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物書きとマジシャン#13

「おい、商館が襲撃にあったってよ」

 近所の人も同じ商団に属すので、師匠の耳にもすぐに入る。

「メル、お前は店で待ってろ、危ないと思ったら構わないからアンナのいる自宅まで走るんだぞ」

 はい、師匠

 つい先日金貨を見せてもらったあの場所が襲撃を受けたという。いつも慌てる姿を見せない師匠だが、この一報を聞くとすぐさま走って向かった。



 警備兵もまだ十分に機能していない状態なので、残党がいれば自分たちで捕縛しなくてはならない。

 武器は銃、そして倉庫にある剣が主なものだが、露店通りにはそんなものは基本的に置いてはいない。

 せいぜい皮を扱う際に用いるナイフくらいがいいところだ。


 いよいよこのメイサも何かしらの戦闘状態に入り、そのまま戦争へと突き進むのかと誰しもが思う。

 各自身の安全を確保しながら街の行方を固唾をのんで見守り続けた。

 手元に来たらまた他の金貨を見せてくれると言ってくれた、素は恐そうだが話すと優しいあのザルツさんにはどうか無事であってほしいと願う。

 もし、戦争であれば逃げてくる人がこの通りだけでなく、街の中心部からあふれてくるはず。

 だが、辺りは静まり、聞こえるのは時折風に乗せられて打ち付け合うテントの生地と思われる音だけ。


 もうすぐ半時経つが、まだ目立った動きはない。

 近所の露店の裏に身を隠していた人たちも、そろそろと様子を見に表に姿を現し始めた。

「おいなんとか大丈夫そうだな。」

「ああ、どこかの国が攻めてきたわけじゃなさそうだ。」

「まあ軍ならとっくにこのあたりを制圧しにかかってるだろうな。」

「それもそうだ。」

「ちょっと様子を探ってくるから、念のため身を潜めてろ。
何かあったら助けてくれよ。」

「わかった、気をつけて行けよ。」

 情報収集に向かう人も現れ始め、どうなっているのかはそのうちわかりそうではある。

 今はとにかく、師匠が無事にできるだけ早く帰ってきてくれる事を願うしかない。


※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は架空であり、実在する人物や団体とは一切関係がありません。


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