発達障害持ちが最初で最後の労働基準監督官試験を受けたお話

あたって砕けてみようかと悩み始めたのは2月、受験を決めたのは4月、そこから勉強を始めて6月が筆記試験

私の労働基準監督官試験対策はこんな僅かな時間しかない。他の方と比べるのもおこがましいレベル。役に立たないとは思いながらも気持ちの断捨離も込めてここにつらつらと書き並べることにしました。

私は受験の時点で高卒障害者雇用3年任期の3年目、放送大学1年生の29歳だった。労働基準監督官の存在は昔から知ってはいたが「大卒程度」という文言の前で尻込みしていた。大卒程度であり大学卒業は受験の必須要件ではないのだが数年勘違いをしていたというドジもあったのだが。

受験に至るまでの経緯や動機は後述させていただくことにして、私が受験を決めた、もといあたって砕けて私の心にすくう労働関係のあれやそれやこれやとサヨナラをして「普通の女性」として生きていこうと開き直ったのには2つの言葉をかけていただいたことがきっかけだ。

一つは恋人からの「そこまで労働基準法に詳しいなら試験受けてみてもいいと思うよ」という言葉である。詳しいと言っても素人に産毛が生えた程度。それでも周りから評価されたのが嬉しくて少し前向きに考えるようになった

もう一つは現役バリバリ労働基準監督官さんの「試験なんて鉛筆転がせば受かりますよwww」というなんとも軽いノリの言葉。ちなみにこの方成績そこそこ上位。

自分のイメージでは労働基準監督官は淡々とした真面目なイメージ(七三分けしてない国税職員みたいな)で、自分には合っていないと思ってたらところもあったのだがどうやら労働基準監督官は見た目が真面目じゃなくても大丈夫らしい、軽いノリでもいけるようだ、そういえばお馬さんだったり夜遊びだったりしてた人もいるね、じゃあやってみよう!その日の夜には出願していた。ノリと勢いだったのは否めないが自分のような自信がない人間にとってはそういうノリも必要だとおもう。世の中イケイケドンドンあたって砕けろでやっていい、私に失うものはない←

受験を決めたのは4月の頭、試験は6月の頭。これで受かるわけがないと思いつつ、メルカリで過去問を購入。今から専門知識を詰めるのは厳しいと思ったのでひたすら基礎ばかり解いていた。英語はからっきしだが中学受験で培ったテクニックで数的、判断推理はできる。捨てるものは捨てて拾えるものは拾う作戦だった。もっとも専門対策を全くしないわけにもいかなかったので放送大学の「雇用社会と法」「市民生活と裁判」というテキストを読み、ネットで厚労省の労働基準法関係のものを読んでみたり中労委のホームページを見たりしていた。ほんとこれだけしかやってない、やれてない、フルタイム勤務だったしね。職場の部署が労務関係というのもあり多少知識は得られたけど労働法全書どころか六法すら開いたことはない。

試験当日はなんだかんだ「私ダメだろ、交通費の無駄じゃないか」と落ち込みながらも何故か仮面ライダー電王の曲を聴きテンションを無理やりあげていった、スーツ着用の上。試験会場着いたら思ったより受験生きてないわ、ラフなカッコだわでポカーンとしたのを覚えている。気合を入れすぎずぽけーっとするぐらいがちょうどいいのかもしれない。

さて試験開始。休み時間はテキストを読みつつ思ったよりも解けたかなと思いつつ、記述の試験用紙を開いてあまりのわからなさに全部吹っ飛んだ。いやもう綺麗さっぱり。おぼろげに覚えていた判例も吹っ飛んだ。泣きそうになった挙句呼吸がおかしくなった気もするが、「元から落ちるに決まってる試験だ、わからなくても答案埋めまくれ」と開き直ってほぼ全部埋めた。

開き直りと、過去の経験を思い出して答案を埋める、知り合いの労働基準監督官は解答用紙の裏面に気づいたのが試験時間後半だったと言っていた、時間が少なくても埋められるはず!意味がわからない言葉は一文字単位で分解して漢字の意味から推測しろ!

そうして試験が終わった。監督官への夢も終わった。

自己採点は

基礎13/40  専門23/40

Excelであれこれ計算してみても落ちてることが濃厚、職場で点数やばいからきっと落ちましたーと明るく言ってのを覚えている

まさかあと一問間違えてたら、一次試験不合格だなんて誰が思っただろうか、この点数で。一次試験不合格だと思ってたから面接対策何もしてないよ私。

ちなみに基礎は別にして専門はなんとなく解けそうなものをチョイスして解いた。数字に強かったので初めてみた労働経済の問題も解けた、あとは「この選択肢が合ってるなら世の中もっとマシだわ!」という謎理論で解いたのもちらほらある。やはりノリと勢いは大事。

とはいえ2次の面接対策は全くしておらず、日も近い。ストレスでタクシーで病院に搬送されながらも何とか質問されるだろうことに答えを作ってみたり、書類に記入したり、面接四日前に面接シートを書いてないことに気がつき大慌てしてみたりしながら本番を迎えたのである。

