白エルドラージ――基本の”キ”


この記事はかつてメインで使用していたヴィンテージのデッキ、白エルドラージ(White Eldrazi, Displacer Tax)の記事です。もっとも使用していた時期は霊気紛争前後までなので、アップデートされていない部分があるかもしれません。

1.はじめに

yuz.といいます。マジック自体は高校のとき、MMQ~LCG(ギリギリMRDかかるくらい)で一旦休止し、2015年冬からヴィンテージでの復帰です。

ヴィンテージの記事を書いていくのが最近の流行らしいので、みんな書けそうなMUDの話は放っておいて、白エルドラージの解説をしていこうとおもいます。

このデッキはヴィンテージの中でも、土地カードにお金があまりかからない点、パワー9のなかでもアーティファクトのみ集めれば構築可能な点で、登龍門として適切だと考えています。ここまでで集めたMoxenから青いスペルをそろえて青系のフェアデッキに誘導するもよし、マナを縛る愉悦におぼれてMUDに行くもよし、沼の入り口には最適です

2. 構築例

MAINBOARD
[Creatures]
2 封じ込める僧侶/Containment Priest
3 変位エルドラージ/Eldrazi Displacer
3 輝きの乗り手/Glowrider
4 ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker
4 現実を砕くもの/Reality Smasher
4 スレイベンの守護者 サリア/Thalia, Guardian of Thraben
2 異界戦士 サリア/Thalia, Heretic Cathar
4 難題の予見者/Thought-Knot Seer

[Artifacts]
1 Black Lotus
1 虚空の杯/Chalice of the Void
1 魔力の櫃/Mana Crypt
1 Mox Emerald
1 Mox Jet
1 Mox Pearl
1 Mox Ruby
1 Mox Sapphire
1 太陽の指輪/Sol Ring
1 アメジストの棘/Thorn of Amethyst
1 三なる宝球/Trinisphere

[Lands]
4 古の墳墓/Ancient Tomb
4 魂の洞窟/Cavern of Souls
4 エルドラージの寺院/Eldrazi Temple
2 カラカス/Karakas
4 平原/Plains
1 露天鉱床/Strip Mine
4 不毛の大地/Wasteland

3.デッキのコンセプト
「マナを縛りながら殴り倒す」

①マナロック/Mana Disruption
以前は<アメジストのとげ/Thorn of amethyst>を4枚積んでおりましたが、晴れて制限カード入りした影響で、1マナ重くなった<輝きの乗り手/Glowrider>が加わることになりました。
これ以外に、<スレイベンの守護者サリア/Thalia, Guardian of Thraben>, <虚空の杯/Chalice of the void>, <三なる宝球/Trinisphere>がマナロックとして機能します。

いつもの<露天鉱床/Stripmine>と<不毛の大地/Wasteland>も入っており、土地破壊を担います。

<異端戦士サリア/Thalia, Heretic cathar>はヴィンテージで多用されるフェッチランドを中心に、ほとんどの土地をタップインさせるため、相手のテンポを削いでいくことができます。

呪文のコストを上げることと土地を縛ることで、相手のテンポロスを狙いつつ、マナファクトや<エルドラージの寺院/Eldrazi temple>や<古の墳墓/Ancient Tomb>でマナ加速を行いクリーチャーを横に並べていきます。<アメジストのとげ/Thorn of amethyst>や<輝きの乗り手/Glowrider>はクリーチャー呪文のコストを増やさないので、クリーチャーメインのこのデッキではシナジーを形成します。

②クリーチャー火力/Power is everything, more is better.
無色マナがこのデッキの中心です。白は添えるだけ。
このデッキはエルドラージのデッキということになっていますが、実際は「エルドラージと人間の部族デッキ」です。したがって、安定させて動かすには、<Cavern of souls/魂の洞窟>がカギになります。
<輝きの乗り手/Glowrider>と同じ効果であり、同じマナコストの<ヴリンの翼馬/Vryn’s wingmare>が回避能力を持ちながらも採用されないのは、クリーチャータイプが人間でないからです。

<難題の予見者/Thought-knot seer>はCIP持ちの4/4で、手札破壊を狙えます。マナが余っていれば<変位エルドラージ/Eldrazi Displacer>で明滅させることで、CIP能力を使い回すことができます。だいたい<古の墳墓/Ancient tomb>あたりからの無色マナなので、痛いときの方が多い印象があります。

<現実を砕く者/Reality smasher>はかなり強力なフィニッシャーですが、私はこれを一枚抜いて<磁石のゴーレム/Lodestone golem>か<折れた刃 ギセラ/Gisela, the broken blade>を入れることがあります。
<磁石のゴーレム/Lodestone golem>は一長一短ですが、4マナ5/3とコスト増加効果は無視できませんし、<折れた刃 ギセラ/Gisela, the broken blade>はLandstillのmoatに刺さるため、シルバーバレットとしてときどき入れています。

