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神 note

そこは常春、昼下がりのカフェテラス。

「デグレスピルナさん、この間、バナナの記事書かれてたじゃないですか」
ケーキを突いていたマリオルミューズが唐突に話し出す。

「え、あれ? noteのやつ?」
運ばれてきたコーヒーを軽く会釈して受け取るデグレスピルナ。

「そうそう。レーテンスバンカさん、すごく喜んでましたよ」
フォークでこそいで薄くなったケーキがパタリと倒れる。

「あ、そうなの」
そっけない返事とは裏腹に、口角上がり気味のデグレスピルナ。

「わたしも読みましたけど、いいとこ見てますよね〜」
なぜか上から目線のマリオルミューズにその口角もちょっと下がる。

「うん、結構自分でもよく書けてたかなと思ってる」
カップの縁を軽く撫でて熱さを確かめ、口に運ぶ。

「いやー、バナナの機能美をあすこまで丁寧に解説書いたのって」
そこまで言って、マリオルミューズは最後のひと切れを口に運び。

「デグレスピルナさんが初めてじゃないです?」
咀嚼しおえて、ようやく言葉を結ぶ。

「そんなことないと思うけど、noteには初めてかもね」
まんざらでもない様子でコーヒーをすするデグレスピルナ。

「そりゃレーテンスバンカさんも造物主冥利に尽きますよね」
食べ終わったケーキ皿を端に寄せてスマホを取り出すマリオルミューズ。

「ただ、あんまりスキが付いてないのは不思議ですよね」
スマホの画面を見ながら、ぼそりと言う。

「あ、まぁね、読み手を選ぶかなとは思ってたし」
レーテンスバンカさんもスキは付けてくれなかったし、とぼそり。

「んで、わたしもリスペクトして書いたんですよバナナの記事」
思わず、軽く眉間にシワの寄るデグレスピルナ。

「バナナはおやつに入りません!ってやつで」
マリオルミューズはスマホの画面をデグレスピルナに向ける。

「思った以上にウケましたね〜、公式のオススメになったみたいで」
改めてスマホ画面を見返し、嬉しそうなマリオルミューズ。

「あーよかったじゃない。ウケそうだもんねそういうの」
わざとトゲのある言い方をするデグレスピルナ。

「でしょ?狙い通りって感じです」
そして、意に介さないマリオルミューズ。

寝所に戻ったそこそこ失意のデグレスピルナは、開きっぱなしのノートパソコンに映ったブラウザ画面を無意識に更新し、ホーム画面の最初にレーテンスバンカの記事を見つけた。「褒められて伸びるわたし」というタイトルで、なんとはなしに読んでみると、最初に自分の記事がリンクされていることに目を疑い二度見する。

『だいぶ昔の仕事、普通のことになりすぎて、誰にも気にされてなかったこと(自分でさえも!)に、こんなに丁寧に褒めて貰えるなんて思ってなかった。ほんとにうれしい。これはもう、褒められて伸びざるをえない!』

そんな文章にニヤ付いてしまう自分を抑えながら、何度も何度も読み返すデグレスピルナ。もちろん、こんなおしらせもね。

レーテンスバンカのスキのコピー


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