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【感想・考察】三角形の壊し方


1 はじめに

 こんにちは。yuzuuuです。みなさんは三角関係は好きですか?恋愛マンガではお馴染みとまでいえる三角関係ですが、私個人としては苦い思い出がいくつかあります。好きなキャラが三角関係で負けヒロインになっちゃったり、三角関係が原因でバッドエンドになっちゃたりする作品に何度も心を折られてきました(笑)
 今回は、U-NEXTコミックで連載中の三角形の壊し方(著:カボちゃ)の感想・考察をしていきます。基本的に、三角形の壊し方を読了済の方向けの記事になりますので、未読の方はご注意ください。

2 あらすじ

 あや、琴、永理香は同じ中学の演劇部に所属する親友同士だった。一見普通の仲良しな友達同士にみえる彼女たちだが、琴はあやに告白をしていた。はじめは琴の気持ちに応えなかったあやも、一途な琴に次第に惹かれ、告白をうけることに。そして付き合って間もなくの七夕祭り。待ち合わせ場所にあやは来ることはなく、そのままあやは行方不明となってしまった。
 時は経ち7年後、中学の同窓会で地元に帰っていた琴と永理香はセーラー服を着た中学生のあやと遭遇する。彼女は7年前の姿のままだった。記憶も、体も、まるで時が止まっていたかのように、彼女はそのままだった。中学生にも関わらず、7年後の世界に順応していくあやに対して、琴はなかなかあやと向き合えずにいた。いまの自分は7年前の自分じゃない。7年前に私を好きだと言ってくれた自分ではない。そう決めつけて逃げる琴の腕をとったのはあやだった。そして、身寄りのなくなったしまったあやを琴が引き取るという形で同棲が始まる。(~1巻)

 7年前に消えてしまった恋人と一緒に生活を送る幸せを堪能する琴に対して、あやは7年という時の壁に苦しむ。中卒ですらない自分。世間的に付き合っていると言えない年齢差。そして、自分の知らない琴や永理香。どうして自分だけが7年も置いていかれたのか。やるせない気持ちが溢れてしまい、琴とあやはぎくしゃくした関係に。
 一方、2人が付き合う前から琴に好意を寄せていた永理香は、2人が再び付き合いはじめた状況に安堵していた。あやに未練を残していた琴に、過去を精算をしてもらってから、告白をしたかった。彼女は、2人の関係が壊れることを、ずっと待っている。(~2巻)

 面と向かって話し合い、仲直りをした2人だが、関係性は少しずつ変わっていっていた。あやはバイトをはじめると同時に、中卒認定試験の勉強を始めていた。また、永理香の誘いで演劇にも参加することに。バイトでの人間関係のよさや久しぶりの演劇を楽しそうに話すあやに、琴は不安感を募らせていった。あやがいなかった7年間。琴は何度もあやのいなくなった穴を埋めようとしていた。告白はすべて受け、付き合った人にはあやの姿を重ねた、それでも、自分の居場所はあやの隣だけだった。今度こそあやを見失いたくない琴は、またいなくなるかもしれないという不安感から、あやに何もしないで自分の隣にいてくれと言ってしまう。子ども扱いに起こったあやは、琴の家を飛び出してしまった。(~3巻)


3 感想

 3巻まで通し読みをしました。みんな巨大感情抱えてて好き~~~!!あらすじは結構ざっくり書いてるので細かい心情変化は全然書けてないんですけど、本編読んでたらもうみんな重たすぎない?ってなりましたね(笑) もちろんそこが好きなところなんですけど。脳が破壊されました。
 まず各場面での3人の表情がもうすごいですよね。1話の「ここではないどこか」の下りのあやの横顔とか、8話最後の永理香の虚ろな目とか、表情の描き方がめっちゃよくて、まず絵という面ですごく好きですね。絵柄も暗い寄りだと思うので、ストーリーの雰囲気にとても合っていると感じました。ストーリーとしては、1人だけ過去に置いてかれるというのは個人的には初めてのパターンだったので新鮮味があっておもしろかったです。多くな要素としては、このあやが7年間神隠しにあっていたことと、あやと琴が付き合っていること、そして、永理香が琴に恋してることでしょうか。様々な伏線があったので、次の章で考察していこうと思います。

個人的刺さったシーン
・…あやちゃんなら そう応えてくれると思ったよ(4-165)
・なんで私だけ?(6-71)
・泣いてないってば(7-111)
・あたしは ふたりの関係が壊れるのを待っている(8-155)

4 考察

 作中に描かれた順に箇条書きで書いていきます。個人的にもう理解できたと感じた箇所は”・”で、まだ伏線回収されてない、あるいは私が理解できなかった箇所を☆で箇条書きにしていきます
※作中で明らかに理解できる描写については無視していますのでご注意を
※()内は、(何話-その巻のページ(kindle))

