【読書記録】クヌルプ
普段、ヘッセの詩集はよく読むけれども、小説は何年振りかに読んだ。もしかしたら十年振りくらいかもしれない。ヘッセの小説は『デミアン』が一番好きだ。あの長い、心の旅としか言いようのない暗く、真夜中の一番底を歩き続けるような物語には、苦悩する人達が多く現れた。この『クヌルプ』には、苦悩していると呼べるのは(いや、語られていないだけで誰でも苦悩はしているのだが)クヌルプのみかもしれない。ただ、基本的に三人称で語られるこの物語の中で、クヌルプの苦悩は彼の台詞でしか描写されることはない。