#3〜歪みの稲妻〜

「良シ!良シ!」
スーキノックの興奮は今やほとんど最高潮だった。
ストームキャストのドラコス乗り達は今やいなくなった。
運のいいことに、アコライトも1匹死に自分の地位を脅かされる危険も減った。
全てが自分の思い通りだ。
なんと自分は素晴らしいのだ!
「スーキノックが最高ダ!オレは天才ダ!」
増長のままに、無意識に叫んだ。
興奮は隣に控えるワープライトニング・キャノンの砲手に、そして観測主へと伝播していく。
「撃テ!撃っチマエ!」
観測主が照準を合わせて言った。
すぐさま、巨大なワープストーンで作られた砲塔が黄緑の光を放つ。
それは当たりに稲妻を撒き散らしながら塊となって飛び、チャリオットの横に着弾して爆ぜた。
爆発によりチャリオットの車輪が歪み、進路が狂う。
「モット!モット!モット!モット!モットモット!」
その光景にスーキノックはさらに興奮して砲手を叩いた。
砲手がワープライトニング・キャノンのチャージを始める。
スーキノックも歪み稲妻増幅器ワープライトニング・アンプリファイアーをフル稼働させた。
冷静なら、チャリオットが突っ込んでくるのが先になると誰もが思うだろう。
だが、勝利に酔いしれたスケイヴン達にそんなことを考える頭は残されていなかった。
そして、それは驚くべき速さでのチャージを可能とした。
チャリオットはもうヒゲと鼻の先にいる。
ジェネレーターの焼け付く匂いがする。
ふと世界から音が消え、全てが静止した。
だがすぐに世界は音を取り戻す。
発射された黄緑色の塊は、チャリオットへと吸い込まれて爆ぜた。
直撃だった。
神々しき雷光が天へと昇って行った。

「オレのためニ働ケ!早ク!」
ヘルピット・アボミネイションを操る鞭がアコライトを襲う。
本来それが当てられるべき主は、まだ半分ほどが弾け飛んだままだ。
ヘルピット・アボミネイションは多数の生物をつなぎ合わせた上、薬品により脅威的な再生力を持つ。
ゆえに体を引き裂かれる程度で死んだりはしない。
だが、それでも再生には時間がかかる。
結果として、肉体労働にあまり長けていないアコライトたちや、ワープライトニングキャノンを動かすクルーたちが穴を掘ることになった。
「穴を掘ルなラ、《かじり穴》を使えナイのカ?」
フェルツウィッチが肉体労働に音を上げて言った。
ヴァーミンロードから教わった《かじり穴》の魔法は万能ではない。
せいぜい戦場の見える範囲に出現させるのが精いっぱいだ。
だが、それを部下に知られるのは気にくわない。
「土の中ニ出てモ、どうニモならン!掘レ!」
それらしいことを言って鞭を振り下ろした。
フェルツウィッチはまだサボる口実を探すか?
ならばと、スーキノックは背負った歪み稲妻蓄積機ワープライトニングアキュムレイターを起動する。
バチバチと音を鳴らしてワープライトニングがあたりに爆ぜた。
その威圧効果は十分だったようで、フェルツウィッチも観念して土を掘り始めた。

「あっタゾ!あっタ!」
不意にヘルキークが叫んだ。
「どケ!見せロ!」
すぐさま、スーキノックは岩から飛び降りるとアコライトを突き飛ばしながら走った。
突き飛ばされたサームクリットルを見て、スーキノックは自分の強さを再確認する。
そうだ、オレは強い。荒廃卿ロードオブディケイにもふさわしい。
近づくにつれてあたりから興奮の匂いがしてくる。
それを嗅いだスーキノックも昂ってくる。
抜け目のないヘルキークはサッとどいて道をあけた。
覗き込むと、黄緑色に光る石が土の中から顔を出していた。
ワープストーンだ。
「掘レ、そう、そうダ!」
ワープストーンを取り出すと、部下たちに銘じてそこを掘らせた。
小さな石だが、戦果としては悪くない。
ここを死守した甲斐があったというものだ。

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