シーン別考察

・あたしたちには恋愛なんてまだいらないよね(1-16)
 「琴に気持ちを伝えることから逃げている自分への言い訳」と、「琴があやに告白をしないように釘を刺している」

☆ここではないどこか(1-23)
 これ以降も何度か登場する「ここではないどこか」後に、琴にとっての「ここではないどこか」は「あやちゃんの隣」だと明記されますが、あや視点の「ここではないどこか」はいまだ不明。
(5-10)にモノローグで登場しますが、だいぶ曖昧。単に地元の”おじいちゃんとの”生活じゃなかったら、「ここではないどこか」になっていたのかもしれません。ですが、そうと仮定すると、あやが”どこか”を見ている場面がやたら多いのが気になります。
・図書館での琴の2回目の告白を盗み見ていた(1-39)のはほぼ確定で永理香でしょう。(後にあやに琴と付き合っていることを伝えられた時(2-85)に知っていたと言っている。)

☆琴 あのさ…(1-50)
 琴の「私はもう子どもじゃない」を聞いて、もうあやからはふっきれたと思って琴に告白しようとしている? だいぶ主観入ってますがどうでしょうか…

☆まるで神隠しにでもあってたみたい(2-69)
 あやが7年間もの間失踪していたこと、その間のあやの記憶はなく、あや自身は7年前の失踪時の姿のままだったことの理由はまだ明かされていません。現状どこにも伏線みつからないけど、どこか気づかれた方いますか?

☆あの日…あたしと話した後どこ行ったの?(2-83)
 永理香視点:七夕祭りの日に○○を話した後あやは失踪した
 あや視点:今日はまだ七夕祭りの前日 帰り道を歩いていただけ
 まず永理香が、あやが琴と会う前に何かを話していたことが驚きですが、その内容とは一体何なんでしょうか?

・気持ち全然残ってるよ(2-91)
 表「琴→あやの気持ちがまだ残っている」
 裏「永理香→琴の気持ちもまだ残っている」

☆やっと終わったんだって(3-95)
 普通おじいちゃんが死んだら悲しいのに、「違う」とあやが言う。加えて、「おじいちゃんがいなくなってよかった」ともとれるモノローグ  
 さらには、(3-119)で”おじいちゃんが亡くなって”すごくほっとしてると回想しています。おじいちゃんに何の恨みが…
 余談ですが、後に、あやが母親らしき人物に置いていかれる回想シーンもありますね(4-155) あやの家庭事情複雑そう…

・吹っ切れて気持ちがないなら ちゃんとそう言ってあげなきゃいけないんじゃないの?(3-179)
 別にこのシーンは「まだ気持ちがのこっているのなら、ちゃんと伝えてあげなきゃ」でもいい。そこをあえてネガティブな伝え方をしているのが、琴に「自分にあやへの気持ちがない」と思わせたいから。と考えられます。怖いよ永理香…

・…でもその頃琴は 演劇部にいなかった(3-114)
 過去をなつかしむ雰囲気のところに、琴がふさぎこんでいた話を投下するのは、「あやのせいで琴はショックを受けていたんだぞ」って感じにあやを責めているようにもとらえられます。好きな女を泣かせた罪は大きいから仕方ない。

☆ファンタジーでもなんでも あやがいてくれて…それで琴が変わってくれれば あたしはそれでいい(3-125)
 永理香→琴に気持ちは今後も一貫していますが、永理香→あやの気持ちはなんか曖昧。嫌いではないし友達だとは思っているけど、琴と別れてほしいって願ってる自分に気づいているから近くにいたくないのでしょうか。ちょっと言語化がむずかしいですね…

☆…あやちゃんなら そう応えてくれると思ったよ(4-165)
 ここもちょっとぞわっとしました。”脚本通り”ってことなのでしょうか。あやの前であえて冷静に振舞うことであやの気を引こうとしているのでしょうか?どこまで脚本を書いているのか、、気になりますね。

・戸籍上は大人なので(6-53)
 2人と対等になりたい
 子ども扱いされたくない
→永理香「そんな子どもっぽい… ……はいはい 付き合えばいいんでしょ」
 永理香からしたらまだあやはあの頃のあやで、子どもだと思ってる だから、子どもの遊びに付き合ってあげてる

・全部 良い方向に向かってるんだろうね(6-61)
 「琴が変わった」→あやに未練を残していた琴があやと再開できて喜んでいるということ
 ”良い方向”という言葉は(8-150)でも出てくるのでそこで伏線が回収されています。”あたしが思う良い方向”⇔あやが戻ってきて、そのうえで琴があやとの関係に終止符を打つことで、自分と琴との関係が進むと思っている。