試験会場はピリピリした空気かと思いきや緩かった。番号順の席にも関わらず、ここに座っていいですかと聞いてくる受験生、検尿って今持ってくんですよねと聞いてくる受験生、なぜ私に聞いてくるんだよ、あわわわ。他にも早々に面接を終えた人が隣の人にこんな質問されたわーと話していた。待機の状態も面接の一部というやつだからコミュニケーション能力をアピールしようというやつだったのかもしれない。私はまとめたノートを読み返したらスマホでニュースをチェックしたりしていた←これが悪かった

私の面接試験はお昼の二番手だった。深呼吸して呼ばれる順番を待った。呼ばれない。私と同じ組の子は呼ばれてるのに私呼ばれない。進行役の人もなんか慌てだした、なんだ何かトラブルか???ここで私は先ほどのスマホで見たニュースを思い出した、京都アニメーションの火災。あれはもしかして労災になる案件なのだろうか、それで確認のためになんか動いていて試験が遅れてる?あれ、アニメーターって労働者?フリーランス?請負?なんだったっけ?発達障害特有の思考が止まらないポンポン出てくる症状が出てきてしまいもうパニック状態だった。そんな中やっと呼ばれた、まさかの15分遅れ、30分も前の人面接してたのか。

面接はしょっぱなからこけた、途中で逃げ出したいぐらいだった。緊張して声裏返るし。質問内容は大体ネットに転がっているものと遜色なかった。

「大学は教養学部なので幅広く学んでいくつもりだ」と答えたら「専門は何を?」と聞かれたりした。うまく答えられなかった。そもそも自分が知りたいことや困ってる人を助けるために必要な知識を得たいだけ。法律も学ぶし、社会福祉も学ぶし、精神医学も学ぶんですが…

あとこれは意地悪にもほどがあると思ってるのですが職歴に関してものすごく突っ込まれた、ぼかすけど会社名どころか部署まで言わされた。書類には企業名等は書かずとありネットでも言わない方がいいと言われているのに

「◻︎◻︎関係のどこ」

「◯◯です」

「◯◯のどこ?」

「△です」

「△のどこ!」

「◻︎です」

「へぇ、◻︎なの」

◻︎は馬鹿を雇ってるんだと思われたと感じ、よくしてくれている職場に申し訳がなくて泣きながら帰りの電車に飛び込もうとしたのはいうまでもない。

ボロボロに失敗したけども、一つ自分を褒められるとしたら「人の話をきちんと聞いてあげられる監督官になれると思います〜〜」に違わないよう、質問したきた面接官に向けて体の向きも少し変えてしっかいと相手の目を見て答えられたことだと思う。きちんと私は対峙したと思う、後半は。

私の最初で最後の労働基準監督官試験は

基礎13/40 専門23/40 記述 66/200 88/200 圧縮して75/200 身体検査A 人物試験Dで幕を閉じた

多分筆記でスパコン!と落ちていたら今もこうしてひきづってはいないだろうなとは思うけどもチャレンジした事は後悔していない。1年と少し経つにつれて私は「監督官になるには汚れすぎてしまってたんだなぁ」と思えるようになった。

障害者雇用で働く前はいわゆる最低賃金のブラックバイトで働いていた。契約書なんて意味をなさないし、休憩時間も違法、残業代未払い、大学入試に行かせない、36協定結んでない、パワハラ、障害者差別(障害者だからバイトリーダーにしないとか) シフト強制(予定はフリーにしろと言っておきながら1日2時間しか入れないとか)

働いてるのにお金がなくて道端の草食べたり試食コーナーで飢えを凌いだり、冷蔵庫すらない生活で20代前半を過ごした。障害があったとは言え所持してなかった手帳を所持するようになったのは生活苦からである(バスが無料でのれるので出ない交通費分を補えた)

ほぼほぼ自力で未払いの残業代40万取り返したり(法律的にあってるか監督署に相談は行ったけど)、借金重ねても生きてきたおかげで負けん気の強さと生き汚なさは経験値は育ったけど、自己肯定感はつゆと消え失せた

思い込みが強い発達障害もある私は、自分の経験が強く刷り込まれているから「労使に対して中立的な立場で」監督官の業務を遂行するのは難しかったと思う。どうしても労働者の方に傾いてしまうと思う。そういう意味で労働基準監督官に私は向いてなかったと思う。

まぁ、私はもう一生労働基準監督官になれないわけで、すぱっと諦めればいいものを諦めきれず、今も労務系の仕事につき、大学卒業したら社労士受けようかななんて考えてます。私の心を捉えて離さないとは労基法その他諸々なかなかやりおる…

私は行動を起こせたけど、行動を起こす気力も体力もない人がいて、本当はそんな人たちを助けてあげられる力がほしいとこですが。

長々と書きましたが、私的に労働基準監督官試験に関しては変に身構えなくていいと思います。原体験がある人もない人も素直に思ったまま、様々な熱い思いを胸に秘め前を向いてればいいと思います。熱い思いは胸に秘めておけばいいと思います(大事だから2回言った)

発達障害で高卒で年齢制限ギリギリでも筆記は通ったのがここにいます。下を見ろとは言いませんがこんな奴が筆記は通るなら対策してきた俺は受かる!みたいに自身の根拠にしてもらえればいいと思ってます。

以上!




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