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医療機器の設計管理4

医療機器の開発職というのは、技術力があるだけでは不十分で、品質マネジメントシステムへの理解もある程度は必要になってくる。入社したての頃など、品質マネジメントシステムの知識など持ち合わせていない時には、一体自分の業務はなんのために行うのかという全体観が見えないまま、開発という名の書類仕事を行うことになる。少し時間が経つと、verificationやvalidationという言葉に出会うだろう。さて、ここで困ったことに二つは意味が似ており、違いがよくわからないという人はいないだろうか?本記事では、verificationとvalidationの違いを簡単に説明できればと思う。

日本語にするとverificationは検証、validationは妥当性確認などと訳されることが多いが、具体的には何が違うのだろうか。まず、医療機器の設計管理の進め方を表した下記の図を見てみよう。医療機器関連の仕事をしている人であれば見たことがあるかもしれない。この図が意味するところは、ニーズからインプットが作成され、それをもとに設計活動が行われ、アウトプットが生成される。そして最後に製品が完成するという医療機器開発のウォーターフォールモデルである。今回のトピックで重要なこととして、インプットとアウトプットの間にverification、ユーザーニーズと製品の間にvalidationがあることだ。

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したがって、Verification(検証)は、inputとoutputの関係が一致しているかどうか、validationはUser NeedsとMedical Device(製品)の関係が一致しているかどうかを見ている。例を挙げて考えてみよう。例えば、inputの中に「〇〇〜□□Vで動作する」という要求があれば、実際に要求された電圧をかけて機器の動作をするのがverificationである。これは設計が正しく行えたかを確かめる活動となる。一方で、「コンパクトで使いやすい」という要求事項があった時に、実際に誰かに使ってもらい問題なく使用できるかを確かめたりするのがvalidationである。

当たり前ではあるが、設計・開発ではverification・validationの両方を実施して、完了させなければいけない。「〇〇〜□□Vで動作する」が、「コンパクトすぎて、お年寄りには使えない」という状況や「コンパクトで使いやすい」が、〇〇〜□□Vで動作しない」という状況では、verification/validationどちらかが取れていないため製品は認められない。

上の様に説明はできるし、読んだら理解はできるが、いざとなると何がverificationで、何がvalidationか混乱してしまうかもしれないし、説明しにくいと感じる方がいるかもしれない。そんな人のために、個人的にわかりやすい覚え方を紹介したい。それは下記の2つの文章だ。

verificationは、
「Did we design the medical device right?」(私たちは正しく医療機器を設計したか?)を確かめるもの。

validationは、
「Did we design right medical device?」(私たちは正しい医療機器を設計したか?)を確かめるもの。

非常に似ているがverificationとvalidationの違いを説明していると思うし、短くシンプルな表現のため人に説明する時にも使いやすい。新人からの質問や教育に簡単に取り入れられる説明のため、機会があったら使ってみて欲しい。入社3年経っても、「verificationとvalidationの違いがわかりません」となってしまうのが今の医療機器メーカーの実態だ。少しでも状況を変える一助になればと思う。

それでは、今回の記事はここまで。読んでくれた方ありがとうございました。


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