・少し居心地が悪いような(6-65)
 自分の知らない話を目の前で2人がしている疎外感、孤独感

・どう…だっだかな あんまり覚えてないや(6-75)
 さすがに嘘だと思いますね… 琴がこれまで何人もの人と付き合っていたのは後から明かされることですが、それらを覚えていないとは思えません。あやちゃんという穴を永理香で埋めようとしたことすらあるんですから。
 嘘をついたのは単純に自分がこれまで他の人と付き合っていたことを隠したかったというのと、その頃の自分を伝えると幻滅されると思ったからでしょうか。それであやが不安になってるのが少し皮肉ですが…

・自分の幼稚さをとても恥じていた(8-123)
 その内容は次ページから始まる回想シーンに描かれています。具体的には永理香があやという存在を超えられないということでしょうか。

☆あやがいなくなって あたしたちの関係は欠けてしまった
 なんとなくは分かるんだけど言語化がムズカシイ… 誰か小学生でもわかるように解説してください😢

・あたしは ふたりの関係が壊れるのを待っている(8-155)
 8話最後のページですが、一番上の食べかけのスイーツで鳥肌が立ちました… スイーツの名称は分かりませんが、二層構造になっているうちの片方だけ崩しているのは「あやを壊している」のか、「琴を喰べている」のか… 
 永理香の自己嫌悪がなんとも人間らしくて大好きです

・いいな…(9-16)
 12話で永理香に演劇に誘われる伏線

・見送るの まだ慣れないな(9-37)
 もうあやちゃんを見失いたくないから、見送りも本当はやだ

・パピコ(10-59)
 パピコって半分こして食べるじゃないですか?元々1つだったものを2つに分ける行為。2つに分ける。2人に分ける。2人は分かれる…? さすがにこじつけくさいですがふと思ったので記すだけ記しておきます

・…熊谷君は どうして中学卒業できなかったんだろう(12-133)
 琴の危惧した通り、あやが前に進むことでいろんな変化がある。例えば、他の人に興味を持つ。とか。

・12話後半
 琴視点:あやちゃんがどんどん前に進んでいくのが、またどこかに行ってしまう気がして不安、怖い。だから何もしないでほしい。何もしなければ、ずっと私のこと好きなままだから。前に進んだあやちゃんが、私を好きだとは限らないでしょう?
 あや視点:自分だけが7年間いなかったという事実は消せない。それでも、琴が自分を求めてくれている。だから、少しでも琴や永理香に追いつきたい。子どものままでいたくない。大人になって、琴と対等になりたい。そのために、高校に通おうとしているし、自立するためにバイトもしている。なのに、琴は私に子どものままでいろって言うの?琴と一緒にいるためにやってるのに。子どものままは嫌なのに。
 …わかった もういいよ

大局的考察

・あやが左手首につけている鈴
 基本的に普段着のあやは左手首に鈴のついたブレスレットをつけています。これは七夕祭りで失踪する以前から変わっていません。しかし、作中で鈴について言及しているのは1話冒頭のみで他は一切触れていません。この鈴は何の意味があるのでしょうか?単に宗教的なものなのでしょうか。それとも、誰かからもらったお守りなのでしょうか。例えば、お母さんにもらったとか。あやの家庭環境については未だにほとんど触れられていないので分かりませんが、今後明かされているのを待ちましょう。

・タイトル「三角形の壊し方」について
 三角形とは無論、あや、琴、永理香の3人のことを表していますが、壊し方というタイトルは何を表しているのでしょうか。3巻まで読んでいればわかる通り、あやと琴の関係が崩れるのを待っているのはあやでもなく、琴でもなく、永理香です。そうなんです。タイトルだけみると、永理香が主人公ともいえてしまいます。しかし、現状この作品の中心人物はあやと琴の2人です。もちろん永理香も主要キャラですが、メインのストーリーはあやと琴の2人でしょう。
 タイトルの伏線回収はもう終わっているのでしょうか。それとも、これから永理香が三角形を壊す過程をみられるのでしょうか(実際、(12-129)で演劇の後輩に告白をすすめられていますしね)。ここも注目したいですね。

5 おわりに

 以上、3巻までの感想・考察でした。この記事を書くのに何度か読み返していたのですがその度にいろいろ心に刺さってきて大変でした(笑) 改めて、めちゃくちゃいい作品ですね。琴の不安とか、あやの自分が子どもであることのコンプレックスや、永理香の暗い思惑。これからの展開がとても楽しみです。
 また4巻が配信されたら記事を書くかもしれませんので、その時にまたお会いしましょう。最後に著者のカボちゃ先生、編集の楠さんその他多くの方々に感謝を。それではまた。


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