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「相手」がいるということ

(今回ちょっと愚痴っぽいです、そういうの無理な人はブラウザバックお願いします。)


この春から大学2回生になり、(現在は中断しているものの)私の所属する放送研究会(以下放送部)は例年行っていたお昼の放送を再開する運びとなった。

なったのだが、そのスタートダッシュは私から言わせれば芳しくはなかった。それどころか、私には(このままだと放送部は他の学生に嫌われて終わってしまうのでは……?)と危惧せずにはいられなかった。


まず、初回放送日、お昼ご飯を食べながらTwitterを見ていた私は同大学のフォロワーたちのツイートで第一の問題に気づかされた。


「外で急に音楽が流れ出したんだけど、誰かラジオでも流してるの?」

「急に音がしてびっくりした、何?」


大学のいちマスコミである放送部に所属する身として恥ずかしいことだが、私はこの時になるまで放送部がまともに「お昼の放送を行う」という告知をしていないことに気がつかなかったのだ。


大学には1から4回生の生徒が所属しているが、うち大学に毎日やってくるのは大多数が1、2回生。去年はお昼の放送を行っていなかったこともあり、うちの大学がお昼の放送を行っていることを知っているのはその時間帯に大学にいる人間のうち、おそらく1割にも満たない。

そんな中、食事中突然音楽が聞こえたらまず驚くだろう。そしてまあ放送部の存在を認識する人もまずいないだろう。というか多分放送部の存在自体も半分以上の学生には知られてないんじゃないかな……。



冷静に考えて、お昼に独占的に放送を執り行っている団体の存在が知られていないのはヤバい。

この原因は告知をしていないこともそうだが、もうひとつ、びっくりするほど初歩的な問題もあった。



先のツイートを見て「そういえば今日が初回だったか」と思い出した私は、「食堂前の広場でよく聞こえる」という友人からの情報と、どこのスピーカーから流しているのかという先輩からの情報をもとに、翌日の昼該当場所を聞きにまわった。


絶望的な話なのだが、結果、「聞こえない」ということがわかった。


正確には、「音楽しか」聞こえないのである。本当は我々アナウンサーを担当する部員がいろんなことを喋っているはずなのだが、びっっっくりするほど聞こえない。文字通り耳を疑った。

機材陣では無い私はこれが編集ミスなのか撮り方の問題なのかスピーカーの問題なのか分からない。分からないけれどこのことがとんでもない問題だということだけははっきりしている。


愕然とした。私たちがやっていることが、何一つ届いていないという事実に。ついでにこのことに関して平部員の私に出来ることはほとんどないということにも。

ちょっと部活を辞めたくなるくらいには虚しい気持ちに襲われた。


そしてその日の放送は私の絶望感に更に追い討ちをかけてきた。

流していた音楽のひとつが、ボカロ曲だったのだ。


……まあ気持ちはわからなくもない。私も中学生のときとかは好きなボカロ曲をお昼の放送に流してほしかった(禁止されてたから無理だったのだけれど)。

ただここは私大である。ボカロ曲を流して喜ぶ学生より何が鳴っているのか分からない学生の方が圧倒的に多い。

あとなんか単純に周りの学生が不審な顔でキョロキョロ音の出処を探しているのが見ていられなかった。

(ついでに言わせてもらうが、その日はいわゆる電波ソングも流したと聞いた。共感性羞恥持ちのオタクの死である。勘弁して欲しい。)




高校の頃も含めると、学校での放送、という活動に携わってもう4年が経つが、ここでようやく「相手」がいるということについて初めて認識できた気がする。

先の話も、スピーカーの音量を上げるなりトーク部分の音圧を上げるなりすれば「聞こえる」ようにはなる。

しかし、こちらが作りたい番組を作りたいように作り流すだけでは、学生が「聞く」ようにはならないな、と思った。


それどころか、学校では非オタの友達と過ごすことが多いというオタクの恋人(趣味のひとつがラジオ)曰く「このままいくと不快なものとして認知される可能性が高いよ」とのことだった。


制作側からすると辛い話だが、まあもっともだ。友達と和気あいあいと過ごしたい大多数の学生たちに、聞きたくもない(だろう)放送を無理やり聞かせ続けるということ自体がかなりのリスクであること、それをリスクではなく日々の楽しみに、いやせめて受け流せる日常の一部くらいにまで溶け込ませるには、「相手」であるリスナー、学生たちのことを考えた番組制作をしなければならないことを痛感した。


マルチタスクが苦手な故これ以上背負うものを増やせない私は、部活で役職について直接的に部を変えていくということは厳しい。けれどどうせやるならたくさんの人に愛される放送にしたいし、せめてアンチは減らしたい。

ひとまず、次回放送分の録り溜めのテーマは万人が取っ付きやすいものにするよう進言してみた。何か変わってくれたらいいんだけどなあ。


放送部側がやりたいテーマをやるのは、放送の存在を知ってもらってからでも全然遅くない。まずはひとりでも多くの人に、放送が本当の意味で届くことを願ってやまない。


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