謝される仕事だ。


きちんと将来を見据えた時に、私はその職に憧れた。初めての、ちゃんとした夢だった。


幼稚園や小学校のころの、「将来の夢は?」と聞かれたから考えました、みたいなふんわりしたものとは違う。初めての大きな目標でもあった。

そして、高校は理系に強いところを選んだ。
入学しても引き続き、真面目な生徒だった。

けれど、


けれども、今私は文系にいて、これから哲学をする。薬学とは遠く離れた場所にいる。


諦めた理由は色々ある。どちらかと言うと、仕方なかった理由の方が多い。
薬剤師について、それになるための薬学部について調べるほどに、縁遠い道だと分かった。

数学が苦手で、血が見れなくて、お金もそれほどない。どうやらそんな人の行くところではないようだった。


後悔はないけれど、悩んだあの時の自分に、「諦める」という苦労をした自分に、何か返してあげたい。

私にとってその手段のひとつが、「登録販売者」という劣化版の習得なのだ。

決して登録販売者を悪く言っている訳では無い。この資格を持つ人々ももちろん、薬の知識をきちんと持った立派な人々である。薬事法が変わって、彼らがいればコンビニ等でも薬が販売できる現在、世間での需要も上がっている。現に父はその資格を持って過去一給料と地位のいい今の仕事をしている。たくさんの人に頼られる、すごい社会人だ。


「登録販売者」。かつての夢に1番近い、手に届く資格。父いわく「半年勉強すれば取れる」資格。6年間の薬学部を通らなくていいけれど。薬局のカウンターの向こうで塗り薬を調剤することも、第一種医薬品を販売することも出来ないけれど。決して「薬剤師」ではないのだけれど。

私は、それが欲しい。それになりたい。

まだ何者でもない私だし、実際になるかはまだ分からないけど、なれるようにはなっておきたい。

(文系で可能なところなら)まだギリギリなんにでもなれる私にとって、将来の選択肢は多い方がいい。だから私は学ぶのだ。学び続けるのだ。

以上、しがない大学生の決意表明でした。

今回はこのへんで。ではでは。

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