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医療機器の設計管理1

今回は、一般の人(医療機器メーカーの新入社員など)にはイメージしにくい「医療機器の設計プロセス」の紹介をしよう。私も全てに関わっているわけではないので、推測となる部分があるが、色々と参考にまとめてみようと思う。今回はDesign Planについてだ。

もしあなたが創造的で、圧倒的な技術力を持っていて、天性のセンスに基づいて、あるデバイスを「生み出してしまった」としよう。それが、世の中で苦しむたくさんの患者を救うであろうと誰もが認めていたとしても、残念ながらそれを製品として売ることは許されない。なぜなら、医療機器には規制があり、その規制で「設計開発のプロセス」が管理されていることが要求されるからだ。米国ならFDA、ヨーロッパならISO13485が要求していることになる。あなたが生み出したものを世界に届けて、人を救いたいのであれば、規制のルールに従った上で、医療機器を生み出す必要がある。

では、どんなルールがあるのか?色々なルールがあるが、私は開発者だから、製品の設計開発に関わるルールを紹介しよう。先ほど述べたとおり、医療機器の設計開発は「プロセスが管理」されていなければならない。その初めに来るのが「Design Plan」だ。

・Design Plan
どういうことなのかを大雑把に言えば、「計画を立ててから、設計開発をしてね。その際には、みんなでしっかりと役割分担をして、どの人たちがどんな責任があるかを明確にしてね!あ、そうそう、ちゃんと文書化して誰が見てもわかる様にしておいてね。計画は責任者に承認してもらってね。あと、計画の進行に応じてしっかり、更新してね。設計プロセスが管理されているから確認したいから!」っていう感じだ。工場などには、時々、監査といってISOやFDAの人が来て、設計プロセスが管理されているのかチェックする。その時に、計画が見られて、ずさんな管理の場合怒られてしまう。(※怒られるだけなら良いが、最悪の場合、工場などでの製造が止められてしまう場合がある)

計画に含まれるものとして、FDAが紹介している典型的な内容は例えば、下記のものがある。
・設計開発の目的とゴール
・設計および開発段階で品質を保証することに関する組織(請負業者とのインターフェースを含む)の責任
・実行する主要なタスク、各タスクの成果物、および各タスクを完了するための個人または組織の責任(スタッフとリソース)の識別
・プロジェクト全体の時間の制約を満たすための主要なタスクのスケジューリング
・主要なレビューと決定ポイントの特定
・レビュワーの選定とレビューのプロセス
・ドキュメント管理
・周知活動
など。。。。

もし、医療機器の会社に勤めているなら、自分の会社の品質マネジメントの文書を読んでみると色々と理解が深まるだろう。特に、疲弊し切った日本の医療機器メーカーの現場は新人に説明や教育をしないだろうから、社内の品質文書を読んで、プロジェクトが何をしようとしているのか、どんなスケジュール感で動いていくのかを知ることが生き抜く上で大切だ。また、ISO13485の設計・開発の部分を読んでも参考になるはずだ。

医療機器の開発では、Design Planのほかに、Design input、Design output、Design verification、Design validation、Design transfer、Design changes、Design history file、Risk managementの活動が行われることになる。それらのことについては、また別の機会に述べたいと思う。

記事の最後に、医療機器開発において覚えておいてほしいのは、「計画→あらゆるアクション→成果」を文書化して管理しなければいけないということだ。面倒くさいと感じるかもしれないが、そう感じる様では甘い。開発者は自分たちの作ったものが、安全であると保証できなければならない。保証というのは、自分だけでなく、他人が見ても納得できる客観的なものではないといけない。そこで、行ったことを記録に残し(文書化し)、必要な時に見れる様にしておかなければいけないのだ。そして、何か間違いがあるとわかった時には、波及範囲を特定し、すぐさま改善できる様にしておかなければならないのだ。また、審査員が製品の文書を見て、危険性を理解し、合理的な判断を下せる様にしておかなければいけないのだ。これは、何か間違いが起こった時に一番傷つく可能性のある人、「患者」のためなのである。

それでは、今日はここまで。読んでくれた方、ありがとうございました。

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