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セミファイナル直後!片山柊さんインタビュー

セミファイナル後、ファイナリスト発表までの時間。今まさに7人のコンテスタントが演奏した新曲委嘱作品「内なる眼-ピアノのための-Innervisions for Piano」を作曲された、片山柊さんにお話を伺いました。

まず率直に、ご感想をお伺いできますか?
一度に7人の初演に恵まれる機会はめったにないので、大変楽しめました。
コンテスタントとの事前打ち合わせで、「それぞれの解釈で好きに演奏してもらっていい」とお伝えしたのですが、まさしくそういった7人7様の解釈を見せてくれたと思います。

特級クラウドファイディングのインタビューの中で、「コンテスタントの「根性」を引き出したいという想いをこめた」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。果たして、「根性」は引き出せたでしょうか?
すごくパワフルに演奏してくださった方が多く、その点は嬉しく思いました。コンクールゆえのペース配分やピークの調整、といったクールな計算というか、ある種メーターを振り切って、この瞬間に情熱をぶつけるような演奏をして欲しいと思っていたので、そうした部分が垣間見えたので良かったと思います。

か、垣間見えた・・程度でしたでしょうか・・。
情熱やエネルギーを感じるよりも、「どう弾くだろう」と細かいところを集中して聴くことに注力してしまったので、そういう印象になってしまったかも知れません。録音を聴き返してみると、また違うベクトルで聴ける可能性はあるので、後ほど情熱を受け取ってみようと思います(笑)。

片山柊さん

作曲にあたって難しかった部分はありましたか?
委嘱にあたっては、「ひとつのテクニックや音楽性に縛られないような音楽を」という依頼があったんですね。それを、自分が表現したかった、根性、情熱といった要素を踏まえて4分に盛り込む、という点が難しかったですね。

3分でもなく、5分でもない。5分だともっと、色んなことができる。3分だと、それはそれでまた、違った音楽になるとは思うんです。もう少しエチュード寄りというかね。

次に同じ長さで書くとしたらどんな風になるのかな、と今は考えています。奏法という観点でも、もっと色んなことができたかも、というのが自身へのフィードバックではあります。

印象的な演奏をされた方、いらっしゃいましたでしょうか?
そうですね、3番目に弾かれた三井柚乃さん。旋律の歌い方やモチーフの捉え方、全体の響きのバランスが、僕がイメージしていた響きと近かったんです。ショスタコーヴィチとのつながりもすごく綺麗で。そういう風に、他の曲と並べてみて初めて分かることもありました。

ご自身の解釈とは違ったけれど、新しい発見を与えてくれたような演奏はありましたか?
そうですね、4番目に弾かれた嘉屋翔太さんの演奏も「こう読むのか」と思わせてくれた部分がありました。他の演奏者も、それぞれに、新たな一面を見せてくれたと思います。

でも実は、譜読みを間違えた人もちらほらいたりして・・。

短期間で読まないといけなかったので、大変だったのかと・・
そうした解釈を聴きながら、改善したくなった部分はあったでしょうか。
そうですね。中間部の少し静かになる部分をもっと激しくて、ずっと強い音で作り上げても良かったのかなとか。細かな記譜の方法などでもありました。ここの拍子、やっぱ4分の4じゃなくて4分の3にすれば良かっただろうか、とか、もっとこういう書き方をした方が伝わるのかな、とか小節単位でぐるぐると考えながら聴いていました。

4分というともっとコンパクトな楽譜かと思いましたが、紙の楽譜がかなり長くて、驚きました。
見やすいように余裕のあるレイアウトにしたので、長くなってしまいました。

楽譜を見せてくださいました

クラスター奏法の手前の静かな部分が、冬景色のようだったり、鏡のようだったりと、演奏者によって伝わってくるイメージが違って、私にとっての聴きどころでした。
そうした独自のイメージと結び付けて演奏してくださることは大歓迎です。直にコミュニケーションが取れるような作曲家の作品となると、「書いてあること以外はやらない方がいいんじゃないか」というスタンスを取る演奏家もいるんです。ですが実際は、作曲家は演奏家の能動的な解釈を求めています。今回は、それぞれの演奏者が色々なイメージと結びつけて演奏してくれたように感じますね。

2017年特級グランプリでもある片山さん

2017年の特級グランプリである片山さんがこうして作曲家として特級の課題曲を作曲される。素晴らしい循環で、片山さんだからこそ作曲できた曲だとも感じました。そうしたことを考慮して「内なる眼-ピアノのための-Innervisions for Piano」というタイトルを付けられたのでしょうか?
私が特級に出場した際に聴いていた、スティーヴィー・ワンダーのアルバムタイトル「INNERVISIONS」にしようというのは、早い段階で浮かんでいたんです。ただ、その日本語訳を決めるまでに、少し時間がかかりました。自分が作曲する立場になって伝えたいメッセージと、自分がコンテスタントだった時に感じていたことがリンクするな、と思って今回こういったタイトルを考えました。

作品の前書きに、アルバムの中の「Higher Ground」という曲の歌詞の一部を引用されていますね。「一番の高みに到達するまで誰も僕をとめられない。一番の高みに到達するまで誰にも邪魔させるんじゃない」。伝えたいメッセージとは、こうしたことでしょうか?
そうですね。「一番の高み」というのは、コンクールの順位とかではなく、それぞれの目指す音楽のてっぺんに到達するまで、心の眼を使ってこれからも表現を続けて欲しいというメッセージを込めました。

カタヤマシュウ名義での東京〇×問題ダンスとの融合など、ジャンルを超えた活動が広がっていますね。
私はピアノの演奏からスタートしましたが、もっともっと新しい風景が見られるんじゃないかと探っているんです。活動が分散しているようでもありますが、いずれ大きな流れにつながるよう、今は色んな伏線を張っている感じです。

ありがとうございました。これからも片山さんの活動を応援しています!

今日の曲ではありませんが、片山さんの新譜「四つの思い出」歌曲集が発売されています。

特級公式レポーター、山本知恵さんによる紹介記事も、合わせてご覧ください。

セミファイナリスト7人による演奏はコチラ!

(聴き手:ピティナ特級公式レポーター 柚子と蜜柑)
(Photo by 飯田有抄