間違いなく、ゲンジツ

中学生の頃、まだ彼氏がいなくて恋もなんだかよくわからなくて、好きなタイプってのも輪郭がなくて…そんな曖昧に幼い恋心が向かった先は、先輩が描いてくれたイラストの彼の顔。
何気なく貰ったのだが、毎日眺めているうちに、ぼんやりとだが、あ、この顔が好きなんだよなぁ…って、理想のカタチになっていた。
少し綺麗め、骨っぽくて肩幅が広くて、涼しげな眼差しで、優しく微笑んでくれる。
一瞬だが、実写版かよっ?!ていう男に出逢った事がある。
わぁっ!みつけた!!と感じた瞬間、居なくなった。口から出た言葉は、怖ーい!!

あれから、幾つかの恋を経て、今現在、隣に眠る彼は、真逆のカタチ。理想と現実は、違う。そう、視覚と触感の好みは別物かもしれない。
今、失礼なコト言った。
でも、好きだから許してください。

目の前から消えた理想のカタチを追いかけて、
間違えたこともある。似ているだけの、ニセモノ。わたしにとっては、の話。
誰かにとっては、ホンモノかもしれない。

ある時に、気がついた。
あれは、幻?
太陽の光に似た幻の光を、幻日と呼ぶらしい。
高度も同じ、光り方は様々だが、太陽光そのものでは無い。
ハワイでは、吉兆の知らせと云われているらしい。
あの時、あの場所で出逢った彼はきっと、
わたしの影に隠れてわたしの眼の中に溶けてしまったのかもしれない。幻日だったのだと思えば、もう探さなくて済む。
一瞬、眼があっただけの出逢いが、こんなにも人を惹きつけるなんて、ずるい。
あんな感情の入り混じった瞳を、他に、知らない。 
何が怖かったのか、今なら解る。
絶望感を越して、虚無を越して、怒りなんかで彩ってみせて、そして笑う。表情と瞳の違和感
が眼の底まで見えてる様な、あのギャップが、
記憶から消えない。
やり尽くしてみたけど、これからがまだあるのか?とでも言いたげな…そして、優しい声。
俺、似てるって言われたことあるよ?
その人は、映画の中の主人公に、たしかに似ていた。
時計仕掛けのオレンジ
アレキサンダー…
あれは、もう幻日だと思って、諦めた。
その辺りから、私の眼は、きっと変に明るくなったかもしれない。
諦観
あの時に感じた違和感は、これだったのか。
何故、惹かれたのか。
理由は、子どもだったから。


穏やかな夜を過ごしている。
まるで、老婆のように。
今夜は、冷え込む。
星が綺麗な夜だ。
思い出話をするにはまだ、少し早い。
この続きは、いつかまた…








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