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スマホを捨てよ町へ出よう

停め慣れたコインパーキングに車を置いて、待ち合わせ場所に徒歩で向かっていた10時半頃。

信号待ちをしていると、繁華街のある向かい側から、千鳥足気味ながらなんとか真っ直ぐ歩こうとしている女の子と、その子に合わせてゆっくり歩く、夜のお仕事の方らしき黒づくめの青年が歩いてきた。


「大丈夫!ひとりで帰る!もういいから!」

「いやいや、大丈夫じゃないでしょ」

「もういいって、ひとりで帰れるから」

そう言いながらも横断歩道の手前で座り込んでしまう女の子。一緒にしゃがみ込んで、宥めるようにその子を覗き込む青年。彼から顔を背けながらも、正面に居る自分からは、彼女の表情に笑みと照れが垣間見えて。


日々仕事と子育て、主婦業をルーティンしている私にとって、その刹那的なシーンに非日常のドラマを感じ、少し懐かしい気持ちにもなった。

信号が青になって、お2人の横を通り過ぎることにほんのり名残惜しさを感じながら歩いていると。

これまた朝帰りらしい、20歳くらいの女の子2人組が向こうからよたよたと歩いてきた。

尖った個性を感じる服装の華奢な子と、独特な出立ちの中性的な雰囲気の子。2人は私とすれ違う前に、ビルの窪みにしゃがみ込み、肩を寄せ合ってニコニコ楽しそうに笑い合っていた。

その可愛らしい光景は、大森靖子ちゃんのPVさながらで。きっとこの子達の人生でも、キラキラした思い出のひとつになるであろう若さに溢れたその瞬間を、通行人Aとして見届けることができたことに、不思議な喜びが湧きあがってきて、私は急足になった。

待ち合わせ場所に着くなり、そんな「エモい」瞬間を見届けられた喜びを親友に伝えた。

待ち合わせを30分ずらしていなければ、そもそも今日会うきっかけになった用事が無ければ、そんな生々しい綺麗な時間に立ち会えなかった。

(たくさんの方達が、たくさんの我慢を強いられている今の時期的にこのような記事を書くことで、その方達の少々アウトサイダーな行いを肯定している訳ではなく。今のような状況でなければ、日曜の朝の、繁華街にはありふれた光景であると思っている。)

タイトルの元ネタである「書を捨てよ町へ出よう」は、お恥ずかしながらまだ読んだことが無いけれど。

寺山修司さんの、真っ直ぐなようでどこか遠回しな言葉の紡ぎ方が、私は好きだ。

自分独自の感覚をもって、自分の目で世の中を観て、心を揺さぶられた瞬間を忘れない為にも、記録することを大切にしていきたい。

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