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緻密に練られた世界観はどうやったら伝わるのか。ピアノリサイタルに寄せて。

親友(と言っていいのか、もはや迷うのですが)のリサイタルへ。
会社の午後休をとり、夫の早退協力も得て、私は学生時代に魅了された世界観に浸りにいってきました。
世の中はスーパームーンの皆既月食に沸いていた頃。


友人のリサイタルは、いつも総合プロデュース。
文章の書ける二刀流ピアニスト(とチープな表現を使ったら怒られるかな、一旦は仮置きとしてお許しを)として、演奏会名からユニークです。今回は、

「スペクトル スペクタクル ーフランスの伝統と革新、そして現在」

友人は、東京藝大の博士課程に所属し、フランス音楽のピアノ作品を中心に音響構成法を研究しています。

セルフブランディング

会場はムジカーザ@代々木上原。素敵な街で直前の坂道が高揚感とリンク。
受け取ったリーフレットやチラシのデザインも、独特の世界観へ誘ってくれます。
中に入ると、ピアノの隣に印象的なお花のアレンジメント。かすみ草が微分音のように散らばっています。
開演までの間、プログラムノートを読んでみると、その文章も、こだわり凝縮の言葉を紡ぎ、ときおり、本人らしいゆるい表現が織り交ぜられており、ついクスッと笑ってしまう・・・。

出てきた友人は、かすかに赤みの混ざったカラーのヘアスタイル。
パリ時代からのご友人が、ヘアメイクアップアーティストさんとして、友人の魅力を引き出しています。

セルフブランディング力。
セルフプロデュース力。

自分の感性に合うものを選びとっていく・・・いつもリスペクトしています。

ゆかんぽ


思考のカタマリ


定刻。ピアニストは早歩きで登場、間髪入れず、最初は2秒くらいの曲から。一気に観客を自分の世界に引き込みます。

集中力。
論理力。

感性と一言で言ってしまっていいものとは違う、思考のカタマリ。

感覚的に生きているように見せて、たいへん繊細に考え、音楽を構成していく・・・頭の良さを感じます。

ピアノの音色の多彩さとエネルギーの交わり。
それが一気に終焉まで。

ピアノの鳴りが良く、そして観客数が絞られたがゆえの(逆に緊急事態宣言が味方した!?)

会場いっぱいに、スペクトルのスペクタクル・・・


この”隅々まで妥協せず”という気を配った挑戦が尊い。
(細かくみてくと、色々あったと思うけどね・・・w)

芸術家がエネルギー大放出して勝負する場って、とても大事ですよね。

※ミュライユの《水の中の宝石》がよかったな。ルルー《反復する・・・対比させる》はエネルギーオンパレードで解放された時の安堵感よw
※アンコールの自作曲「あっかんベー(B)」が進化していた・・・・全然違う曲に聞こえた。15年以上超えて弾き続けることのできる曲、いいね。

魂こめた表現の場。どうやって届けるのがいいのだろう

今回はコロナの影響で、大阪のリサイタルは来年に延期、そして東京は観客数半分&ライブ配信という形式でした。

現代音楽の作品でしかも音響に着目したプログラム選出。音質の差も倍音の響きも、様々な点において、テクノロジー都合でカットしてはいけないわけですが。
この空気感、世界観も含めて、リアルで見れなかったたくさんの観客の方々には、どこまで、伝わったのでしょう。
(もちろん、今回のライブ配信をされた会社さんの技術はハイクオリティとのこと。多くのカメラを使い多角的に表現されていて、素晴らしいそうなのです。実際に、音響さんがリバーブのかけ方をものすごーく調整していたみたいです。)

6月9日までツイキャスで配信されるそうです。


会場でお会いした先輩がふっと言った「リアルで聴いてよかった」の一言。

そうだよね。(ツイキャスのリンク貼ってるくせにすいません)


魂がこの一瞬に賭けて勝負している感、を伝えたいんだな…

会場の本人の緊張感と、聴衆の体験も含めた共感覚。

それを伝えられるテクノロジーは?どうやって組み合わせていくのか?いや、テクノロジーが進化したら、もはや新たな芸術体験を変容•再定義するような新たな価値が生み出されるのか…

リアルのオンラインのベストミックスを探るのは私のテーマですが、リアルが重要な想いは変わりません。でもこのような芸術体験が、都内以外ででも、リアル体験のようにできたらな。



最後に。

ヘアメイクサーティストさんの4歳のお子さんが観客でいらっしゃいました。
現代音楽ですから、子供向けとは真逆のコンテンツ。
でも、芸術家の魂込めた表現って、きっと彼女の心にも届いたはず。

お疲れ様でした。

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