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「…なので、地球は空気の無い真空の宇宙空間に天体として存在しているというわけだ。」 外での活動と違い、こうして座学に勤しむことになったのは、シェルターに常駐する技術者になりたいからだ。 壇上で講義をする彼も技術者の一人で、主に地球を取り巻く大気の状況を分析したり、予測したりしている。 年齢にして30歳半ばくらいだろう、おそらく18歳の僕からしてみれば、存在がとても大きく見える。 「――大気中に存在するプラスチック粒子の量は、とても計り知れない量だ。これは電気を帯
シェルターで3日間過ごすと、元の生活環境には戻りたくなくなる。 地中にあるこの空間は外気の影響を受けにくく、地熱の温かさもあって実に過ごしやすい。 それだけではなく、かつての文明が残してくれたものなだけあって、人間の生活環境に対する配慮が行き届いている。 蛇口をひねればきれいな水が出るし、温度調節まで可能。トイレも臭いや周囲を気にすることなく清潔に済ませることが可能。 こんな場所は今やこのシェルターくらいしか存在しないだろう。 書物では、海の底に沈んだと
へえ、前に来た時よりずいぶん発展している気がする。 地表よりは随分深い場所に位置するはずのシェルターに数年ぶりに訪れることになった。 「そりゃ、少しは何か進んでてもらわなくちゃ、俺らの苦労が報われねえじゃねえか。」 天井まで伸びる新たな構造物に目を輝かせていると、部隊のおっちゃんが口元は笑いながらも目は真剣そのものでそっと語り掛けてくれる。 あれからまず父に相談し、それから集落の長へ、さらにはシェルターとのやり取りを通じ、今集めてある資料や資源と共に部隊を編成
長い間世界は厚い雲で覆われている。 それまでは青い空とまばゆい太陽の光で満ちていたという。 気象の大きな変化に地上の生物は対応を迫られ、変化できない者は滅びていくしかなかった。 さらに悪いことに、それまでの文明を支えたプラスチックの小さな破片や粉が生きにくくしてくれるのが厄介だ。 ここから北東へしばらく進んだ先にはかつての気象観測所があって、そこには大量の紙を使った資料が残されている。 当時は文明がとても発達していて、空飛ぶロボットが様々なものを運び、情