③各種ケア/Utilities
<封じ込める僧侶/Containment priest>+<変位エルドラージ/Eldrazi displacer>の起動型能力で大体のクリーチャーは除去できます。主にoathから降臨してきたり、土地から出てきたりするレジェンドは<カラカス/Karakas>でも対処できます。

起動型能力に対しては<ファイレクシアの破棄者/Phyrexian revoker>が優秀です。土地対策も兼ねて<真髄の針/Pithing needle>や<魔術遠眼鏡/Sorcererous spyglass>を検討してもいいでしょう。 各々に細かい差があるので、一長一短です。

<流刑への道/Path to exile>や<四肢切断/Dismember>などのクリーチャー除去、<解呪/Disenchant>などの置物対策を何枚か入れても良いかもしれませんが、現在のデッキリストをみると、メインボードからインスタント・ソーサリー系の呪文は刺さっていないようです。

<王冠泥棒 オーコ/ Oko, The thief of crowns>さえ居なければ万事上手くいくはずです。昔は<精神を刻む者ジェイス/Jace, the mind sculptor>を止めていたものです。今後はオーコになるのでしょうが、<活性の力/Force of vigor>がある限り辛い思いをするしかないのです。

4.MUDの下位互換のような気がしないでもない。

       ――ご指摘の通りです。

このアーキタイプは「ハーキルの召還術や魔力流出に耐性を持った『プチ弱いMUD』」です。たしかに優秀なクロックである白のサリアシリーズや、手札破壊の機能を持った4/4のバニラなど、優秀なカードを揃えているのですが、MUDのようなキレがないのです。

白エルドラージが強いのは、The Perfect Storm(TPS)やParadoxical Storm(PO storm)といったコスト増加を嫌うデッキであり、次点はOathです。以前はOathに対して有利をつけていましたが、<活性の力/Force of vigor>と<王冠泥棒オーコ/Oko, the thief of crowns>が加わった影響もあり、より対処しにくくなりました。

最近勃興してきたSurvivalやZiasBond、墓荒らしの流れを汲むRUG planeswalkerようなタイプのデッキとは考察できるほど対戦の数を積んでいませんのでコメントしにくいです。

MUDには彼らの「マナを縛る一方で自分はマナ加速して場を制圧する」という能力に勝るだけの加速を持っていないので、MUDに対しては不利です。(彼らにはMishra’s Workshopがあります。<エルドラージの寺院/Eldrazi temple>では遅すぎるのです)

ドレッジは昔までは<安らかな眠り/Rest in peace>と<真髄の針/Pitching needle>と<封じ込める僧侶/Containment priest>があれば片手うちわでしたが、<活性の力/Force of Vigor>を手に入れた今、すこし相手をしにくくなり、微有利〜有利に落ちます。

青系フェアデッキに対しては中立〜微有利と見ていますが、戦いが長くなるとハンドアドバンテージが取れない分不利になります。

5.採用を考慮すべきカード

ほとんどありません。どうしてかというと、このデッキのコンセプトは極めて強固だからです。無理矢理ひり出すと空きスロットになりそうなのが、

<異端戦士サリア/Thalia, the heretic cather> 1-3枚
<Mox>のうち どれか1枚 もしくは <太陽の指輪/Sol ring>
<不毛の大地/Wasteland>1枚

の都合3-5枚です。

このデッキはドローソースが殆どなく、ハンドアドバンテージが稼ぎにくいため、以下のようなカードが選択肢に上がりますが、機能するのは<地平線の梢/Horizon Canopy>くらいでしょう。

<むかしむかし/Once upon a time>を詰め込む
<地平線の梢/Horizon Canopy>系の土地を加える
平地を氷雪にして<アーカムの天測儀/Arcum's astrolabe>を加える

6.色を足す可能性について

一瞬だけ、<アゾリウスの造反者 ラヴィニア/Lavinia, Azorius Renegade>を入れるために青をタッチしたデッキが入賞したのですが、このデッキに一色たしてしまうと、事実上三色デッキになり、マナスクリューをおこしやすくなるので、私は否定的です。
とはいえ<むかしむかし/Once upon a time>はロマンの臭いがしますし、緑タッチはアリかも知れません。どうしても色を足す場合は、無色マナが出る関係で、<アダーカー荒原/Adarkar wastes>などのダメージランドがよいでしょう。

7. おわりに

このデッキは「さしあたってパワー9のうちのマナファクトを揃えたよ」という方向けのデッキです。MUDの登龍門と言い換えてもよいでしょう。
現在、MUDは力を落としており、メタの中心から遠ざかりつつあるので、勝つためにMUDを組むのはモチベーションとしては薄くなっていきそうです。

しかし、「カウンターを使わず、常に相手の嫌がることを予想しながら立ち回る」「マナを縛る快感」「マジックはクリーチャーでライフを削るゲーム」ということに少しでも刺さるところがあるなら、青のないこのデッキから、ヴィンテージを始めてはいかがでしょうか。





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