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「デ・キリコ展」感想
70年の集大成が訴えかける重みを前に、
すべての細胞が止まってしまったような気がした。
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展示会情報
■デ・キリコ展
会期:2024年4月27日(土)~8月29日(木)
会場:東京都美術館
開館時間:9:30~17:30、金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
入場料:2,200円(一般)
アクセス:
・JR上野駅「公園改札」より徒歩7分
・東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅「7番出口」より徒歩10分
・京成電鉄京成上野駅より徒歩10分
展覧所要時間:1.5時間
※撮影禁止
形而上絵画
形而上絵画とは、展示会の言葉を借りて表現するならば
「日常の奥に潜む非日常」を表現した絵画だ。
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「秋の生あたたかく愛のない太陽が、彫像とともに聖堂の正面を照らしていた。そのとき、あらゆるものを初めてみているかのような不思議な感覚に陥った私の脳裏に、絵画の構図が浮かび上がってきた。
こうして生まれた作品を私は『謎』と呼びたい。」
(ニーチェも同じような神秘的な情緒を経験したそうで、デ・キリコはこの後もますます哲学に傾倒していくらしい。)
遠近法もぐちゃぐちゃで、大きいもの、小さいもの、すべて極端に描かれたものが一枚の絵に共存している。だけどどこか統一感があるようにも見えて、不思議な感覚だった。
幻想的であり、どこか暗く憂鬱な気持ちにさせるのは空の色のせいだろうか。建物の色とのコントラストが統一感を感じさせるのだろうか。
あらゆるものを初めてみているかのような不思議な感覚
この感覚は私も体験したことがある。
私はこの感覚に陥ったとき、すべてのものの時間が止まった感覚になる。デ・キリコは時間が止まったという表現はしていない(ような気がするのだけれど)この絵画を見たとき、きっと私と同じ、時間が止まった感覚を彼は体験しただろうと思った。
似たようなものでデジャブ(前にもどこかで一度これと同じものを見たような気がするという感覚)という言葉があるが、それとはちょっと違う。
見ていることは間違いないけど、全く違うように感じる複雑な感じ。
マヌカン
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マヌカン
ほかの前衛芸術に現れる「自動人形」「人間機械」といった、機械により進歩した近代を楽観的に受け止めたものとは違い、マヌカンは理性的な意識を奪われた人間として出てきた。
初期の形而上絵画が持っていた古代性は戦争の愚かさと残虐性によって損なわれたように、マヌカンは空っぽで見るものに不安を与える。
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戦争のはじめに出てきたからか、不穏で、硬い雰囲気がある。
面白いのは、マヌカンが人間らしくなっている時期があること。
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≪預言者≫から15年後の≪南の歌≫という作品。
過去のマヌカンより人間らしい姿をしており、その姿には廃墟や考古学的な要素が書き加えられている
全体的に柔らかい色で、マヌカンも柔らかい質感で描かれている。
このころから古典絵画の様式に戻っていく。
原点回帰を何度もしているようで、過去生み出した作品をその時々の作風で作り直している。
新形而上絵画
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新形而上絵画
それまでに描いたさまざまな作品を自由に組み合わせ、あるいは変容させることでこれまでとは全く異なる独創的な作品たちを創り上げた
晩年の作品たちを見たとき、本当に心臓が止まったような気がした。
美しくて神々しいものが目の前に一気に広がって、言葉を失う感覚。
初期の作品は若いころだからこその勢いというか、こういうものが描けるんだぜ、技術的にもこんなことができるんだぜ、世界に広めてやる、みたいなはじける野心をすごく感じた。
しかしこの晩年期の作品たちを見たとき、それらはすべて過程にすぎなかったのだと感じた。
全ての技術を総動員して「ただ世に残す」感じ、昔よりすごく静かだけど、昔より遥かに重たくて、神々しくて、心臓が止まってしまった。
伝えたいというよりは、残したい、そんな感覚を自分はすごく感じた。
マヌカンも、
昔はマヌカンで表現していたけど、
この絵は「ああマヌカンね、こういうの描いていた時期があったな」とさらっとしていた。色々人生について振りかえりながら描いていたのかな。
高齢のためか昔より線は荒くて乱れていたけど、それが重たくて神々しかった。
サル•バドールダリ
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作風が似てると思っていたらサルバドール・ダリに大きな影響を与えた人だったんだ。(↓過去のサル・バドールダリ展示会レポ↓)
ひさびさに絵画を見て心臓が止まってしまった(ような気がした)。
素敵な展示会なので興味のある方は行ってみてください♪
(※7/9-7/16まではお休みだそうなのでご注意)
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